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肉食の系譜
アフロヴェナトル1
アフロヴェナトルは、ジュラ紀中期(バス期からオックスフォード期)に北アフリカのニジェールに生息したメガロサウルス類で、1994年に記載された。部分的な頭骨と体の骨格が知られている。全体としてアロサウルスと似ているが、個々の骨が細長く、より華奢なつくりとなっている。
アフロヴェナトルの固有の形質は、前眼窩窩の前縁が耳たぶ状になっている、第3頸椎の神経棘が低い長方形、非常に扁平な半月形の手根骨、第1中手骨の第2中手骨との関節面に広い突縁があることであるという。
前上顎骨と鼻骨は見つかっていないので推定であるが,頭骨は長く,丈が低い(長さに対する眼窩の位置での高さの比率が1/3以下)。他のメガロサウルス類でははっきりした涙骨角はないが、アフロヴェナトルには低い涙骨角があり、含気孔がある。上顎骨にはスリット状のpromaxillary fenestra と小さなmaxillary fenestraがあり、14本のナイフ状の歯がある。下顎はほとんど発見されていない。前肢はアロサウルスと同じくらいの長さと推定されているが、上腕骨が比較的長く、手根部がより扁平で、第3指の末節骨が小さい。撓骨と尺骨はほとんど見つかっていない(論文の骨格図では遠位端のみがあるように描かれているが、言及はない)。後肢はアロサウルスと比べて遠位の骨要素が長い。大腿骨に対する脛骨の比率は、アロサウルスの0.81に対してアフロヴェナトルでは0.90である。足(中足骨と趾骨)もアロサウルスより細長い。
1994年のセレノの記載では,前眼窩窩にmaxillary fenestraがある、上顎骨の歯列が眼窩の前方に限られるなどの形質からテタヌラ類であり、上顎骨の前方突起が長い、後眼窩骨の腹方突起が横に幅広いなどの形質からスピノサウルス上科(原文:トルボサウルス上科)とされた。前肢の第1指の末節骨がそれほど大きくないことから基盤的な種類として、メガロサウルス科(原文:トルボサウルス科)やスピノサウルス科の外に置かれた。
Allain (2002)は頭骨の45の形質に基づいて、メガロサウルス類を中心に基盤的なテタヌラ類の系統解析を行い、その結果、トルボサウルス、エウストレプトスポンディルス、ドゥブレウイロサウルス、アフロヴェナトルをメガロサウルス科としている。ここではスピノサウルス上科の共有派生形質は、後眼窩骨の腹方突起が眼窩の下縁近くまで延びていること、上顎骨の前方突起が長方形であること、頭骨の長さに対する眼窩の位置での高さの比率が1/3以下、などとしている。メガロサウルス科の共有派生形質は、後眼窩骨の腹方突起の断面がU字型であること、方形骨に孔がないこと、などとしている。さらにAllain (2002)ではメガロサウルス科をトルボサウルス亜科(トルボサウルスとおそらくエドマルカ)とメガロサウルス亜科(エウストレプトスポンディルス、ドゥブレウイロサウルス、アフロヴェナトル)に分けている。両者の違いは、前眼窩窩のpromaxillary recess (fenestra)の部分がトルボサウルスでは浅い窪みであるが、後の3種類では深い孔である(ただし内部で閉じている)ことなどである。(ここはアロサウルス、シンラプトルやコエルロサウルス類では内側まで貫通している。)
The Dinosauria 2nd ed. (2004) ではメガロサウルス科のうちエウストレプトスポンディルス亜科としてエウストレプトスポンディルス、ドゥブレウイロサウルス、アフロヴェナトル、ピアトニツキサウルスを含めている。共有する形質はmaxillary fenestraがあることなどとしている。
初めて見たのは1998年の科博(ゴンドワナ)で、イラストは2002年の恐竜博の全身復元骨格を元にしている。ところでアフロヴェナトルの前腕(撓骨・尺骨)はほとんど発見されていないようである。スピノサウルス上科では上腕骨に対して前腕が短いのが特徴とされている。現在メガロサウルス科の中に入っているのであれば、もう少し前腕が短くてもいいような気もする。あるいは前腕が短いのは、スピノサウルス科とトルボサウルスなどで独立して獲得した形質なのだろうか。
参考文献
Sereno, P. C., J. A. Wilson, H. C. E. Larsson, D. B. Dutheil, and H. D. Sues. 1994. Early Cretaceous dinosaurs from the Sahara. Science 266: 267-271.
Allain, R. 2002. Discovery of megalosaur (Dinosauria, Theropoda) in the Middle Bathonian of Normandy (France) and its implications for the phylogeny of basal Tetanurae. Journal of Vertebrate Paleontology 22:548-563.
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