2018年1月19日(金)、米上院は暫定予算案を可決することができず、1月20日(土)から連邦政府機関は軍、国境警備、航空管制、空港荷物検査など一部保安機関を除き休業に入った(日本の空港の荷物検査は民間がおこなっているが、アメリカでは連邦政府職員がおこなっている)。
焦点は2012年にオバマ大統領がはじめたDACA(ダカ)と呼ばれる政策。
<DACAとは>
(親に連れられたりして)16歳未満のときに不法にアメリカに入国した子供で、2012年6月15日時点(DACAの政策が発表された日)まで引き続きアメリカで生活している方が対象(ほかにも大きな犯罪をおかしていないなどいくつか条件がある)。
申請をして認められると2年間、強制退去から逃れることができ、また合法的に就労することが認められる(2年ごとに延長可)。
現在、およそ80万人がこの仕組みを利用しており、かれらはドリーマーDreamersと呼ばれている。
<トランプ大統領によるDACAの終了>
しかしながら、2017年9月5日(火)、トランプ大統領は2018年3月5日(月)から段階的にDACAを終了すると決定した。
正確には、2018年3月5日以前にDACAの期間が切れる人は一度だけ2年間の延長を受けることができるが、2018年3月6日(火)以降にDACAの期間が切れる人は、その時点でそれまでの権利を失うことになる-つまり強制送還の対象になる。
トランプ大統領はDACAを中止する理由として、DACAが議会の立法でなく、オバマ政権の政策としておこなわれ、その正当性が裁判で問われていることを挙げたうえで、議会が必要と考えるなら6か月以内(DACA終了前)にあらたな立法をおこなうよう求めた。
しかし、共和党は基本的にDACAへの反対議員が多く、オバマ政権下では何度もDACAの法律を廃案に追い込んでいる(だからオバマ大統領は、政策としてDACAをおこなう道をとらざるをえなかった)。こうした共和党の立場は、大統領がかわったからといって、急に変わるものではない。
当然のことながら、オバマケア改廃や税制改革など他の課題が優先され、超党派によるDACAの立法化は今日まで実現していない。その結果、あと1か月ちょっとで強制退去者が出始めるという差し迫った情勢が生まれている。
こうした中おこなわれたのが、今回の暫定予算案の採択であった。
ドリーマーの強制送還を止めたい民主党は、DACAの延長などがなければたとえ連邦政府が閉鎖されても暫定予算を通さないという道を選んだ。
<今後>
親に連れてこられた子供に責任はないと考える人が多いのか、世論調査では圧倒的な大多数がDACAを支持している。
たとえばCBSの世論調査では87%、約9割がDACAを支持している。
共和党支持者にもDACA支持は多い(同調査では共和党支持者の79%がDACAを支持)。
ただ、民主党がDACAのために政府閉鎖という手段をとったことについては意見は分かれている。
CNNの世論調査では、56%が政府閉鎖は避けるべきだと答えている。
共和党が問題の早期解決をはかるため妥協に動くのか、政府閉鎖に対する批判が増して民主党が妥協を余儀なくされるのか、今後のなりゆきを見守りたい。
2018/1/23(火)追記
米両院、暫定予算案を採択