枕上書 番外編では 戦場にありながら 鳳九の夢だった
結婚式が行われる運びとなりました。
七宝をあしらった豪華な絹の衣装に身を包み、
甲冑をつけた数百万の兵士たちが 各々武器を
携えて歓声を上げる中 二人は進む。
長い 雲の階段は 広い一枚の碧玉でできた高台に
続いている。 碧玉の中からは 戦場全体を
覆わんばかりの枝葉を茂らせた 巨大な天樹がそびえ
立っている。葉は 羽毛のよう そして珊瑚のような
赤い花びら・・・
鳳九は 歓喜の声を上げた。
「これは・・・三十三天にあると聞く天樹之王
昼度樹じゃないの?」
帝「26万年後の世では 神族の結婚にあたって
女媧のところで婚儀名簿に夫婦の名前を記載する
事が必要と 貴女から聞いたが、今の時代は
そのような規定は無い」「八荒の中で 霊気を持つ
物のうち、唯一 昼度樹だけが天地に代わって
神王の祭祀を受ける事が出来る。その為 三年前に
墨淵が八荒を統一して礼制を制定した時、神王の
婚礼には 昼度樹に詣でる必要があると規定した。
祭祀が終わって後、昼度樹から神冠が降りて来る。
その冠が 天地が認めた神后の 権力の証となるのだ」
鳳九「知らなかったわ。でもその後の天君の婚礼
においても昼度樹への参拝は聞いた事がないわ」
彼女の困惑を見て 少し微笑みながら頭をなで
帝「 もしかしたら 貴女のいう天君たちは 神王では
なかったからかもしれない」
「行こう。昼度樹が 貴女の為に どんな神冠を用意
したかを 見てみよう」
二人が昼度樹に向かうと 兵士たちは波がうねるよう
に順に跪いて行き 「帝座!帝后!」という咆哮が
北荒の地を震わせた。
そして 赤い太陽が昇り 九重天からは鐘の音が鳴り
響いた。 天からは 何種類もの色美しい花々が
八荒の大地に雨のごとく降り注いだ。
帝君は 鳳九の手を引いて玉台に登り 天樹之王の
前に進み出ると、手に現れた昼度樹の杖を捧げ、
頭より高く掲げた。兵士たちの雄叫びが響きわたる。
この荘厳な儀式に、今まで経験したことのないほどの
感動を覚えて 鳳九の胸は高鳴った。
高鳴りを抑えて 帝君が神々の前、天樹之王に誓う
一言一句を胸に刻む。
「青丘の女、白家の鳳九。聡明にして明るく、
天から授かった雅あり。深く 我が心を捉え・・・」
と、その時 突然 高台の脇 穏やかに流れていた
大河に、数十メートルの波が沸き立った。
天を突く波が去ると 地の底から 轟音が響きわたった。
河を隔てた北荒の地に築かれた 堅固な結界が、地を
切り裂くような音をたてて開くや、兵の大軍が現れた。
帝君の結婚式で 神族の陣営が油断したと読んだ
B上神が 総攻撃を仕掛けてきた!鳳九はすぐに
事態を察した。彼女は帝君の手を強く握りしめた。
「帝君!」