大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米連銀、年内の利上げは本当にないのか?

2019年02月26日 | 日記

 現在、FED(連邦準備制度=米連銀)は年内は利上げをおこなわないという見方が広がっている。

 ウォールストリートジャーナル(2019/2/19)によれば、FF金利先物から計算される年内利上げの可能性は0.9%まで低下している(市場の予想確率)。

 心配なのはインフレ率の上昇である。

 名目賃金は対前年比で3%を超える上昇が続いており、物価への影響が懸念される。

 ただ、1年前にガソリン価格が急騰した影響で、今後半年ほどエネルギー価格は対前年比で大きなマイナスが続くと見込まれる。

 またウォールストリートジャーナル(2019/2/24)は、FEDが2%のインフレ目標のオーバーシュート(超え)を許容する議論を始めたと報じており、FEDが金融引き締めを再開するハードルが上がる可能性もでてきた。

 こうしたことが、最初に述べたFEDは年内は利上げをおこなわないとする見方が広がる背景になっていると思われる。

 ただ、FED内部もハト派一色というわけではないようだ。

 ウォールストリートジャーナル(2019/2/25)によれば、アトランタ連銀のボスティック総裁は、今年1回、来年1回の利上げを予想している。

 同紙は、ほかにもクリーブランド連銀のメスター総裁などが、経済環境が良好であることが確認できれば利上げを支持すると述べていると伝えている(ともにFEDの金融政策を決定するFOMCのメンバー)。

 発言のぶれが目立つパウエルFRB議長が、今夜、議会でどのような発言をするか気になる。

 

2019/4/20追記

 市場では依然、年内利上げはないという見解が支配的(利下げの予想すらある)。ただアメリカでは2月中旬からガソリン価格が上昇。4月に入ると前年比でプラスになってきている。

米インフレ率、上昇の可能性: ガソリン価格が上昇 (2019/4/2)


トランプ大統領の国家非常事態宣言、違憲の疑いが強い

2019年02月16日 | 日記

 非常事態に大統領に特別の権限を認めるのが国家非常事態宣言

 1976年に国家非常事態法が制定されてから、50近い国家非常事態宣言がおこなわれている。

 ここから日本のメディアでは、トランプ大統領の今回の非常事態宣言はアメリカではとくべつ珍しいものではないとする論評が散見される。

 しかし、そのような見方ではルビオ上院議員など身内の共和党からも違憲だと強い批判が出ている理由がわからないだろう。

 今回の非常事態宣言は、工兵隊の建設資金(アメリカでは昔から工兵隊が運河や公共施設の建設をおこなっているが、その資金)など約67億ドル(7,400億円:1ドル=110円)を議会の承認なく、メキシコとの国境に壁を建設するために流用しようというもの。

 ところで、ニューヨークタイムズによれば、これまでの非常事態宣言の大多数は、海外の紛争などをきっかけに、外国人の資産を凍結したり、輸出入を禁止するもので、今回のように議会の承認なしに予算を流用したケースは2例しかない

 ひとつはブッシュ父による湾岸戦争への支出(イラクのクウェート侵攻に対する戦争)であり、もうひとつはブッシュ子によるイラク侵攻(アフガニスタンを根拠とするアルカイダによる米国攻撃に対して、なぜかイラクへ侵攻してしまった戦争)への支出である。

 しかし、このどちらも、もとからあった軍事予算を特定の戦争に向けただけのもので、今回のように議会が決定した予算をまったく違った用途に転用するものではなかった。また、どちらも、今回と異なり、議会から特別の反対は受けなかった。

 アメリカでは、大統領(行政府)に予算の作成、決定の権限はなく、それは議会の専決事項となっている。

 今回の非常事態宣言は、こうしたアメリカの三権分立の原則に抵触するもので、これまでの非常事態宣言とは大きく異なっているのである。

 こうしたことから、裁判ではトランプ大統領はきわめて厳しい立場におかれると予想される。

 ついでに触れておけば、連邦最高裁ではロバーツ長官がスイングボータ―になる可能性が高まっており、最高裁までいってもトランプ大統領の主張がすんなり通るかどうかはわからない状況になりつつある。

 流用した予算を使って実際に壁の建設がおこなわれる可能性は小さいのではないかと思われる。

 もちろん、そのことはトランプ大統領自身よくわかっており、今回の非常事態宣言はコアな支持者向けの一種のパーフォーマンスとしての色彩が強かったのではないかと思う(アメリカ人の52%が壁の建設に反対しているが、トランプ氏の支持者にかぎると壁への賛成が96%にもなる)。

 政府閉鎖が終わってから、トランプ大統領の支持率は回復基調にあった。

 この支持率にどのような変化があらわれるか注視したい。


オンラインゲーム、人気ゲームに利用者集中の傾向強まる: フォートナイトの一人勝ち

2019年02月11日 | 日記

 世界のオンラインゲーム市場で、人気ゲームに利用者が集中する傾向が強まっているようだ。

 現在、とくに人気を集めているのがフォートナイトという無料のシューティングゲーム。

 100人が一斉に戦い、最後まで生き残った者が勝者になるというゲーム(バトルロイヤルモード)らしい。

 ウォールストリートジャーナルによれば、2018年11月の利用者数はなんと2億人

 人気が人気を呼ぶかたちで、他ゲームから人を奪っている。

 WSJは、このあおりで2月初旬には他のゲームメーカーの株価が軒並み大きく下がったとしている(今はどうなっているか知らないが)。

 このなかには昨年10月以来、2.3千万のゲーム(Red Dead Redemption II)を売りあげたテーク・ツー(Take-Two)という会社も含まれているという。

 ところで私は、大学生の時にファミコンが発売されたいわゆるファミコン世代

 ドゥームというゲームを少ししたことがあるぐらいで、オンラインのシューティングゲームはまったく経験がない。

 しかし最近は、こうしたゲームが世界中の若者に爆発的に広がり、欧米では人気スポーツ(eスポーツ)として定着しつつある。

 遠くないうちに日本の大学もゲーマーを推薦入学させるようになるのだろうなあ(アメリカではすでにそうなっている)。 


米企業、2019年第1四半期、減益に転落か?

2019年02月08日 | 日記

 朝日新聞(2019/2/8)は、東証一部上場企業の純利益(2019年3月期決算)が前年比でマイナス(減益)になる見通しだと伝えた。

 これに対しつい最近まで、アメリカ企業は、ペースは落ちるものの2019年も増益が続くと考えられていたが、この見通しが変わりつつある。

 ウォールストリートジャーナル(2019/2/7)によれば、これまでにS&P500に属する約30社(ネットフリックスやデルタ航空など)が2019年第1四半期の純利益の予想を発表。

 その予想値は、市場予想を下回る前年比1.9%のマイナス(減益)となった。

 WSJによれば、2018年9月の時点では、今四半期の純利益は前年比7%の増加(増益)と予想されていた。

 減益となれば、2016年第2四半期以来となる。

 ただWSJは、企業は慎重な予想を出しがちで、2018年第4四半期には景気減速が意識されはじめたにもかかわらず70%の企業が予想を上回る純利益を出しているとも記している。

 2019年4月からはじまる2019年第1四半期決算に注目したい。

関連する当ブログ記事

アメリカで収益後退: 景気後退入りのサインとなるか?(2019/1/2)


プーチン大統領の支持率が過去最低に

2019年02月05日 | 日記

 2019年1月21日のフィナンシャルタイムズは、プーチン大統領の支持率が33.4%と過去最低になったと報じた。

 2014年、ロシアはウクライナに属していたクリミア半島セヴァストポリを自国に編入(クリミア半島危機)。

 この動きは欧米諸国の激しい批判を引き起こしたが、逆に国内ではプーチン大統領の支持率が上昇。1年前までプーチン大統領の支持率は6割近い数字を保っていた。

 しかし、原油、資源価格の下落に欧米による経済制裁などが重なり、ロシア経済は低迷

 プーチン大統領は、財政悪化を食い止めるため、2019年1月から付加価値税(消費税)を18%から20%に引き上げ、さらに年金受給年齢の引き上げを提案している(男60歳から65歳、女55歳から63歳)。

 こうしたものに対する批判が支持率低下につながっているとみられている。

 フィナンシャルタイムズは、批判者を徹底排除する強権的な政治がおこなわれているため、こうした状況でも対抗馬はでていないとしながらも、プーチン大統領が領土問題などで自国に不利になるような決定を下すことはますます難しくなっていると述べている。