大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米ベライゾンのストライキ(6週間)が終結

2016年05月31日 | 日記

 米通信大手ベライゾンで労使交渉が合意に達し、6週間にわたっておこなわれていたストライキ(参加者4万人)が終結した。

 労使交渉は、コールセンター業務の外注化や年金給付の削減などを巡って紛糾。ベライゾンの非携帯部門を中心に組織するCAWとIBEWは、4月13日からストライキに突入した。

 ストは長期化するきざしを見せ始めていたが、NYTなどが伝えるところによれば、5月中旬からトーマス・ペレス労働長官とアリソン・ベック米連邦調停和解局長が仲介に乗り出してから話し合いが進展、今回の合意となった。

 ベライゾンは当初6.5%の賃上げを提案していたが、今回、労使は4年間で11%の賃上げで合意した。業績への影響は軽微とみられている。


VW、賃上げで労組と合意

2016年05月22日 | 日記

 Automotive NewsDWなどによれば、VWは賃金を今年(2016年)の9月1日に2.8%、来年(2017年)8月1日にさらに2%上げることでIGメタル(金属産業労組)と合意した。金属産業に属する他の企業も、およそ同等水準の賃上げが決まっている。

 ドイツでは大ぐくりの産業ごとに経営者団体と産別組合が労使交渉をおこない、職種ごとに全企業に適用される基本的な賃金を決定している。

 ちなみに過去4か月(1月~4月)のドイツの平均インフレ率は0.175%(年率)。


アメリカ、インフレ率2%越えが視野に

2016年05月19日 | 日記

 昨日、4月におこなわれたFOMCの議事要旨(Minutes)が公表された。

 その中で、エネルギー価格と(ドル高による)輸入物価の低下により物価が低迷しているが、それらの効果がなくなるにつれ中期的に物価が2%に上昇していくと予想されていた。

 物価上昇の指数としてよく知られているのが、労働統計局が発表するCPI(Consumer Price Index:消費者物価指数)と米商務省が発表するPCE(Personal Consumption Expenditures Price Index:個人消費支出指数)である。CPIは世帯調査にもとづいて家計の消費構造(購入商品の構成)を2年ごとに見直しながら、その購入にかかる費用がどう変化するかをみるものである。これに対し、PCEは主に事業所調査に基づき消費構造を適宜見直しながら、その購入にかかる費用がどう変化するかをみるものである。またCPIは個人の直接的支出だけが対象となるのに対し、PCEはたとえば会社が個人に提供している医療保険にかかる費用など個人に対する間接的支出も対象としており、PCEの方がより包括的なものとなっている。

 メディアでは物価上昇の指数としてわかりやすいCPIが取り上げられることが多いが、理論上はPCEの方が日々の変化をより正確に反映することができると考えられる。このためFRB(Federal Reserve Board:連邦準備制度理事会)は、物価上昇の指数としてとくにPCEを重視している。

 ところで下のグラフにあるように、食品とエネルギーを除くCPI-Uはすでに年率2%を超えているが、エネルギー価格の低下が全体の物価を押し下げている。しかし、原油価格の上昇がこのまま続けば、FOMCの想定以上に早くCPI-UとPCEが2%を超えていく可能性があると思われる。すでにガソリン価格は大きく上昇している。

 2014年に原油価格が1バレル100ドルを超えた時は雇用状況がいまより格段に悪く利上げにつながらなかった(2014年にCPI-Uは瞬間的に2%を超えた)。しかし、いまは雇用状況が相当に改善し、名目賃金も上昇基調に入っているため、原油価格の上昇によるCPI-UとPCEの上昇は2014年と違ってFOMCの判断に大きな影響を与えると思われる。

 もっとも原油価格の動向については様々な予測があり、もし上昇一服となればまた事情は異なってくる。しばらく原油価格とインフレ率の動きを注視していきたい。

 

 インフレ率の推移はこちら

 ガソリン価格の推移はこちら


米政府、ホワイトカラー・エグゼンプションの収入要件を引き上げ

2016年05月18日 | 日記

 2016年5月17日(火)、米政府は、週40時間を超える労働について割増賃金の支払が不要となるホワイトカラーエグゼンプションの収入要件を引き上げると発表した。2016年12月1日から、収入要件は現在の年2万3,660ドル(260万円:1ドル=110円で計算)から4万7,476ドル(520万円)に引き上げられる予定。それ以降は、3年ごとに見直しがおこなわれることになっている。

 なおホワイトカラーエグゼンプションの適用に際しては、収入以外にもさまざまな要件が存在している。


4月、アメリカでエネルギー関連企業のデフォルトが急増

2016年05月15日 | 日記

 アメリカでエネルギー関連企業のデフォルト(債務不履行)が引き続き増加している。

 2016年5月11日のFT(フィナンシャル・タイムズ)によれば、この4月、エネルギー関連企業11社が破産法第11章(日本の民事再生法に相当)を申請、原油価格の下落がはじまった2014年後半以降で最多となった。負債総額は149億ドル(1.6兆円:1ドル=110円で計算)。3月の19億ドル(2千億円)から急増している。

 この数か月原油価格は上昇しているが、5月に入ってもデフォルトは続いており、5月9日にはChaparral Energy(昨年末の負債は19億ドル=2千億円)が破産法第11章を申請。さらに5月11日にはLinn Energy LLCが77億ドル(8.5千億円)の負債を抱え、また5月12日にはPenn Virginia Corpが12億ドル(1.3千億円)の負債を抱え、それぞれ破産法第11章を申請している。

 現在、アメリカの銀行は、企業への貸出枠の見直しをおこなっている(年2回)。原油価格はこの数か月上昇が続いているが、ピーク時に比べるとまだまだ低水準にある。このため、埋蔵原油の担保価値の見直し(引き下げ)などにより、貸出枠が縮小される企業が出ている。FTによれば、現在の借り入れが新たに設定された貸出枠を超えた場合、企業は5か月以内に借り入れを貸出枠まで縮小しなければならない。

 エネルギー関連企業の負債は、2007年のサブプライムに比べると規模が小さく、エネルギー関連企業のデフォルトがリーマンショックのような経済危機をもたらす可能性は小さいとみる海外の論評が多いが、アメリカ経済の動向を左右する問題のひとつとして引き続き注視していきたい。

★ 上記の内容については吟味しているつもりですが、引用元の誤り、翻訳の誤りを含め、記述内容、数値に誤りがないことを保証するものではありません。