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バリオニクス1


 バリオニクスは白亜紀前期バレム期にイギリスに生息したスピノサウルス科の魚食性恐竜である。スコミムスと共にバリオニクス亜科をなす。ただしスコミムスはバリオニクスと同属とすべきだという意見もある。バリオニクスはスピノサウルス科の中では生息時期も古く基盤的な種類で、頭部の正中線上に鼻骨のとさかがあるが、背中にはスコミムスやスピノサウルスのような神経棘の「帆」は発達していない。
 1983年にイングランド南部でウィリアム・ウォーカー氏が発見した巨大なカギ爪をきっかけとして発掘された全身骨格に基づいて、1986年に英国自然史博物館のチャーリッグとミルナーによって記載された。全身の約70%の骨が発見されている。その後、スペイン北部からも部分的な頭骨が見つかっている。
 ワニのように長い顎と多数の歯から魚食性が推測されたが、魚食性の確実な根拠となったのは、バリオニクスの腹腔と考えられる部位から大型魚類レピドテスの鱗と歯が見つかり、しかもそれらが消化されかけた痕跡が認められたことである。下顎の歯(歯骨歯)は32もあり、一般の獣脚類の2倍であるという。頚椎の形状から、バリオニクスの頸は他の多くの獣脚類のように強くS字状に曲がってはいなかったとされる。
 バリオニクスの前肢は、カギ爪が発達しているといってもドロマエオサウルス類のように細長いのではなく、むしろ太短くて非常にがっしりしている。スピノサウルス類はトルボサウルスなどと同様に、前腕が短く手(manus)が大きく、強大なカギ爪をもつ。また第1指のカギ爪を強調するあまり、第1指が突出して長いように描いた絵もみかけるが正確ではない。他の指の末節骨に比べて第1指の末節骨は特に大きいが、指全体の長さとしては3本とも大差はなく、第1指の長さは第2指と同じくらいである。テタヌラ類の手の3本指の指骨式は2・3・4なので、アロサウルスの手をみればわかるようにもともと第1指の末節骨は大きいのであり、カギ爪が大きく発達した種類では第1指の末節骨が大きくなりやすい傾向があり、これが特に目立つことになると思われる。
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