大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

国債利回り1%上昇で、満期までの価格変動の総額が67兆円

2016年10月21日 | 日記

 2016年10月17日、財務省は国債の在り方について各界から意見を聞く懇談会を開いた。

 財務省は懇談会に提出した資料で、驚くべき数字を明らかにしている。

 それは、日本の国債利回りが1%変化した時、現在流通している国債の価格変動の総額がGDP比で13.5%になるとの試算である。

 2015年度の名目GDPは約500兆円国債利回りが1%上昇すると、国債価格は(満期までの通算で)67兆円減少することになる。私の理解では、これは帳簿上に発生する実際の損失額ではないが(実際の損失処理は一回だけで、毎年累積しない)、それにしても大きな数字である。

 期間が長い国債ほど利回り変化の影響を受けやすいが(長い間にわたって価格低下の影響が続くため)、日本は他の先進国とくらべると10年を超える超長期債の発行額が多い(GDP比で)。財務省は、このためこうした結果が出たと驚愕の数字について説明している。

 こうした数字が出てきた背景としては、財務省が超長期債の増加(財政規律の弛緩)に危機感を有していることがあると推測される。世界中が国債バブルの状況になっているが、これから10年の間に国債市場で何がおこるか気がかりである。


淡路島でゼミ合宿

2016年10月15日 | 日記

 2週間前、淡路島で3回生のゼミ合宿をおこなった(回生というのは大学規則などで使われている正式の名称。関西ではわりと一般的)。

 これまで、合宿は大学近くにある大学施設を使ってきたが、今年はゼミ幹事を中心にゼミ生のひとたちに行先やホテルを決めてもらった。そこで決まったのが淡路島である。

 合宿二日目は鳴門海峡まで足を運んで、鳴門の渦を見てきた。

 来年もゼミ生のひとたちに合宿の行先を決めてもらおうかなと思っている。

 

 左に見えるのは四国の徳島

 

 鳴門海峡大橋の下にあらわれた渦

 

おまけ


サムソンNote7の失火原因

2016年10月13日 | 日記

 サムソンNote7の失火とそれに続く生産中止が大きなニュースになっている。

 2016年10月12日のFT(フィナンシャル・タイムズ)によれば、Note7にリチウム電池を供給していたのはサムソン子会社のサムソンSDITDK子会社のAmperex Technology(ATL)。

 FTによると、当初失火したNote7の大多数はサムソンSDI製のリチウム電池を搭載していた(ATLの供給割合は35%)。そこでサムソンは、ATLのリチウム電池を搭載した代替機で製品交換を開始。

 しかし、代替機でも失火が発生。失火原因はリチウム電池以外にある可能性が高まり、最終的にサムソンはNote7の生産を中止することを決定した。

 欧米メディアでは、失火が報告されてからの迅速な対応(製品交換やソフトを通じた使用制限)が高く評価されていたが、代替機も問題があることがわかり困惑が広がっている。あくまで個人的な感想だが、短期間での生産中止決定は短期的な損失より長期的な信用維持を優先した対応で、日本メーカーも見習う点があるように思う。

 ちなみに日本のスマホはiPhoneの一人勝ち状態だが、日本以外ではアンドロイドのシェアの方が高い市場調査をおこなうカンター社によれば、2016年第2四半期、スマホ販売におけるアンドロイドのシェアは、英・独・伊・仏・スペインで78.1%、米で65.2%。そしてアンドロイドでトップに立っているのがサムソン。アメリカのスマホ販売で、サムソンのシェアは33.9%となっている(同上調査)。

★ 2017年1月26日追記

 サムスンは、失火は両社それぞれの電池にあったとの分析結果を発表した。

 「スマホ発火事故「電池の問題」 サムスンが原因特定」『日経新聞』(2017/1/23)

 


日本郵船が特別損失約1950億円を計上

2016年10月07日 | 日記

 2016年10月7日(金)、日本郵船は第2四半期決算に約1950億円の特別損失を計上する見込みになったと発表した。

 2016年8月31日には韓国の韓進(ハンジン)海運が経営破たんして世界中で大きなニュースになったが、今回のニュースで再び海運不況に世間の注目が集まりそう。

 ここで気になるのがドイツの銀行。あまり知られていないが、ドイツは海運業への世界最大の投資国である。ドイツの銀行と個人は、融資や投資ファンドをつうじて世界のコンテナ船輸送能力の約29%を保有し(WSJ日本語版)、ドイツが海運業界にもつ債権は1000億ドル(10兆円:1ドル=100円で計算)に達している(Reuters)。なにかと話題になるドイツ銀行も、海運業向けに5-60億ドル(5-6000億円)の債権を有しているとされている(Reuters)。

 中央銀行の異次元緩和により欧米の株価は史上最高値圏にあるが、経済実態とのかい離が一部ではあるが目立ち始めている。海運不況はそのひとつ。

 気になることがひとつ増えた。