先日の大統領就任演説により、アメリカ・ファーストが「アメリカ人を雇い、アメリカ製品を買え」(演説)だということがますますはっきりしてきた。その内容に世界が大きく揺れている。
ところで私がそれより驚いたのはウォール・ストリート・ジャーナルによれば、その演説を書いたひとりがアメリカのネトウヨの親玉といわれるスティーブ・バノン氏だったということである(もうひとりはステファン・ミラー大統領上級顧問)。
アメリカには、日本の2チャンネルをまねた4チャンと8チャンという掲示板がある。ただ、この利用者は(とくに性的な)アニメやゲームの愛好者で、政治的な議論はあまりされていない。利用者も少なく、これらは社会への影響力はあまりもっていない。
社会に大きな影響力をもっているのはブレイト・バートというニュース掲示板である(アメリカでは白人至上主義の極右サイトと紹介されることが多い)。このサイトは、ニューヨーク・タイムズ(NYT)やCNNといった主流派メディアのニュースを、偏向している、嘘つき(フェイク)、言葉狩り(ポリティカル・コレクトネス)と激しく攻撃し、記事がでると短時間で数千からときに1万をこえる賛同のコメント(差別的な内容をふんだんに含む)を集めている。
ブレイト・バートの利用者は基本的に熱烈なトランプ大統領の支持者で、その主張(たとえば特定宗教や移民の危険視など)は似通っている。
このブレイト・バートの共同創設者で会長だったのがバノン氏である。
トランプ氏はこのバノン氏を大統領選挙の最高責任者に選び、その戦略にのって大統領に当選した。
そして大統領当選後、トランプ氏はバノン氏をホワイトハウスの主席戦略官に任命した。
主席戦略官とは何だろう?(選挙に勝ったご褒美で実質的な仕事はない名誉職のようなものかな?)と思っていたのだが、バノン氏が大統領就任演説の原稿を書いたということで、選挙戦だけでなくトランプ氏のこれからの政策や発言内容にもバノン氏が大きな影響力を行使していくということがあきらかになった。私が驚いたのはそのことである。
2017年1月23日にホワイトハウスでおこなわれたトランプ大統領と企業トップとの会談でも、バノン氏は書記席?(トランプ大統領の4人左、テスラCEOのマスク氏の2人左)に座っており、トランプ政権で大きな役割をはたしていることをうかがわせている。
ところで、ブレイト・バートに集まる人たちは日本の首相にはあまり関心がないようで、安倍氏がトランプタワーに行った時には、ニュースになったもののほとんど書き込みがなかった。
しかしその後、九州のスケートリンクで本物の魚を氷に閉じ込めたということがニュースになったときはかなりの書き込みがあった。私がみたときは、戦前の日本軍の残虐行為にからめて日本人は残虐な民族だとする主張をめぐって熱い議論がかわされていた。議論では、ジャッ〇という用語が飛び交っていた。そのような言論の「自由」を保障するのがブレイト・バートなのである。
そんなサイトを運営していた人物が、いまやトランプ氏の政策を大きく左右する地位についている(ブッシュ大統領のとき影の大統領といわれた選挙参謀カール・ローブ氏のようになるのではないかと思われる)。
これまでの常識がつうじない時代が来たようだ。