VOL2 わ・た・し流

おとぼけな私ですが 好きな本のことや 日常のなにげない事等 また 日々感じたことも書いていきます。

桃花徒然 その5

2022-01-02 21:06:21 | 永遠の桃花

正月も 結局桃花三昧 夜華三昧

原作から 阿離の家出をチョイスしました。

 

いったい夜華が生還してからどのくらい経っているのか

わからないし 結婚式が済んだ後なのか?もわからない

んだけど・・・

唐七公子さんって ほんとうにユーモアがあるので

しかも ちょっと・・どころか かなり

ブラック・・・( *´艸`)

 

母上が赤ちゃんを身ごもったので 寝てばかりだし、

父君も 貴方は兄になるのだから と

説教ばかり・・・阿離は孤独です。

成玉も 三叔父にそそのかされて 下界の方壺仙山に

説法に出かけて留守。

傷心の阿離は 家出をしよう・・と決意しました・・・

 

着替えに服を二着と お腹がすいた時の為に

蟠桃園で摘んだ桃を三つ 風呂敷に包み

背中にしょって・・・しかし 南天門まで来た時に

もういつ帰るかわからない・・・最後に母上を一目でも

見たい と 引き返す・・・

 

もじもじしながら母上の寝殿前まで行ったが、

見張りの仙峨が数人外にいる。

家出がばれてはならないと 窓の方へこっそり回った。

聞き耳をたてると 父君と母上らしき会話が耳に入った。

 

「ねえねえ、先ほど、ちっこいのが また動いたよ。

少し触ってみる?」父君はうん と言って

「まだ七か月なのだから、本当ならまだ ちゃんとした

形になっていないはずなのに・・こんなに世話が焼ける

ようでは・・・阿離の時もこんなだった?」

(自分の名前が出たので 阿離はさらに聞き耳を立てる)

「団子はとても良い子だったのよ。この子とは違うわ。

団子は三年目に入ってようやく動き始めたはずよ。

最初の二年間は 卵がお腹に入っているみたいで

すごく楽だったわ・・・

そういえば、この数日 団子の姿が見えないね・・・

話したい事があるのに・・・彼が聞いたらきっと

喜ぶと思うの」

 

団子は思わず窓から部屋に入ろうとしたほどだったが

そんな自分をかろうじてとどめた。

 

夜華が不思議そうに言う。「良い事?」

 

「良い事!これ以上ないほどにすっごく良いことよ!

団子には 阿離という幼児名しかない。今は小さいから

いいけど、彼が大きくなった時の為に この数日

いろんな書籍を読んで、やっと 成人名を決めたわ」

 

それを聞いた団子は感激のあまり 自分の居場所を

暴露しそうになったが、辛うじてそれを押しとどめた。

 

「李賀という人が すごく気概のある詩を詠んでいたの。

詩の一節の中で  一番精彩を放っているのが黒という字

だと思うの。人間たちは名前の後ろに子をつけることに

より  尊重の意を表わすのだけど  私はその習慣も悪く

ないと思うの」

「だから?」

「だから、私は団子の名前を黒子にする事にした」

 

・・・黒子は  どさっと音を立てて地面に落ちた。

 

父君が、低い声で呟く  「この名前は・・・・」

 

母上は心配そうに「二日も考えたの。貴方は

あんまり  良い名前じゃないって思うの?」

 

黒子は心の中で叫んだ。「良くないって言って!

早く良くないって言ってよ!そうじゃないと

本当に家出しちゃうからね!僕、本当に本当に

家出しちゃうからね!」

 

父君は低い声で何か呟いてから

「将来、阿離が天君になったら 尊号が

黒子君になる・・?」

母上も低い声で呟く 「黒子君・・・」

 

・・・父君は真面目な声で言った・・・

「なかなか良いね この名前」

 

黒子は地面から起き上がれなかった・・・

 

翌日 九重天は大騒ぎ 小天孫がいなくなった!

どうやら家出したらしい!

 

家出した黒子は狐狸洞にいた。

猫じゃらしをくわえた白真が言う

「本当の事を言いなさい。どうして突然青丘に

逃げて来たの?両親に虐待でもされたのか?」

 

黒子は目に涙を溜めて辛そうに言った・・・

「母上が 私に 黒子という名前を付けたから、

ううう・・・😭」