大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

共和党、オバマケア改廃を断念:それで税制改革はどうなる

2017年03月25日 | 日記

 2017年3月24日(金)、共和党は法案反対派を切り崩すことができず、オバマケア改廃を断念した。

 これについては、トランプ氏の指導力が低下し、今後の政策決定にマイナスの影響がでるという意見と、人気のある税制改革に早く進めるようになったので政権にとってプラスだという意見がある。

 ただ今回、トランプ氏が反対派を切り崩せなかったということで、税制改革も同じように頓挫する可能性がでてきた。

 とくに20%の国境調整税について共和党内には反対が多く、法案成立がスムーズに進む可能性は低い。

 共和党・下院案では、20%の国境調整税を導入し法人税を35%から20%に引き下げることになっている。

 WSJによれば、ゴールドマンサックスの推計として、法人税の20%への引き下げにより企業収益が10%増加するとしている。アメリカの株高は、かなりの部分、この見通しによって正当化されている。   

 しかし、もし国境調整税が導入されない場合は、財源がなくなるため法人税引き下げは30%程度になり、企業収益の増加は4%程度にとどまるとWSJは伝えている。


フィンランドは高税率、高福祉だが、日本より経済成長しているのはなぜ?

2017年03月25日 | 日記

       

   今、研究に必要な資料を集めるためフィンランドに来ている。

 フィンランドをはじめとする北欧に対して、日本では高税率、高福祉で活気がない社会という印象を持つ人も多い。

 実際、フィンランドの消費税は24%、所得税の最高税率は50%ー日本は45%ー

   ゼミの学生にこうした数字を紹介すると、そういう社会では働く意欲がなくなる、起業する人が少なくなる、経済が停滞する、欲しいものが買えなくなって生活がまずしくなる、という意見がきまってでる。

 ただ軽減税率があって、食料などの税率は14%と正直日本の8%とくらべて特に大きな負担感はない。本の消費税は10%でいまの日本とあまりかわらず。大学まで授業料は無料だ。

 また一人当たりGDPは日本より高く、その成長率は日本を上回っている。

 出生率は日本の1.5倍ほどと高く、まちなかでは若者の姿がめだつ。

 ブランド品など商品が少ないという意見もよく聞くが、東京とくらべればそうかもしれないが、少子高齢化や人口流出でシャッターが目立つ日本の中小地方都市とくらべると逆のことが言える。

 ちなみにフィンランドの人口は約550万。首都ヘルシキンの人口は約60万人。ヘルシンキは首都であるから特別であるとしても、人口が同等規模の都市を日本とフィンランドでくらべると、フィンランドの都市の方がはるかににぎわいがあるように思う。それにはいろいろな理由があると思うが、地域格差が小さいことも大きく関係している。

 労働時間が短いのに(基本的に残業がない)、一人当たりのGDPが日本以上で、日本以上に経済成長していることは目を見張る。

 今回は、フィンランドの産業史にかかる資料を中心に集めているが、日本にも参考になることがありそうだ。なるべくたくさん資料を見つけて帰りたい。


オバマケア改廃案、今週木曜日に下院本会議で可決の見込み

2017年03月20日 | 日記

 WSJ(2017/3/20)によると、オバマケア改廃の中心となっている共和党のライアン下院議長は、現在の法案を修正してとくに50代と60代の負担を軽減する必要を認めた。

 WSJは、法案は一部修正されたうえ、今週の木曜日(3/23)に下院本会議で可決される見込みと伝えている。

 上院では共和党から二人の造反者がでると法案が通らないが、上院には大統領選挙でトランプ氏にひどい中傷を受けたルビオ氏やマケイン氏をはじめ下院案に否定的な共和党議員が多い。

 最終的にどのような形で法案がまとまるか引き続き注視していきたい。

★ 2017/3/22追記

 おもな修正内容は、(1)貧困層むけの公的医療保険メディケイドの受給資格に「働いている」という条件を付ける権利を新たに州に認める、(2)年齢ごとに決められている定額の税額控除(補助金)を上院が修正できる余地(ファンド)を設ける、といったもの。

 この修正案の(2)の部分に対し、もともと税額控除(補助金)の完全撤廃を求めている下院の保守強硬派(自由コーカス)が強く反発。

 自由コーカスは木曜に予定される下院本会議で、修正案に反対するとしている。


議会予算局(CBO)が、トランプケアの影響を分析

2017年03月16日 | 日記

 2017年3月13日(月)、議会予算局(CBO)は、共和党・下院のオバマケア改廃案の影響を分析した結果を公表した。

 (プラスの影響1:財政赤字削減)

 個人や州への補助金削減により10年間(2017-2026年)で財政赤字を3370億ドル(約39兆円:1ドル=115円で計算)減らす

 ちなみにWSJによれば、2010年にCBOは、富裕層への増税などによりオバマケアでも2019年までに財政赤字が1240億ドル(14兆円)減るとの分析を公表している。

 (プラスとマイナス:保険料)

 保険に加入しない人への罰金がなくなることで、健康な人が保険に加入しなくなり、おもにその結果として2020年にかけて保険料が上昇する。

 2018,9年の保険料の上昇率は、15-20%になるとみられる。

 ただし2020年以降は保険料が低下し、2020年にはオバマケアを続けるより10%程度安くなる。

 (マイナス)

 2018年に1.4千万人の人があらたに無保険になる。

 それが2020年には2.1千万人、2026年には2.4千万人にまで増加する。

 この結果、2026年における無保険者は5.2千万人に達する(オバマケアでは2.8千万人)。

 大統領選挙以前はどの世論調査をみても、オバマケアを否定的に見る人が、肯定的にみる人より多かったが、最近では、オバマケアを肯定的にみる人が過半数を超えるようになっている。

 共和党支持者の間でも不満が大きくなっており、現在アメリカでは共和党・下院のオバマケア改廃案がこのまま上院を通過することは不可能とみる人が増えている

 今後、どのようなスピードで、どのように法案修正が進むか注目される。


トランプケア(オバマケア改廃)で、1年の保険料が100万円以上アップも

2017年03月13日 | 日記

 共和党・下院が進めるオバマケア改廃案により、1年の保険料が100万円以上ふえるケースもあることがわかってきた。

  保険料がとくに増えるのは、人口が少ない地域(=保険料が高い地域)に住んでいる64歳までの高齢者(65歳からは公的保険メディケアに入れる)。

 2017年3月13日(月)のウォール・ストリート・ジャーナルによると、62歳で年収1万8千ドル(約210万円:1ドル=115円で計算)の場合、大統領選挙でトランプ氏が勝利した郡の41%で保険料が1万ドル(115万円)以上増えることになる。一方、クリントン氏が勝利した郡では、保険料が1万ドル以上あがるのは28%のみ。

 他の先進国と比べて医療保険料が高いことに多くのアメリカ人が悩んでいるが、その責任をオバマケアにすべて押し付け、とにかく保険料を安くすると大見得をきって大統領に当選したのがトランプ氏。

 その約束を果たせるかどうか、アメリカの注目が集まっている。

  なお今日にも、議会の予算作成を手助けする議会予算局(CBO)が医療保険を失う人数の予測を公表する予定になっているが、ホワイトハウスはCBOの予測を信用できないと批判するとみられている。それでトランプ氏を支持した人々が納得するかどうか注目される。 

★ 関連ブログ(オバマケア改廃案の説明)

 オバマケア改廃で富裕層が大幅減税。そのしわよせで、低所得者に無保険者が大量発生の見込。 (2017/3/11)

  下院・共和党、ようやくオバマケア改廃案を提出 (2017/3/8)