大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

加州、新燃費規制でフォードなどと合意

2019年07月26日 | 日記

 ニューヨークタイムズ(2019/7/25)によれば、カリフォルニア州と4自動車メーカーは新しい燃費規制で合意した。

  環境保護を重視するオバマ政権は2011年、2025年までに販売する車の平均燃費を1ガロン当たり54.5マイル(リッター当たり23.17キロ)以上にする規制改定をおこなった

 しかし、地球温暖化をでっち上げ(hoax)と批判するトランプ政権は、これを1ガロン当たり37マイル(リッター当たり15.73キロ)に変更するとしている。

 これに異をとなえたのがカリフォルニア州(人口3700万人)。独自の燃費基準を設けるとし自動車メーカーと交渉を続けてきた。

 そして今回、フォード、VW、ホンダ、BMWの4社はカリフォルニア州と、全米で販売される自動車の平均燃費2026年までにガロン当たり51マイル(リッター当たり21.68キロ)にすることで合意した。

 これまでアメリカの燃費規制にならってきたカナダも、これに追随する姿勢をみせている

 なおトランプ政権は、これを違法として裁判にうったえるかまえをみせている。

2019/8/21追記

 ニューヨークタイムズは、さらに2社がカリフォルニア州の規制に加わる見込みと伝えた。

 同紙によるとトランプ政権は2019年7月、トヨタ、FCA、GMの首脳をホワイトハウスに呼びカリフォルニア州の規制に加わらないよう要請した。しかし、メルセデスのほかホワイトハウスに呼ばれた1社(社名は明らかにされていない)もカリフォルニア州の規制に加わる見込みとなっている。

米大統領選挙で移民問題が最大の争点に:強制送還のルール変更

2019年07月23日 | 日記

 来年2020年秋におこなわれる米大統領選挙で、移民問題が最大の争点になりつつある。

 2019年7月15-16日、ロイターとIPSOSがおよそ千人を対象におこなった調査によれば、有権者登録をした人がいまもっとも重要と考える問題は移民問題(25%)。これに、医療保険(18%)、経済問題(12%)がつづいている。

 共和党支持者にかぎると、移民問題をもっとも重要とする人が41%にもおよぶ。

 こうしたなか、米国土安全保障省は2019年7月22日(月)、正式な手続きをしていない移民(未登録移民)の強制送還を容易にするルール改正を発表した。

 BBCによれば、これまでは国境から100マイル(160キロ)以内で拘束され、かつ米国滞在が2週間以内の場合にかぎって、裁判をおこなうことなく強制送還することが可能だった。

 しかし今回、米国に2年以上継続して滞在していることを証明できなければ、米国内のどこで拘束されても、裁判なし(弁護士の接見なし)に強制送還が可能になった。 

 なおBBCは、アメリカには1000万人以上の未登録移民がおり、米国の平均滞在年数は15年との推計を紹介。こうした方々が突然拘束された場合、(弁護士に依頼できないので)2年以上アメリカに滞在していることを証明するのは簡単ではないとの意見を紹介している。

 こうした姿勢は、オバマ政権が未成年のときに親につれられて米国にきた方々(ドリーマー)について、ただちに強制送還させない仕組みをつくったのとはまったく逆の動き。

 トランプ大統領は、反移民の世論におされてこうした政策をとっているというより、トランプ大統領が先頭にたって反移民(とくに白人以外の移民へのつよい反発)の感情をあおっているようにみえる。

 たとえばトランプ大統領は、オカシオ=コルテス上院議員ら非白人の4人の民主党女性議員に対し「アメリカに不満があるなら元の国に帰れ」と批判しているが、これに触発されルイジアナの一人の警察官がFacebookにオカシオ=コルテス氏は撃たれるべきだとコメントし、他の警察官がそれにいいねするといったことがさっそくおこっている(二人の警察官はただちに解雇された)。

 来年の選挙まで、こうしたニュースが続々とでてくるのは間違いない。

 これがトランプ氏の再選に寄与するのか、それとも再選の妨げになるのかしっかり見極めていきたい。

 

トランプ政権、移民締めつけ (2019/7/17)

アメリカとメキシコ、不法移民抑制で合意: 関税は無期限延期 (2019/6/9)


中国、債務不履行が増加: 中国民生投資、550億円の債務不履行

2019年07月20日 | 日記

 ウォールストリートジャーナルによれば、2019年7月19日(金)、保険、不動産、航空機リースなどをてがける中国民生投資(China Minsheung Investment Group)は、8月2日に償還予定だった5億ドル(550億円:1ドル=110円)のドル建て債券の払い戻しができないと公表した。

 WSJによれば、中国民生投資の総資産は3096億元(5兆円:1元=16円)、負債総額は2321億元(3.7兆円)。

 実は、中国民生投資の債務不履行は今回がはじめてではない。

 ブルームバーグによれば、中国民生投資は2019年1月29日に償還予定だった30億元(500億円)の国内向け債権でも期日に払い戻しができなかった

 このためWSJによれば、その後ドル建て債券について前倒し返済(クロスデフォルト)を迫られるといったこともおこっていた。

 債務不履行の原因についてWSJは、同社は短期資金に頼って長期投資をおこなっていたため、資金調達に困難をきたした可能性を示唆している。

 このことで思いだされるのはいぜんブログでふれた包商銀行の公的管理への移管

 このニュースが流れた後、中国では銀行間取引の金利が急上昇したり担保要件が引き上げられ、中国政府が流動性確保(中銀による中小銀行向け融資限度の引き上げや預金準備率の引き下げなど)に動くことになった。

 中国政府の動きにより銀行間取引の金利は低下にむかったが、中銀から直接融資をうけられないノンバンクなどはいぜん資金調達が困難な状態が続いているとされている。

 中国民生投資のデフォルトは、こうした流れに巻き込まれたようにも思われる。

 中国では数年前までデフォルトはほとんど発生しなかった。しかし、債務過剰やモラルハザード(絶対返済されると考え、無理な投資がどんどんおこなわれる)が問題になり、徐々に不良債務の整理(デフォルト)が進むようになった。

 中国のGDP成長率は米中貿易摩擦で低下したといっても6%台。毎年オーストラリアのGDPに匹敵する富あるいは日本のGDPの2割に近い富が中国に生まれている(中国では、5年ほどで日本と同規模の経済的な富が生みだされ続けている)。

 過剰債務(企業の借りすぎ)の問題を成長を続ける中国がどのように解決していくのか長い目でみていきたい。

中国の19銀行、いまだ2018年の決算発表できず: 包商銀行は公的管理に移行 (2019/6/11)

中国の地方債発行、昨年比70%増?: 景気テコ入れなるか? (2019/4/27)

中国の自動車生産、販売台数が前年を下回る: 世界経済に大きな影響 (2018/11/10)

中国、2兆円規模のあらたな減税を発表 (2019/10/22)

中国で新規の銀行貸し出しが増加 (2019/10/18)

中国、インフラ投資に特化した地方債を大量発行(2018/9/28)

中国、大型の個人減税を発表 (2018/7/4)


トランプ政権、移民締めつけ

2019年07月17日 | 日記

 来年(2020年)の米大統領選挙では、移民政策が大きな争点のひとつになるとみられている。

 こうしたなかトランプ政権は支持者へのアピールをねらって、移民への締め付けを加速させている。

 ひとつは、難民申請を難しくするルールの設定。

 2019年7月15日(月)、米国土安全保障省は、難民申請者は最初に入国した国で難民申請をおこなわなければならないとする新しいルールを公表した。

 ニューヨークタイムズによれば、2019年度(2018年10月-2019年9月)、南部国境で拘束された不法入国者(家族)のうち米国と国境を接するメキシコ出身者は3200人。

 これにたいし、メキシコを経由して米国に入国したエルサルバドルとグアテマラ出身者は36万3300人

 後者の方々は、これからはメキシコで難民申請をおこなわなければならなくなる。

 米政府は、メキシコおよびグアテマラ政府と上記の新ルールについて交渉をおこなっていたが、今回、米国は両国の合意なしに一方的なルール改定に踏み切った。

 もうひとつは、難民申請を否定された方々の拘束。

 いぜんのブログでもふれたように、アメリカでは未成年をともなった家族が難民申請する場合、その審査がおこなわれている間、アメリカ国内に居住することを許されている。

 難民が認められなかった場合NYTによれば全体の6-8割)、国外退去をもとめられるが、そのままアメリカ国内に居住を続ける方々が多いとされている。またサンクチュアリと呼ばれる進歩的な地域では、こうした方々の強制的な排除に反対する意見が多数派となっている。

 しかし2019年7月15日(月)から、トランプ政権は大々的な宣伝のうえ、こうした人々の強制捜査、拘束を開始した。

 またアメリカでは現在、不法入国した児童については20日以上、拘留してはならないとされているが、トランプ政権は、その拘留期間の延長も計画している。

 アメリカ社会の反応が気になるところである。

 

2019/7/25追記

 2019年7月24日(水)、サンフランシスコ連邦地裁は第3国を経由してアメリカに入国した人について、そのことを理由に難民申請を受け付けないとするルール変更を差し止める判断をくだし、ただちに実行にうつされた。

2019/7/27追記

   2019年7月26日(金)、グアテマラはアメリカに難民申請するためグアテマラに入国した人(おもにホンジュラスとエルサルバドルからの入国者)について、グアテマラで難民申請しなければならないとするルール変更に合意した

 

アメリカとメキシコ、不法移民抑制で合意: 関税は無期限延期 (2019/6/9)