昨日、4月におこなわれたFOMCの議事要旨(Minutes)が公表された。
その中で、エネルギー価格と(ドル高による)輸入物価の低下により物価が低迷しているが、それらの効果がなくなるにつれ中期的に物価が2%に上昇していくと予想されていた。
物価上昇の指数としてよく知られているのが、労働統計局が発表するCPI(Consumer Price Index:消費者物価指数)と米商務省が発表するPCE(Personal Consumption Expenditures Price Index:個人消費支出指数)である。CPIは世帯調査にもとづいて家計の消費構造(購入商品の構成)を2年ごとに見直しながら、その購入にかかる費用がどう変化するかをみるものである。これに対し、PCEは主に事業所調査に基づき消費構造を適宜見直しながら、その購入にかかる費用がどう変化するかをみるものである。またCPIは個人の直接的支出だけが対象となるのに対し、PCEはたとえば会社が個人に提供している医療保険にかかる費用など個人に対する間接的支出も対象としており、PCEの方がより包括的なものとなっている。
メディアでは物価上昇の指数としてわかりやすいCPIが取り上げられることが多いが、理論上はPCEの方が日々の変化をより正確に反映することができると考えられる。このためFRB(Federal Reserve Board:連邦準備制度理事会)は、物価上昇の指数としてとくにPCEを重視している。
ところで下のグラフにあるように、食品とエネルギーを除くCPI-Uはすでに年率2%を超えているが、エネルギー価格の低下が全体の物価を押し下げている。しかし、原油価格の上昇がこのまま続けば、FOMCの想定以上に早くCPI-UとPCEが2%を超えていく可能性があると思われる。すでにガソリン価格は大きく上昇している。
2014年に原油価格が1バレル100ドルを超えた時は雇用状況がいまより格段に悪く利上げにつながらなかった(2014年にCPI-Uは瞬間的に2%を超えた)。しかし、いまは雇用状況が相当に改善し、名目賃金も上昇基調に入っているため、原油価格の上昇によるCPI-UとPCEの上昇は2014年と違ってFOMCの判断に大きな影響を与えると思われる。
もっとも原油価格の動向については様々な予測があり、もし上昇一服となればまた事情は異なってくる。しばらく原油価格とインフレ率の動きを注視していきたい。
インフレ率の推移はこちら。
ガソリン価格の推移はこちら。