大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

伏見の利き酒

2016年09月28日 | グルメ

 

 この夏、今年3月にできたばかりという伏水酒造小路に行ってきた。

 目的は下の利き酒セット。

 

 この店には伏見の17の酒蔵が協力しており、そのすべての酒を飲めるすぐれもの。飲んでみて、伏見の日本酒に対するイメージが変わった。

 大吟醸も入ってこれで1700円というのはお得なように思う(2016年9月現在)。

 なおここは屋台村のような感じで、日本酒バーのほか食べ物の名店もいくつか入っている。日本酒を飲みながら他店のものも自由にオーダーできるのもうれしい。

 今回は、京漬物をさしみに、しめにラーメンをいただいたが大満足。

 京都駅からは近鉄で15分ほど。

 長居を防ぐためか椅子のすわりごこちは良くないが、それさえ問題なければ日本酒に興味のある方に勧めたい場所である。ぜひ再訪したい。


量的緩和からの方向転換

2016年09月24日 | 日記

 日銀は9月21日に新たな金融政策の枠組みを発表した。これについては、金融緩和の強化であるとする理解と引き締め(テーパリング)への方向転換であると理解する立場が入り乱れている。

 個人的には、今回の日銀の決定は、すくなくとも金融緩和の強化ではないと思う。

 以前ブログに書いたように、年80兆円の国債買い入れを長く続けることは不可能である。日銀内でこの点について懸念が高まっているとする報道も多い。

 ではどうするか。IMFのワーキング・ペーパー(2015年8月)はいくつかの代替策を提示している。

 ひとつは、長期、超長期国債の買い入れの増額である。日銀の国債買い入れは、償還までの残存期間が短いものが多く、とくにこうしたもので日銀の保有割合が急速に高まっている。国債買い入れを続けるには、長期、超長期の買い入れを増やさなければならない。実際、日銀は2014年10月に、国債の平均残存期間をそれまでの7年程度から7-10年程度に、2015年12月にはそれをさらに7-12年に延長してきた。そしてついに今回、日銀は平均残存期間のさだめを撤廃した(ただし当面は、長期金利の上昇をめざすため、長期、超長期の国債の買い入れ額は減る可能性が高く、これまでどおりの規模で国債買い入れを続けた場合、短期国債で買い入れ限界が早まる可能性がでてきた)。 

 もうひとつは、2%の物価目標を実現する政策手段として金利に重心をうつすというものである。実際、日銀は2016年1月にマイナス金利の導入を決定。そして今回、あたらしく長期金利(10年国債利回り)0%をめざすとした。そしてこれが重要なのだが、日銀はこれに合わせ年80兆円という国債買い入れ額の枠組みをなくした。黒田日銀総裁は、これをテーパリングではないと言っているが、実際にはテーパリングを可能にする仕組みで、長期、超長期国債を中心に国債買い入れが減らされていく可能性が少なくないと思う。

 個人的には、現在の規模で国債買い入れを続けるのは不可能であり、その方向転換が必要だと思っている。その意味では、今回の決定は「正しい」方向転換だと思う。

 もっとも海外では、日銀は長期金利のコントロールが実際にできるのかといった疑問も出ている(おもしろいものでは、長期金利が下がりすぎたら日銀は国債を売るのかといった疑問もでていた-それはないと思うが)。いまは中央銀行の金融政策抜きに経済が語れなくなっている。専門ではないが、これからも日米欧の金融政策を注視していきたい。

2016/10/7追記

 2016年9月30日、日銀は長期、超長期国債の買い入れ額を月間約2000億円(年2兆円超)減らすと発表した。


イギリスの最低賃金

2016年09月22日 | 日記

 ちょっと前の話になるが、今年(2016年)4月、イギリスは25歳以上の最低賃金を7.2ポンド(1000円:1ポンド=140円で計算)に引き上げた

 これを主導したのはEU残留派で数か月前まで次期首相の最有力候補と考えられていたオズボーン財務大臣(当時)とされている。オズボーン氏は、2017年と2020年に予定される法人税のそれぞれ19%、18%への引き下げで企業に利益が出るとして、最低賃金アップを擁護している(現在は20%)。

 以来イギリス政府は、2020年までに最低賃金を9ポンド(1260円)に引き上げることを目標としている。


シボレー・ボルトEから電気自動車の本格普及がはじまる?

2016年09月20日 | 日記

 この数か月、アメリカで電気自動車、自動運転にかんするニュースが増えており、社会の関心が高まっていることが感じられる。

 こうした中、NYT(ニューヨーク・タイムズ)に、2016年秋発売のGMのシボレー・ボルトE本格普及する電気自動車の先駆になるかもしれないという記事が出た。

 電気自動車普及の妨げになっていたのが、航続距離の短さと価格の高さ(注1)。ところがシボレー・ボルトEの航続距離は、日本よりずっと基準の厳しいEPA基準で238マイル(383キロ)、政府補助を使うと価格は3万ドル(300万円:1ドル=100円で計算)を切るとされている。シボレー・ボルトEは、大衆車の価格で、実用的な航続距離を実現したはじめての電気自動車ということになる。ちなみにこれと同等の性能、価格のものにテスラのモデル3があるが、納車は2017年後半とずっと先である(納車開始が延期されるとする予想も多い)。

 ところでGMはどのようにしてここまで生産コストを低減できたのか?

 先のNYTは、1)リチウム電池をLG化学に外注、2)オリオン工場で他車種と混流生産(ひとつのラインで複数の車種を生産)することで生産効率をアップ、といった要因を指摘している。

 実用的な電気自動車の開発、販売で、日本メーカーが後手に回りはじめたように見えるのは大変気になるところ。

 かつて日本の自動車は高品質、高生産性(低コスト)で世界的に圧倒的な優位に立っていたが、現在、欧米韓の自動車メーカーは品質で日本メーカーに追いつき、品質上の大きな優位はなくなっている

 現在、自動車産業では<自動運転>と<電気自動車>という、一世紀に一度あるかないかの非常に大きな技術革新がおきつつある。こうしたなか競争は、同じものをよりよく安く作るという生産過程の競争から、どのような技術でどのようなものを作るかという開発競争に移っている。日本企業が苦手な分野である。

 家電産業が衰退したいま、日本経済を支える少ない柱のひとつとなった自動車産業の行方が気がかりである。 

(注1) アメリカではすでに、日産リーフ、BMWのi3、VWのe-Golf、テスラのモデルSやモデルXといった電気自動車が販売されているが、それらはいずれも航続距離が短いか、価格が高いかどちらかの問題を抱えている。


国債バブルが崩壊したら

2016年09月18日 | 日記

 現在、日欧米の中央銀行は、歴史上例を見ない大量の国債購入や低い政策金利の設定をおこなっている。これにより国債の利回りはこれまた歴史上例を見ない水準にまで低下している(逆に価格は上昇)。 

 こうしたなか2016年9月15日のフィナンシャル・タイムズによれば、格付け会社フィッチは、最上級の格付け国債の利回りが2011年の水準にまで上昇すれば3.8兆ドル(380兆円:1ドル=100円で計算)の損失が発生すると警告している。

 ちなみに最上級の格付けのアメリカ国債についていえば、現在の長期国債(10年国債)の利回りは1.7%前後。これに対し2011年のそれは3.5%(年初)から2%(年末)となっている。最上級の格付けではないが日本の長期国債についていえば、直近の利回りは0%に近付いているが、2011年の利回りはだいたい1%から1.2%となっている。

 計算の根拠が示されていないので、フィッチの推計の正しさは判断できない。ただ長期的な平均から極端にはなれたものが長続きしないというのは経験が教えるところ。気になる話である。