2018年4月25日(水)、フォードのジム・ハケットCEOは、北米においてムスタングとフォーカスを除く乗用車生産を中止すると発表した。オートモーティブ・ニュース(2018/4/26)によれば、フォードは、フィエスタ、フュージョン、トーラスを廃止。フォーカスについても、2019年に発売予定のハッチバック(5ドア車)のみの生産となる予定。アメリカではこれを、フォードの乗用車生産からの事実上の撤退ととらえる報道が多い。
この背景にあるのが、リーマンショックを破産せず乗り越えた唯一の国内自動車メーカーであるにもかかわらず、近年、利益率が低迷していることがある。ウォール・ストリート・ジャーナル(2018/4/21)によると、フォードの営業利益率は5%。GMの9%に大きく見劣りしている。
こうしたことから新しくCEOとなったハケット氏は、2020年までに140億ドル(1.5兆円:1ドル=110円)のコストカットをおこなうほか、労働者を20万人削減するとしている(長期的な利益率目標は8%)。そしてコストカットの手段として登場したのが、利益率の低い乗用車生産の大幅な削減である。
現在、アメリカでは自動車販売の2/3が利幅の大きい大型車になっており、その比率は現在も上昇し続けている。一方、乗用車は販売台数が減少傾向にあるうえに、日韓メーカとの価格競争が激しく利益率が低く、開発負担も大きい。こうした事情が、フォードに経営資源を大型車に集中することを決定させたと思われる。私は自分自身の数少ない経験からではあるが、内装や乗り心地は日本の乗用車より米メーカーのコンパクトカーの方が優れていると思っている。ただ価格が同等の日本車より高いことや、耐久性の問題から中古車価格が日本車ほど高くならないなどの問題があり、販売が伸びない状況となっているのではないかと考えている。
ところで問題は、現在の大型車(アメリカではライト・トラックと分類される)ブームがいつまでも続くかどうかである。かつてはガソリン価格が上昇すると大型車の販売が急減し、米メーカーの経営を直撃した。しかし近年、大型車の燃費は大幅に改善している。オート・モーティブ・ニュース(4/26)によれば現在、フォードの大型車エスケープの燃費(mpg:ガロン当たりマイル)は小型車フュージョンとあまりかわらず、EPA基準では小型車トーラスよりすぐれている。こうしたことがあるからか、以前のブログで指摘したように、2010年代前半にガソリン価格が高騰したとき、大型車の売り上げはほとんど影響を受けなかった。
ただ心配も残る。現在の大型車ブームはある程度、低金利やサブプライム・オート・ローン(信用の低い人向けの自動車ローン)に支えられている。そのような条件が変わっても今のような大型車ブームがはたして続くのであろうか。気になるところである。
参考
米自動車メーカー、セダン生産を縮小(2018/4/7)
アメリカで4か月連続自動車販売が減少: サブプライムローンの損失拡大(2017/5/6)
アメリカでローンを払えず差し押さえられる車が増加(2017/8/24)