2017年10月12日、トランプ大統領はオバマケアにかかわる低所得者向けの政府補助金を廃止した。
学会があり少し遅くなったが、大事な出来事なのでここに整理しておきたい。
<補助金廃止の影響>
これまで連邦政府は、低所得者が支払う医療費を低くするため保険会社に対して補助金を支払っていた。
今回、トランプ大統領はこの廃止を決めた。
これにより今後10年で1千億ドル(11兆円:1ドル=110円)の補助金削減になる。
補助金が廃止されると、低所得者の保険料が上がったり、採算割れなどからオバマケアから退出する保険会社が増える(地域によってはオバマケアで選べる保険会社がなくってしまう)ことが心配されている。
<補助金の法的問題>
ところでこの補助金はもともとオバマ大統領が大統領令で決めたものだが、大統領令で大きな支出をともなう決定をおこなうことは法的には問題が多い(予算を決める権限は議会にある)。
実際、ワシントンD.C.の連邦地裁は2016年、この大統領令を違法と判断している<アメリカの司法は党派色が強いので、党派性の強い問題法案は反対派の裁判官によって違法と判断される可能性が高くなる-最近ではトランプ氏の入国禁止令が違法と判断された->。
トランプ大統領は、違法状態にある補助金を続けることはできない、と主張している。
一方、トランプケアに積極的な州は、補助金廃止の一時差し止めを求め連邦政府を連邦地裁に提訴する動きなどがでている。
<今後の動き>
前述のように補助金が廃止されると、低所得者の保険料が大幅アップするなど大きな影響がでることが予想される。
このため共和党議員からも補助金の継続を望む声がでている。
この解決策は、予算権限をもつ議会が補助金支出を認める法案を成立させることである。
実際、上院の超党派(議事妨害を阻止できる60人が参加)で法案作りが進むようにみえた。
しかし現在、トランプ大統領がそれにストップをかけるかたちになっている。
トランプ氏が、失敗におわった共和党のオバマケア改廃案と同じような内容を法案に盛り込むことを求めているためである。
具体的には、(1)医療保険に入っていない人への罰金を廃止する(健康な人が保険に入らないことを認めるもので、保険加入者に占める健康状態の悪い人の割合が高まり保険料の高騰が引き起こされる)
(2)医療保険を提供しない大企業への罰金を廃止する(大企業が従業員に医療保険を提供しないことを認める)
(3)出産などを保険のカバーから外すことを認める(これが認められると最低限のカバーだけの保険に入る若い人が増え、カバーの広い保険が必要な中高齢者の保険料が高騰する)
(4)企業・団体が共同で保険を提供するのを認める(その場合、団体構成員の病歴、病者割合、年齢などに応じて、団体ごとにことなった保険料を設定することが可能となる)
この内容では民主党は賛成できない。
補助金廃止の影響が来年以降どのようにでてくるかしっかり見ていきたい。