新しい雑誌の仕事で、疎遠になっていた、日本酒を専門とする文筆家の千恵ちゃんと再会し、縁を手繰り寄せることができた。そういう機会が得られたことは、本当に嬉しいことだった。
千恵ちゃんとの再会と、熱き酒造家さんへの取材のことをブログに残したら、それを読んでくれたお米の育種・開発をしているSさんからメールが届いた。何でも7年前に育種して、今、何とか酒造家さんたちに広がりつつある酒米「吟のさと」についての報告があり、ぜひ千恵ちゃんを紹介してほしいという。
その方のメールにあった「小生の、この酒米に掛ける思いの発露とお酌み取り頂いてご容赦下さい」という一文に、私は心打たれ、すぐに千恵ちゃんに連絡を取ると、彼女は快く「私自身は、文章書く以外はからっぽの人間なので、むしろSさんからいろいろなことを教えて頂くことになること必至ですが、どうぞよろしくお伝えください」と返信があった。
私からすれば、おふたりともその道のオーソリティーである。多分、おふたりがそういったことをし続けてこられたのは、自分ひとりの力でできたことではないこともよく分かっているという謙虚さを持ち、それでいて自分がテーマとして追い続けていることへの情熱があったからだろう。そのことが、言葉の端々やその姿勢によく表れているので、心打たれたのだと思う。
こういった方々をつなげてあげられることが、私にはとても嬉しかった。
「経験は大事だ」とよく言われる、もちろんさまざまな経験をしないよりはしたほうがいいと思う。
でも、経験してきたはずなのに、それを次の仕事や人間関係に活かせていない人もいる。頑なに我慾だけに走り、経験をまったく活かせない人がいることを、今回新しく作る雑誌で思い知ることになったのだけど、千恵ちゃんやSさんの自分の仕事に対する、いい意味での自負や真摯な姿勢を見て、心地よさを感じたとともに、仕事は「人」を大切にすることだと改めた思った。
新しい仕事の正念場(だけでになく、ルーティンワークでも)であったり、土壇場でこそ、その「人」の人間性が表れ、本心、本音が透けて見える。自然を相手に仕事をしている人には、言い訳や言い逃れ、辻褄合わせなど屁のツッパリにもならない。人はこころを持った、いのちのある自然界の生物なのだから、本当なら我慾や場当たり的な対応で済まない。
でも、人間はどうしても自分の思い通りにしたいという、愚かな慾に走るものなのだなあ。まあ、どじょう内閣を見れば、よく分かることなのだけどね。