米連銀はコロナ対策のひとつとして、社債を8500億ドル(93兆円:1ドル=110円)購入するプログラムをおこなっている。
購入対象は当初、投資適格の社債とフォードなど直近に投資不適格になったいわゆる堕天使(falling angels)の社債とされた。
以前のブログで書いたように、アメリカでは投資適格ぎりぎり(トリプルB)の企業が過去に例をみないほど多くなっており、こうした企業の格下げが金融不安につながらないようするのが堕天使債の購入理由である。
さらに米連銀は2020年4月上旬、すでにハイイールド債市場が安定をとりもどし資金流入がおこっていたにもかかわらず、投資不適格企業が発行したハイイールド債(ジャンク債ともいわれる)をあらたにETF(上場投資信託)のかたちで購入することを決定した。
フィナンシャルタイムズによると現在、米連銀はブラックロックが発行するハイイールド債ETF(HYG)を38億ドル(4200億円)、ステート・ストリートが発行するハイイールド債ETF(JNK)を15億ドル(1600億円)購入している。
ちなみに米連銀は、社債購入のノウハウがないといってブラックロックに社債購入を委託している。
HYGはブラックロックが発行する世界最大規模のハイイールド債ETF。利益相反はないのかと私などは思ってしまうが、いまのところそのような声は大きくないようだ。
それはともかく、米連銀によるハイイールド債買い入れ決定により、ハイイールド債市場への資金再流入が加速。決定後1週間で100億ドル(1.1兆円)の資金がハイイールド債市場に流入することになった。
ただ一部からは、米連銀の介入により、リスクを利回りなどに反映する市場機能がうしなわれてしまう(破綻リスクが高い債券を高い利回りによって判断することができなくなる)という懸念がでている。
また一度始めるとやめるのが難しいのが中銀の資産買い入れ。危機がさったあともハイイールド債の購入が続けられるなら、高リスク資産が大きく積みあがることになる。
いまのアメリカの雰囲気は、日銀が異次元緩和でETFの買い入れをはじめたときの日本の陶酔状態に似ている気がする。正直、これから世界の金融市場がどうなるのかまったく予想できないが、その行方を注意してみていきたい。