大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

低格付け企業の借り入れ、優先債・優先ローンが増加: 破綻時のリスク増加

2019年01月27日 | 日記

 ウォールストリートジャーナル(2019/1/25)は、低格付け企業が資金調達するとき、企業が破綻したとき優先的に返済が受けられる優先債・優先ローンの割合がかつてないほど高まっていると報じた。

 逆に減っているのが、企業が破綻したときに返済順位の低い劣後債・劣後ローン

 WSJは、2018年末時点で、優先債・優先ローンの27%は劣後債・劣後ローンをまったく発行していない企業によって発行されているとしている。

 そして、WSJは、企業が破綻したときに切り捨てられる劣後債が少なくなることで、将来、企業が破綻した場合、優先債・優先ローンが十分に返済されない可能性が高まっているとしている。

 世界的な金融緩和が長く続くうち、低利だが安全だと考えられてきた優先債・優先ローンも実は安全ではなくなってきているという驚くような話である。


米連銀、資産圧縮を早期停止か?

2019年01月26日 | 日記

 ウォールストリートジャーナル(2019/1/25)は、FED(連邦準備制度=米中銀)が資産圧縮を早期に停止することを検討していると伝えた。

 FEDは、2017年10月から満期をむかえた国債の補充を停止し、資産圧縮を開始。

 この時点でFEDが保有する米国債はおよそ4.5兆ドル(500兆円:1ドル=110円)。現在はこれが約4兆ドル(440兆円)まで減少している。

 WSJによれば、これまでは1.5-3兆ドル(160兆-330兆円)になるまで資産圧縮が続けられるとみられていた。

 しかし、WSJは、来週開催されるFOMC(連邦公開市場委員会:FEDの金融政策を決定する機関)で、資産圧縮の早期終結が大きな焦点になると報じていている。

 WSJは、3.5兆ドル(400兆円)程度で資産圧縮が停止される可能性を指摘している。

 もしこの報道が事実であれば、アメリカでは高金利期待がさらに低下することになる。

 ところで個人的に気になることがある。

 アメリカでここまで高金利期待が低下してしまうと、逆に、それに反するデータ(たとえば高いインフレ率)や要人の発言が出てきた時、市場が一気に悪化するのではないかという懸念である。

 ちなみに、政府閉鎖といったノイズの影響で、雇用、消費、小売売上高にかんする統計は、しばらくの間、経済のほんとうの姿を伝えられない可能性が高い。

 政府閉鎖の影響がなくなった後にどのような経済統計が出てくるか注目される。

 

参考:

 FEDは2014年10月に米国債の新規買い入れを停止

 FEDはその後しばらくは、満期を迎えた国債についてそれと同等額の国債等をかわりに買い入れて資産額を保っていたが、上記のように、2017年10月から資産圧縮を開始した。


米政府閉鎖が終結: トランプ大統領が譲歩

2019年01月26日 | 日記

 

 2019年1月25日(金)、トランプ大統領は議会と、2月15日までの3週間、政府を再開する予算を承認することで合意した。

 予算案にはトランプ氏が絶対必要だと言っていた壁建設の予算は入っておらず、アメリカのメディアはトランプ大統領が議会に譲歩したと報じている。

 背景としては、(1)世論調査でトランプ大統領の支持率が低下、(2)給料の支払いが止まった連邦公務員の欠勤が増加し、生活への影響が広がりはじめた-たとえば、航空管制官不足から飛行機の発着に大きな遅れが出始めた-、(3)富豪のロス商務長官の失言-欠勤する公務員にローンを借りて出勤すべきと発言して非難が集まった-、といったことがあった。

 ただ、トランプ大統領は2月15日までに壁の建設費が認められなければ再び政府閉鎖となる可能性があるとしており、2月15日が近づくとふたたび不透明感が強まりそう。


裁量労働制の違反企業名の公表はじまる

2019年01月26日 | 日記

 2019年1月25日、厚生労働省は、裁量労働制を違法適用した企業名を公表する制度の導入、運用をはじめた。

 公表対象となるのは大企業のみで、次の3つの条件すべてを満たす企業が対象となる。

(1)裁量労働の適用対象社員の約2/3が法律で認められていない仕事をしていた

(2)上記の約半数以上が違法な残業(サービス残業など)をしていた

(3)そのうち、すくなくとも1人以上が月100時間以上の残業をしていた

 いままでも、法律に違反した企業名を公表する仕組みはさまざまにあったが、公表の基準が明確化されていないことが多く、実際には使われていないケースも少なくない。

 たとえば男女雇用機会均等法では、私の知る限り公表された違反企業はこれまで1件のみ(一方、障がい者雇用促進法では多くの違反企業名が公表されている)。

 今回、明確な基準が示されたことは、これから基準を引き上げていく出発点を作ったものとして評価できる。

 ただ朝日新聞が指摘しているように、今回作られた基準は厳しすぎて「実際はほとんど公表されない可能性が高い」。

 実態をみながら、現実的なものに基準を引き上げていくことが今後求められる。


アメリカで金利上昇期待が低下: ふたたびハイリスク高金利商品に資金が流入

2019年01月23日 | 日記

 昨年末から、学生の論文指導に学内業務、介護が重なりブログを書く時間がなかなかとれない。

 そんななか、最近気になった動きを急ぎ書き留めておく。

 昨年末から年初にかけて世界同時に株の大幅下落がおこった。

 その背景にあったのが、(1)アメリカの金利上昇、(2)米中貿易摩擦の激化、(3)原油価格の低下(アメリカ含む産油国にマイナス)、などであった。

 しかし、現在、世界的な株価の反転がおこっている。

 その原因のひとつは、2019年1月4日にパウエルFRB議長が「利上げは既定路線ではない」と発言したことにある。

 それをきっかけに、アメリカで金利上昇期待が急速に低下ウォールストリートジャーナル(2019/1/9)によれば、ゴールドマンバンカメはともに、2019年末の長期金利を3%と予測するにいたっている(つまり今年1年ほとんど金利が上昇しないと予想)。

 原油価格も、昨年末にOPECとロシアで協調減産が実施され、それ以降上昇基調が続いている。

 米中貿易摩擦は、昨日、アメリカが中国との予備交渉を急にキャンセルしたというニュースが入ってきたが、今年にはいって昨日までは楽観論が広がっていた。

 こうしたなか、ふたたび時計の針を巻き戻すような動きがおこっている。

 ひとつは、米高金利をみこして新興国から流出していた資金が、ふたたび新興国に戻りつつあるということである。

 たとえばフィナンシャルタイムズ(2019/1/18)は、新興国の株などに投資するファンドに、先週1週間だけで33億ドル(3,600億円:1ドル=110円)が集まったとしている。

 もうひとつは、信用度の低い企業向けのハイ・イールド債にふたたび資金が集まりはじめているということである。

 米金利上昇期待が高まる中、昨年11月から40日間にわたってハイ・イールド債の新規発行がないという状態が続いていた(発行しようとすると十分なお金が集まらず、金利も高くなってしまうため)。ウォールストリートジャーナル(2019/1/10)によれば、これは1995年以来の出来事だという。

 しかしこれも今年に入ると風向きがかわり、1月10日以降、低格付け企業によるハイイールド債の発行があいついでいる。

 フィナンシャルタイムズ(2019/1/23)は、最近では、企業の見込みよりハイイールド債に資金が多く集まり、発行金利も低下傾向にあるとしている。

 こうした動きが一時的なものにすぎないのかどうか、注意してみていきたい。