上院共和党は、今週金曜日(2017/12/1)までに税制改革法案を可決することをめざしている。
現在、可決をめざすうえで次の3点が大きな問題となっている。
(1)小規模非株式会社(パススルー)の税率
上院案では、17.4%の税控除を新設することでパススルーの実効税率を30%程度に引き下げるとしている。
しかしこれを不十分として、ロン・ジョンソン氏(ウィスコンシン州)とスティーブ・デインズ氏(モンタナ州)の2人の上院議員が、パススルーの税率を法人並み(20ないし25%)に引き下げることを求めている。2017年11月27日(月)にジョンソン氏は、この問題が解決しなければ反対票を投じると発言している。
ちなみにヘッジファンドのマネジャーやいわゆる士業の人たちは、収入を自営業(パススルー)の収益として税金を納めており、ニューヨーク・タイムズはパススルーの収益の70%は所得トップ1%の人が得ていると指摘している。
ただでさえ富裕者優遇と批判されている法案が、さらに富裕者有利なものに修正されるのか注目される。(下院はパススルーの税率を25%に引き下げるとしており、個人的には、そのあたりで妥協が成立するのではないかと思う)
<→最終上院案では税控除を17.4%から23%に引き上げ、実効税率を30%弱にすることで決着した 2017/12/13追記>
(2)想定通りの経済成長(税収増)がなかった場合の措置
現在の法案は、減税によって経済成長率が大きく上振れすることを前提に収支予想がなされている。
しかしこれに対し、ボブ・コーカー氏(テネシー州)、ジェフ・フレーク氏(アリゾナ州)、ランクフォード氏(オクラホマ州)の3人の上院議員は、想定する経済成長率が高すぎて達成できない可能性が高く、その場合、政府債務が想定以上に悪化する可能性があるとの懸念を表明している。
コーカー氏とランクフォード氏は、税収が想定通り伸びなかった場合、自動的に減税を見直す仕組みを法案に盛り込むことを求めている。
(3)医療保険の加入義務の廃止
上院案は、医療保険の加入義務を廃止することで、保険加入者を減らし、政府支出を削減することが盛り込まれている。
しかしそうなると、健康な若い人が保険に入らなくなり、保険料が上昇することや、無保険者が大幅に増加(10年で1300万人)することが予想されている。
スーザン・コリンズ氏(メイン州)は、医療保険への加入義務廃止を減税案に盛り込むことに強く反対している。氏はまた、地方税の控除を全面的に廃止することにも反対で、なんらかの控除を残すべきだと主張している。<→最終上院案では地方税のうち固定資産税を1万ドル(110万円)まで税控除できることになった 2017/12/13追記>
共和党から3人以上の造反者がでると法案は可決できない。ここに挙げた人たちが、共和党指導部とどのようにおりあいをつけ(あるいはつかず)、最終的にどのような立場をとるのか見ていきたい。
2017/11/29追記
2017年11月28日(火)、共和党指導部あるいはトランプ大統領との会談をへて、コーカー氏やコリンズ氏らから法案賛成に前向きな発言がでてきた。上院での可決の可能性がかなり大きくなってきた。
上院での法案可決後は、上下院で法案のすり合わせがおこなわれることになる。
あとアラバマ州の上院補欠選挙で、共和党のムーア氏の支持率が回復している。民主党からも複数のセクハラ疑惑が出ており、その影響もあるかもしれない。このまま大きな変化がなければ、最終的にはムーア氏が逃げ切る可能性が高くなってきた。