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肉食の系譜
サウロルニトイデス1

多くのトロオドン類は、歯冠と歯根の間がくびれた形の歯に、先端側を向いた大きな鋸歯をもつ。これはトロオドン科の特徴の一つとされてきた。しかし最近では、トロオドン科の中には鋸歯をもつものと鋸歯をもたないものがあることがわかってきたようである。トロオドン科の中でもビロノサウルス、メイ、さらに最近報告されたウズベキスタンのウルバコドンの歯には鋸歯がない。また最も原始的なシノヴェナトルは、ドロマエオサウルス類にみられるような小さな鋸歯をもつ。これらのことから、大きな鋸歯をもつことは、トロオドン科の共有派生形質ではなく、トロオドン科の中の一部のグループの共有派生形質と考えられるようになった。
また典型的なトロオドン類の中足骨はアルクトメタターサルであり、第2中足骨が第3、第4中足骨より明らかに短く,また細く,第4中足骨が最も太いという非対称性をもつこともわかりやすい特徴であるが、ある程度の非対称性は基盤的なドロマエオサウルス類であるミクロラプトルやシノルニトサウルスにもみられるという。また最も基盤的なトロオドン類であるシノヴェナトルの中足骨はアルクトメタターサルではない。
そこで最近ではトロオドン科の共有派生形質として、下顎の歯骨の側面に一本の水平な溝があり、その中に神経血管孔が並んでいること、底蝶形骨の陥凹がないこと、左右の鼻孔の間の部分internarial barが背腹に扁平であること、下顎(歯骨)の前端部の歯が密集して生えていて、歯槽が互いに融合してひとつながりの溝になっていること、歯の数が多いこと、などが挙げられる。
サウロルニトイデスはトロオドンと共に、進化した大型のトロオドン類で、白亜紀後期カンパニア期からマーストリヒト期にアジア(モンゴル、中国)に生息した。サウロルニトイデスとトロオドンでは、歯骨の前端が内側に屈曲してU字型の下顎結合をなす。ただし両者は歯の形態が異なっている。トロオドンの上顎骨歯や前方の歯骨歯では、一本の歯の前縁にも後縁にも鋸歯がある。それに対してサウロルニトイデスの上顎骨歯や歯骨歯では、歯の前縁には鋸歯がなく、後縁のみにある。(前上顎骨歯については、鋸歯のある全てのトロオドン類で歯の前縁にも後縁にも鋸歯がある。)
参考文献
Xu, X., M. A. Norell, X.-L. Wang, P. J. Makovicky, and X.-C. Wu. 2002. A basal troodontid from the Early Cretaceous of China. Nature 415:780-784.
Makovicky, P. J., M. A. Norell, J. M. Clark, and T. Rowe. 2003. Osteology and relationships of Byronosaurus jaffei (Theropoda: Troodontidae). American Museum Novitates 3402:1-32.
Makovicky, P. J., and M. A. Norell. 2004. Troodontidae; pp. 184-195 in D. B. Weishampel, P. Dodson, and H. Osmolska (eds.), The Dinosauria. Second Edition. University of California Press, Berkeley.
Averianov, A. O., and H-D. Sues. 2007. A new troodontid (Dinosauria: Theropoda) from the Cenomanian of Uzbekistan, with a review of troodontid records from the territories of the former Soviet Union. Journal of Vertebrate Paleontology 27:87-98.
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