少しづつ 白浅が良くなってきていると
四哥たちが思うようになって 監視するような態度は
無くなっていった。
九重天で新しい太子を立てたという話しは
聞こえて来なかったが、素錦は永遠に仙籍をはく奪され、
輪廻の輪に入れられて、百世の劫を受ける罰を課せられた
と聞いた。東皇鐘を見張り 異常があったら知らせる
というのが任務だったにもかかわらず、その任務を
全うしなかったが為に 夜華が死んでしまった遠因を
作ったというのがその理由だった。
天君は 孫を失った心痛が激しく、その怒りも
凄まじかった。
白浅は それを聞いて いささか罰の度が過ぎているか
と思ったが、ただの情報として聞くだけにした。
立場を変えて 生活するこの道を、白浅は楽しく生きた。
その人生の中で夜華は生きていると信じていた。
四哥は 頻繁に白浅を人間界に連れ出し、
行く先々で説教くさい事を言うので 白浅は
そのうちに 一人で人間界へ行くようになった。
・・・・
説教その一・・山に登って
「この 大きくそびえ立つ山を見てごらん。山頂にたって
見ると、世間のすべての事が些細なことに感じられ、
気持ちが 急にスッキリしておおらかにならないか?
情愛に落ち込んでいる事が 空に浮かぶ雲のよう、
腕を一振りさえすれば散ってしまう存在に
感じられないか?」
説教その二・・滝を見て
「見てごらん、この滝の壮大な事。昼夜を問わず
急転直下、一気に川に流れこむ。一切振り向く事はない
この滝を見ていると 人生も また同じで
決して振り向く事ができない。前を向いていかないと
いけないのだ、と 思わないか?」
説教その三・・町の市場へ行くと
「蟻のような人間のことを見てごらん。たかが数十年の
人生にもかかわらず司命(星君)によって 様々な
運命に囚われなければならない。多くの農民は貧しく
一生を終えるし、勉学に励んだ者は抱負を実現できず、
奥で大事に育てあげられた多くの女性は、
どうしようもない夫に嫁がされる。
それでもなお、彼らは嬉々として生きている。
これらの人間の姿を見ていると、彼らと比べて
自分のほうが 遥かによい境遇なのだと思わないか?」
・・・自分にも思い当たる節が・・・( ;∀;)
ただ 寄り添うだけでいいのかもしれないし
ひたすら見守るだけでいいのかもしれないし・・( *´艸`)