枕上書 番外編より(自己流の要約)
白い花の強い香りで目を覚ましたゴンゴンは
くしゃみを一つした。立ち上がって辺りを見回す。
そうして 自分のいる場所が碧海蒼霊である事に
気づいた。
十年前、父と母はビョウラクと戦って重傷を負った。
母の九九は 父の赤金血と折顔の丹薬のおかげで数か月
後には支障がなくなった。仙力の回復までには至らない
が、九九の場合はさほど問題は無い。
しかし、帝君ともなると 仙力の回復は天族の問題と
なる。数百年ほど昏睡してから修行を積めばよいのだが
帝君にしてみれば 目覚めたばかりの若妻に寂しい
思いをさせたくないのと、ゴンゴンの成長する姿を
逐一見ていたい・・・という気持ちがあった。
その為、毎年、3~6か月ほど集中して、奥の迎書閣
に籠もるよう計らう事で、修行に
千年ほどかける事にしたのだった。
父が籠もっている間は 母と二人、青丘に滞在する
事になっていた。
今日はまさにその日で、迎書閣まで母君と 父を送って
行ったのだが、別れがたい二人の様子を見たゴンゴン
は そっと 離れて 各宮にいる友人たちに別れを告げに
回ろうと思い立ち、そこを離れた。
そして、連宋叔父の元極宮まで来た時、叔父上にも
挨拶を、と思い立ち、宮に入った途端 ゴンゴンの
目の前に光の輪が広がった
と思う間もなく 意識を失ってしまった・・・
それが つい先ほどの出来事だった・・・
宮殿について見ると、父が張り巡らした
禁制バリアの前で、多くの神仙が集まっている。
しかも 何人かは バリアを破ろうとしている。
ゴンゴンは驚いた。この世に 壁海蒼霊でこのような
行いをする神仙がいるとは!
そっと目立たないようにしゃがんで 様子を見る。
すると、小神仙の話声が聞こえてきた。
「帝君に このような不敬を働くなんて、これを知って
帝君がお出ましになったら、私たちはどんな目に
合うかもわからないでしょうね」
「神族はもはや危機に瀕しているのだから、
例え私らが この不敬で死を賜ったとしても
再び帝君にお出まし頂けるなら まさに その死は
価値あるものではないか。長老たちは 折顔上神
にこの件を頼んだという。私たちはただ敬意をもって
お待ちすれば良い。折顔上神ならもしかして
お会いできるかもしれない。だからあのような
過激な方法をとるのはいかがなものか・・・」
二人の話を聞いて、ゴンゴンは不思議に思った。
父君は閉閑するはず・・・何故 ここにいるの?
ゴンゴンはバリアを破ろうとしている神仙たちの
近くまで行くと 再び安全な場所を探して
しゃがみ込んだ。
この神仙たちは 父君に急用があるようだ。
彼らがいくら攻撃しても バリアが破れる事は
ないけど、自分には この神仙たちを止める力は
ないのは分かっていた。
そこで 神仙たちが疲れ切って休憩する所を
見計らい、彼らに向かって 礼儀正しく声を掛けた。
「お尋ねしますが、攻撃に疲れてお休みするところ
ですか?うん すみませんが 少し道を開けて
くれませんか?」言いながら、ゴンゴンは神仙たち
の間を縫って なんなくバリアを通過し 首に掛けた
門の鍵を取り出すと 中に入った。
驚愕し、呆然と見つめる神仙たちを見ると
「道を開けてくれて ありがとう」と上品に
挨拶し門を閉じた。