大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

アマゾン株急落の背景: 企業業績の成長鈍化?

2018年10月27日 | 日記

 今週、アメリカ株が急落した。

 その背景としては、米金利の上昇、米中貿易摩擦の激化、中国の景気減速懸念、イタリアの財政問題などいろいろな問題が指摘されているが、とくに気になるのはアメリカにおける企業業績の増加のいきおいがピークをむかえ、これから鈍化するという見方である。

 それを端的にあらわしたのがアマゾン株の急落である。

 2018年10月25日(木)、アメリカ株式市場の引け後にアマゾン第3四半期の決算を発表した。

 決算内容は、去年の第3四半期にくらべ総売り上げが437億ドル(4.8兆円:1ドル=110えん)から566億ドル(6.2兆円)に29%の増加

 営業利益は、3.47億ドル(380億円)から37億ドル(4070億円)へ増加。

 純利益は、2.56億ドル(280億円)から29億ドル(3200億円)へ増加。純利益は、市場予想を大きく上回った。 

 しかし、決算発表後、アマゾン株は8%急落し、それが翌金曜日、世界に波及していった。

 その大きな原因は、第4四半期の業績見通しが予想外に低かったからである。

 アマゾンは、第4四半期の総売り上げが665億ドル(7.3兆円)から725億ドル(8兆円)、1年前からの伸びが10-20%になるとの見通しをしめしたが、これは市場予想を下回るものであった。このとおりだとすると、第4四半期の総売り上げの伸びは2016年以降でもっとも低いものとなる

 またアマゾンは、第4四半期の営業利益が21億ドル(2300億円)から36億ドル(4千億円)、1年前からの伸びが0-70%になるとの見通しも示しているが、これもまた市場予想を下回るものであった。

 アマゾンの株価は、高い成長が続くことを前提に株価収益率(PER)が100倍を大きく超える高い水準にある。この前提に疑問がなげかけられたことが、今回の株価急落につながった(との見たてが多い)。

 来年は減税による利益の底上げもなくなる。はたして、これからも高い成長を期待し続けることができるのであろうか。

 アメリカ経済の重要な先行指標として米株式市場の行方を注視していきたい。


中国、2兆円規模のあらたな減税を発表

2018年10月22日 | 日記

 2018年10月20日(土)、中国政府は来年1月1日からあらたな減税(所得控除)を実施すると発表した。

 ロイターなどによると減税のおもな内容は次のとおり。

(1)住宅ローンの利子支払いについて月1千元(1.65万円:1元=16.5円)まで、家賃の支払いについて月800-1200元(1.3万円-2万円)まで所得控除を認める<所得税の計算のもととなる所得から除くことができる>。

(2)子供の教育費について年1.2万元(20万円)まで所得控除を認める。

(3)医療費について年6万元(100万円)まで所得控除を認める。

 ロイターは、これにより可処分所得が1160億元(2兆円)増加するとする野村の分析を紹介している。

 中国政府はこの10月から別の所得税減税も実施しており、ロイターは、来年1年間の減税規模はGDPの1%(約13兆円)に達するとする分析も紹介している。

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日本の軽減税率は独・仏・英より高い

2018年10月20日 | 日記

 2019年10月から消費税が8%から10%に上がる。

 それとともに、食料品などに8%という軽減税率が導入されることがきまった(学校の授業料、医療費、薬代、土地の売買にはこれまでどおり消費税がかからない)。

 日本ではいまだに軽減税率は不要、無意味だという議論がなされている。しかし、日本より早く付加価値税(消費税)を導入した欧州では多くの国が軽減税率を導入している。それだけでなく、日本より低い軽減税率を定めている場合が少なくない

 たとえばフランスの付加価値税率(以下たんに税率と記す)は20%。しかし、新聞、雑誌の税率は2.1%本、食料品、映画の税率は5.5%と日本の現在の消費税より低くなっている。フランスほど福祉が充実していない日本で、食品などにどうしてフランスより高い税金を払わなければならないのか不思議に思う人は少なくないはずだ。ちなみに、日本で問題になっている外食の税率は宿泊、肥料などともに10%となっており、来年10月以降は日本と並ぶことになる。

 ドイツも税率は19%と高いが、食料品、新聞、本、宿泊などは7%と日本より低い軽減税率が適用されることになっている。

 イギリスの場合、税率は20%だが、食料品、新聞、本は0%となっている。ちなみにイギリスは医療費は無料である。

 高福祉だが高負担のイメージが強いスウェーデンも同じである。税率は多くの人が想像するように25%という高率であるが、新聞、本、スポーツ観戦、映画の税率は6%と日本より低い。また食料品、宿泊の税率は12%となっている(以上は『日本の税制』財経詳報社2018年版に拠っている)。以前のブログで触れたようにフィンランドもだいたいおなじような感じである。

 日本における軽減税率の導入は遅きに失しただけでなく、その水準も高すぎるように思うのは私だけであろうか?


中国で新規の銀行貸し出しが増加

2018年10月18日 | 日記

 中国政府は2018年前半は過剰債務を縮小する方向でうごいているようにみえたが、景気減速や米中貿易摩擦が激化する可能性が高まり、年後半に入ってからは景気刺激のため積極財政、金融緩和に方向転換している。

 昨日もロイター(2018/10/17)が、中国における新規の銀行貸し出しが8月の1.28兆元(21兆円:1元=16.5円)から9月には1.38兆元(23兆円)に増加したと報じた。ロイターは、このペースで貸し出しが増加すれば今年の貸し出しは昨年を上回って過去最高になるとしている。

 その一方で気になるのが物価の上昇

 2018年10月16日(月)、中国国家統計局は9月のインフレ率(CPI)が前年比で2.5%の上昇になったと発表した。中国政府が目標とする3%には達していないが、このところ物価の上昇が続いている。

 その背景のひとつが元安。今年の4月には1ドル=6.3元ぐらいだったのが現在は1ドル=6.9元ぐらいとなり、半年でおよそ10%程度の元安になっている。

 元安は輸出の支援材料になる一方、輸入物価を引き上げる。

 後者の影響をおさえるため中国では輸入関税の引き下げがおこなわれているが、それでも物価への影響は少なくないものと思われる。

 景気刺激のための積極財政、金融緩和と物価の安定は水と油の関係。中国政府が、この難しいバランスをどのようにとっていくのか引き続き注視していきたい。


米中間選挙、共和党が上院で過半数維持の見込み

2018年10月18日 | 日記

 2018年11月6日(火)におこなわれる米中間選挙で、共和党が上院でひきつづき過半数を維持する可能性が高まっている。

 現在、上院は共和党51議席、民主党49議席。このうち33議席(うち共和党8議席)が今回改選。同時に、ミネソタ(現民主党)とミシシッピ(現共和党)で議員辞職にともなう補欠選挙がおこなわれる。

 ウォールストリートジャーナルによると、民主党はノースダコタで現職が共和党新顔に差をつけられている。

 また、一時は民主党新顔が共和党現職に肉薄していたテネシーとテキサスで、民主党候補が失速している。

 こうした中、激戦が続いているのは現職が共和党のアリゾナとネバダ、現職が民主党のフロリダ、インディアナ、ミズーリの5選挙区。

 民主党が過半数(51議席)を奪取するには、ノースダコタで勝利しなおかつ5激戦区のすべてで勝利する必要がある。現在のところ、それはほとんど不可能という状況にある。

 民主党候補は寄付金では共和党候補を凌駕するものの、支持率が伸び悩んでいる。

 選挙まで1か月を切った。情勢はしばしばささいなことで急変する。選挙情勢を注意してみていきたい。

 

2018年11月7日追記

 インディアナで共和党候補が当選。