30年前に出版されたガルブレイスとメンシコフ共著“資本主義.共産主義、そして共存”の本には、次のとおり書かれていた。資本主義と社会主義の違い、核・原発の脅威、戦争、貧富の拡大などに関する二人の対談集である。
【訳者あとがき】
『ガルブレイスは、日本の読者には、すでにお馴染みのアメリカの経済学者で、“ゆたかな社会”、“新しい産業国家”、“経済学と公共目的”、“不確実性の時代”、“経済学の歴史”などの著書は、日本でも広い読者層を獲得してきた。1908年カナダ生まれ。
ハーバード大学教授として戦後経済学の潮流の中で異端的な立場から経済学批判を展開し、現代資本主義をめぐってシャープな問題提起を続けてきた。1972年にはアメリカ経済学会会長、さらにケネディ政権下でインド大使も務めたこともある。
一方、メンシコフは、1927年、ソ連生まれ。ソ連、アメリカ、日本の計量経済学的比較研究を行ない、西欧諸国の長期循環の分析に取り組んできた。著書に“富豪と経営者”、“経済学に未来はないか”などがある。国連の事務局に6年間、ソ連共産党の中央委員会の国際部門に、6年間務めた経歴がある。
現在は、国際共産主義運動誌「世界マルクス主義評論」の編集に携わって、プラハに在住。サブタイトルの「過去の苦い経験をよりよい未来に活かすために」が、本書の内容を一言に要約している。
二人は1987年の夏の10日間を通してじっくりと語り合い、社会主義の過去、現在、未来を展望し、資本主義の過去、現在、未来を論じ、さらに両体制の共存の可能性とその条件を探った。
一方がアメリカのリベラル派、他方がソ連のマルクス主義者ということで、両者の立場は自ずと異なり、ときに議論は平行線をたどることもあるが、それがけっして決裂に終わってはいなくて、むしろ相手の立場に対する深い包容力さへ感じさせるのは、ガルブレイスとメンシコフの両者が、すでに1964年以来、二十数年に及ぶ交友関係にあることのなせるわざかもしれない。
「重要かつ厳粛な問題を取り扱うにあたって、徹底的にやりあうことはしなかった。ほどほどの距離をおき、時には議論を楽しむということは、知性と深奥からの要請と矛盾するものではない」と序文にも書いているように、この本は、両体制が抱える深刻な問題を論じながら、同時に、対談の楽しみを十分味わせてくれる「作品としての討論」になっているのである。
ソ連経済の抱えている最大の問題の一つが、硬直化した官僚制の弊害であり、生産と消費を含むあらゆる領域で、コミュニケーションが滞っていることが語られ、それの解決のためには、市場メカニズムの導入を含めた分権化が必要であって、そのことは単に経済だけにとどまらず、社会全体の民主主義の質にかかわるというのである。
一方、アメリカの抱える問題の一つが、巨大企業の持つ組織上の硬直性であり、ここでも、官僚制の弊害が現われて、社会的な変化への対応が立ち遅れがちなことが指摘される。
さらに重要なのは、アメリカにおける都市の荒廃である。都市環境が悪化して、貧困が特定の人たちにおおいかぶさり、しかも、ゆたかな社会では貧困が少数者に集中するために、彼らの主張は、多数者の前で影が薄れてしまう。
レーガノミックスの政策運営とは異なって、市場の放任ではなく、公的な介入が必要な分野が、いぜんとして広範に存在するというのである。
そして、両体制が共通に抱えている最も深刻な問題が、軍事化をめぐるそれであり、ソ連では、民需への対応の必要から軍事化を転換せざるをえない状況にあるにもかかわらず、官僚機構の既得権益がそれを妨げている。
一方、アメリカでは、産軍複合体が経済の中にしっかりと根を張っているために、これまた転換がむずかしくなっている。このように、両体制ともデタントへの傾向を内包しているものの「アメリカのタカ派が、ソ連のタカ派を助けている」というのが、両者の認識なのである。
その意味で、戦後の日本の非軍事化が経済成長に成果をあげたことが評価され、同時に、ペレストライカへの希望的見通し、レーガノミックスへの厳しい評価が表明されている。そして将来は、資本主義と社会主義のより成熟した結合形態の体制が形成されるとする、一種の収斂化論を語っている。
しかし、そこいたるまでに、両体制が共存できるための最も基本的な条件は、核を含む軍事的脅威を取り除くことであるという結論を引き出して討論を結んでいるのが、印象的である。』
この本を読んで、次のように思った。
世界には、アメリカに象徴される資本主義やロシアや中国に象徴される共産主義があるが、100年も経つとお互いが良いところを取り入れるらしいことが書かれていた。現に、資本主義国では福祉に、共産主義国では市場経済に力を注いでいる。
現在、新型ウイルスと人類の戦争の最中にあり、インバウンドなどの観光収入を始め、生産活動、個人生活等々、あらゆる面で影響を生じており、
一刻も早く収束することを願うばかりである。
既に、GDPのマイナス予想からニューヨークダウや日経ダウが大きく値を下げ、世界不況が懸念されている。このような状況が1カ月も続けば、世界、日本に様々な影響がでるのは必至で、全ての価値観が変わるかもしれない。そして、環境を破壊してきたのは、この地球上で「人間」だけであり、自然を含めた「共生」の再認識に気づいてほしいものである。
これからの大切なことは、SDGs(エス・ディ・ジーズ)、すなわち、人類の持続可能性に向けた17の開発目標に取りくむことである。
「十勝の活性化を考える会」会員
注) SDGs(エスディーズ)とは
持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定された後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。 SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。
(出典:外務省ホームぺージより)