とやざき農園日誌

浅間山麓(長野県小諸市)で自然農法による農業を行っています
肥料や農薬を施さず自然の養分循環の中で野菜を育てています

冬の葉野菜(巻物)枯れ葉のPH

2019年01月22日 | 日記
昨日は、夏野菜との比較を行う目的で、冬の根菜(カブ)について抽出液のPHを測定してみました。
本日はそれに続き、冬の葉野菜についても調べてみます。調査対象として白菜とキャベツを選びます。同じ巻物でありながら、白菜はシャキッと瑞々しい質感(繊維質と含水量の多さ)を持ち、キャベツはその対極です。質感の違いが抽出液のPHにも表れるでしょうか。

<サンプルA:白菜の枯れ葉の抽出液>
水道水PH7.03に白菜枯れ葉を投入
(5分後)7.18(10分後)7.32(20分後)7.46
弁天清水PH7.41に白菜枯れ葉を投入
(5分後)7.43(10分後)7.46(20分後)7.58
※弱アルカリ性。ナスやトマトの枯れ枝(PH8以上のアルカリ性)ほどにはPHが高くない


ここで一つ気になった点があり、キャベツの測定に移る前に、生きた白菜の葉を調べてみることにしました。懸念事項は植物内の有機酸の影響です。
<サンプルB:生きた白菜の葉の抽出液>
水道水PH6.98に生きた白菜の葉を投入
(5分後)6.98(10分後)7.00(20分後)7.00
※ほぼ中性

案の定、白菜の葉に含まれると考えられるアルカリが何らかの酸によって隠蔽されていました。柏木水源を調査した際もそうでしたが、活動中の植物は有機酸を作り出していると考えられるので、アルカリ含有量を見極めるには、枯れ切った葉を使用しなければならないようです。

その点に留意しつつキャベツを調べます。
<サンプルC:キャベツの枯れ葉の抽出液>
水道水PH6.99にキャベツ枯れ葉を投入
(5分後)7.01(10分後)7.01(20分後)7.01
※ほぼ中性


白菜とキャベツではかなり大きなPH差がありました。ひょっとすると、キャベツでは茎にアルカリが集積しているのかもしれません。そう考えて、畑で枯れた茎を探してみましたが、どの株を見ても玉収穫後の茎がまだ生きているようです。仕方ないので、できるだけ枯れている茎を採取し調べてみます。
<サンプルD:キャベツの茎(半枯れ)の抽出液>
水道水PH6.98にキャベツの茎(半枯れ)を投入
(5分後)7.04(10分後)7.06(20分後)7.08
※微弱なアルカリ性


有機酸の影響があるかどうか微妙なところですが、葉よりも多くのアルカリが含有されていることは間違いありません。

白菜とキャベツの調査結果を踏まえると、冬野菜においても、繊維質が多く硬い部位にアルカリが集積されていると言えそうです。近年の研究で、植物の繊維質がケイ酸によって補強されていることが明らかになってきていますが、おそらくアルカリがケイ酸の運搬に関与しているのでしょう。
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枯れたカブのPH

2019年01月21日 | 日記
昨日は、ナスおよびトマトの枯れ枝の抽出液をPH測定し、どちらも高いアルカリ性であることを確認しました。それとの比較で、本日は冬野菜のミネラル集積を調べてみたいと思います。

対象は枯れたカブです。亀裂があったため貯蔵用から除外して畝に放っておいたのですが、繰り返し凍結したためにほぼ枯れ死しています。中心の葉に若干青味がありますが、外葉および根の部分は完全に枯れているので、もしアルカリなどのミネラルを集積していれば、抽出されてPHに現れてくると思います。
<サンプルA:枯れたカブ(全体)の抽出液>
畑湧水PH7.50に枯れたカブを細かく刻んだものを投入して抽出
(10分後)PH7.40(20分後)PH7.33
※下がり幅から推定して、弱酸性


弱酸性という結果は、11月13日に測定した大根の抽出液と同じです。非常に興味深い共通性と言えます。追って、白菜やネギなどその他冬野菜についても調べてみたいと思います。

さて、ある肥料会社の園芸指南によれば、3大栄養素(窒素、リン酸、カリウム)の内、カリウムは「根肥え」に分類されます。カリウムは根の発育を促進し、根菜類では特にカリウムを十分に施すことで生育が良くなる傾向が確認されているそうです。その一方で、別の園芸指南では、リン酸は、開花や結実を促進し、また根菜類の肥大にも有効である、と言った旨の記述があります。

根を育てるのはカリウムなのか?はたまた、リン酸なのか?
あれこれ頭を巡らしていましたが、枯れカブおよび大根の抽出液PHが弱酸性である、という結果を得て、答えがだいぶ見えてきました。

先ず、弱酸性の意味するところは、カブや大根が夏野菜のようにアルカリを吸い上げていないということです。つまり、カリウムなどのアルカリが吸収されずに土壌に残存していることになります。これは非常に重要なポイントです。土壌がアルカリ性に近づくと、地下水によって運ばれてくるケイ酸が定着し、土壌が砂質から粘土質に変化します。

粘土鉱物学に基づくと、土壌中の粘土鉱物は、土壌PHに応じて次のように変化すると考えられます。
PH5以下:粘土鉱物が存在せず、ギブサイト(酸化アルミニウム)や石英(高次ケイ酸塩鉱物)などの砂質成分のみが存在
PH5~6:アロフェン型粘土鉱物(ケイ酸よりもアルミニウムの含有比率が高い。0.5:1程度の比率)が存在。弱い粘土性。
PH6~7:カオリナイト型粘土鉱物(1:1型粘土鉱物。ケイ酸の含有率がアルミニウムと同等)が存在。中程度の粘土性。
PH7以上:スメクタイト型粘土鉱物(2:1型粘土鉱物。ケイ酸の含有比率がアルミニウムの倍)が存在。強い粘土性。
土壌PHが高まる、つまり、土壌中でカリウムなどのアルカリ成分が多くなるほど、ケイ酸定着率が高まり、高い粘性の粘土鉱物が形成されるという仕組みです。

野菜の「リン酸吸収」という観点でとらえた時、土壌中のケイ酸の働きは極めて重要です。ケイ酸は化学結合によってアルミニウムを包み込んで隠蔽し、むき出しのアルミニウムがリン酸を捕獲してしまう問題、いわゆる「リン酸吸収阻害」を防ぎます。

以上のように、粘土鉱物の特性を踏まえると、カブや大根などの根菜類を育てる場合は、
(1)カリウムを施して土壌PHを高め、ケイ酸定着による粘土化を促進。
(2)アルミニウムによる「リン酸吸収阻害」を抑制した上で、リン酸を施し根菜類を肥大させる。
このような2段構えで考えるのが、理論的にも無理がないと思われます。

自然農法で言えば、(1)で必要なカリウムとケイ酸は夏野菜などの茎や枝に多量に含まれています。また(2)で必要なリン酸は、種子や発芽したばかりの幼苗に多く存在するはずです。基本的には、雑草を刈り取って全量を畑に敷いていくことで賄うことができます。
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ナス栽培後 土壌PH調査

2019年01月20日 | 日記
昨日、元ブタクサ林に立てた新規畝を調べましたが、それを終えてふと、夏野菜栽培後はどういう状態なんだろうか?と疑問がわいてきました。そこで本日はナス栽培後の畝を調べてみます。枯れたナスの株元および畝間には、厳しい寒さでだいぶ枯れ込んでいますが、冬草(主にハコベ)が生きています。


先ず、ナスの株元近くの畝表土を採取します。冬草の生きた根が回っていますので、有機酸の影響が多少あるかもしれません。土質はやや粘りがあり、ボロボロに崩れず塊になっています。
<サンプルA:ナス畝表土>
畑湧水PH7.47に土を投入→PH7.36
※元ブタクサ林の新規畝の畝間表土に近い数値変化。微弱なアルカリ性と推定。


次に、畝間を調べます。表面を覆う冬草をはぎ、


更に、その下の敷き草もはいで畝間表土を採取します。土質は畝表土と似たような感じです。
<サンプルB:ナス畝間表土>
畑湧水PH7.50に土を投入→PH7.39
※畝表土と大差無い値。微弱なアルカリ性


続いて、昨日同様に深さ10㎝付近の土を掘り出してみます。
<サンプルC:ナス畝間深さ10㎝付近の土>
畑湧水PH7.50に土を投入→PH7.40
※畝間表土と同等の値。微弱なアルカリ性


昨日同様に深さ10㎝付近にミネラルの集積があると予想していましたが、掘りながら感じた土質からしても、そのような集積は無いようです。元ブタクサ林の新規畝に比べると畝間の敷き草が少ないので、枯草からの放出が少なかったのかもしれません。

集積層は見られませんでしたが、全体的な土壌PHの傾向は元ブタクサ林によく似た結果です。こうなると、ブタクサと同様に、ナスも大量のミネラルを吸い上げている可能性があります。ナスの枯れ枝を集めて抽出してみます。
<サンプルD:ナス枯れ枝の抽出液>
畑湧水PH7.49にナス枯れ枝を投入して抽出
(10分後)PH7.71(20分後)PH8.14
※ブタクサを上回る高いアルカリ性


ナスにこれほどの蓄積があるとは意外でした。ミネラルを大量に吸い上げるのは大型野草だけかと思っていましたが、そうではないようです。夏野菜全般に同じ傾向があると考えられるので、ついでに、トマトの枯れ枝も調べてみます。
<サンプルE:トマト枯れ枝の抽出液>
畑湧水PH7.50にトマト枯れ枝を投入して抽出
(10分後)PH8.08(20分後)PH8.41
※ナスを更に上回る高いアルカリ性

驚きの結果。野菜のミネラル蓄積についてもっと調べてみる必要がありそうです。
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黒ボク土 新規開拓地の現況

2019年01月19日 | 日記
タマネギ畝横のブタクサ林(土壌は黒ボク土)を刈り倒し新たな畝を立ててから2ヶ月が経ちました。冬期なので、畝間に敷いた枯草(ブタクサなどの大型野草)の分解はまだ全然始まっていない様子ですが、土がよく乾いたことで地下水蒸発によるミネラル濃縮効果が現れているかもしれません。土壌PHを調べてみたいと思います。先ずは畝の表土から測定します。


<サンプルA:新規畝の表土>
畑湧水PH7.48に土投入→PH7.31
水道水PH6.94に土投入→PH6.98
※微弱なアルカリ性と推定


この場所ではありませんが、12月23日に調べたブタクサ林の表土はPH6.0程度でした。それに比べるとかなりPHが上がっていますが、湧水に比べれば低い値なのでまだまだ十分とは言えません。春になり雨が降り出すと溶脱によるミネラル減少が始まるので、冬の間にできるだけミネラルを蓄積しておきたいところです。

さて、元ブタクサ林となれば、ブタクサによるミネラル吸い上げがどの程度のものか気になります。ブタクサに吸収されたミネラルを湧水に抽出してみます。
<サンプルB:ブタクサ枯れ枝抽出液>
畑湧水PH7.47にブタクサ枯れ枝を投入して抽出
10分後:PH7.83
20分後:PH8.04
※高いアルカリ性。多量の集積を確認


ブタクサにこれほど吸収されていては、土が酸性化するのも当然です。野菜を作るには吸い上げられたミネラルを土に戻してやる必要があります。分解が進んでいない上に降水も少ないので、枯草からのミネラル放出はわずかと思われますが、一応、敷き草の下を調べてみます。


畝間に敷いた草をどけて表土を採取します。
<サンプルC:新規畝の畝間表土>
畑湧水PH7.51に土投入→PH7.36
※畝表土と同程度の微弱なアルカリ性


やはりミネラル放出はまだのようです。しかし、放出されたミネラルが沈降している可能性もあるので、土を掘って深部を調べてみます。


畝間を掘り、深さ10㎝付近の土を採取。パサパサの表土と異なり粘り気があります。
<サンプルD:新規畝の畝間深さ10㎝の土>
畑湧水PH7.51に土投入→PH7.47
※畝間表土より高いPHの弱アルカリ性。しかし、湧水よりまだ低い


意外に多くのミネラルが沈み込んでいました。では、もっと深い所はどうでしょうか。
<サンプルE:新規畝の畝間深さ20㎝の土>
畑湧水PH7.50に土投入→PH7.39
※畝間表土と同程度の微弱なアルカリ性

沈降したミネラルはごく浅い所に集積するようです。この結果は、秋に大豆後の畝などで観察されたのと同じ傾向です。
新規畝は今度の春作でジャガイモ栽培に使うつもりですが、ミネラルが深さ10㎝程度に集積しているとなれば、うまく土寄せしてやることで一気に土壌が改善する可能性が高いと言えます。なかなか面白くなって来ました。
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有機酸による岩石からのミネラル成分溶出

2019年01月18日 | 日記
昨日は、畑の土壌PHを測定して、作物の生育に必要なミネラル成分が地下水や枯草から供給されていることを確認しましたが、そもそもミネラル成分は如何にして地下水に溶け込むのでしょうか。

年末、畑脇を流れる農業用水の源である柏木水源地を調査して、水源に林立する杉が用水のPHに深く関与していると考えられる測定値を得ました。その際に立てた仮説は、水源の水は、杉の根から放出される有機酸が山の岩石からミネラル成分を溶かし出すため弱酸性。下流の水は、杉の有機酸が用水路に生息する微生物に分解されるためミネラル成分だけが残ってアルカリ性になる、というものでした。

植物から放出される有機酸が岩石を溶解させるという話は、書物を読んで得た知識に過ぎないため、実験でそれを確かめてみたいと思います。

実験材料として、岩石は、畑から頻繁に出土する花崗岩を用います。花崗岩は長石、石英、雲母から成り、大部分が乳白色の長石、その中に散りばめられるように無色透明の石英と、黒色の雲母の粒があります。石英は純度の高い強固な結晶性を持つケイ酸塩鉱物であり酸にほとんど溶けません。一方、長石と雲母は不純物(アルカリ金属など)が多く結晶性がやや弱いケイ酸塩鉱物であり、不純物部分が酸によく溶けるため比較的容易に構造が崩れてバラバラになり、岩石内のミネラル成分が次々と溶け出します。


有機酸については、紫蘇ジュースを仕込んだりする時に使うクエン酸が自宅にあったので、有機酸の代表として使ってみます。クエン酸は英語ではCitric Acid。柑橘類Citrusに含まれる酸Acidです。樹木に多い有機酸のようですが、野菜の根からもクエン酸の放出があるそうです。


実験は、先ず、花崗岩をハンマーで叩いて粉々に砕き、表面積を増やして反応性を高めます。次に、弱アルカリ性の弁天清水にクエン酸を少量混ぜて酸性の水溶液を作ります(水道水は、浄水処理で使った酸が残留している可能性が高いので使いません)。そして、花崗岩粉末を酸性水溶液に投入してPH変化を計測する、という手順です。

<実験A:森林土の土壌酸性度を想定したPH4.52のクエン酸水に花崗岩粉末を投入>
(5分後)4.63(10分後)4.63(20分後)4.65(30分後)4.66(60分後)4.68(120分後)4.72

<実験B:黒ボク土の土壌酸性度を想定したPH5.48のクエン酸水に花崗岩粉末を投入>
(5分後)5.57(10分後)5.59(20分後)5.62(30分後)5.64(60分後)5.67(120分後)5.72

<実験C:黒土の土壌酸性度を想定したPH6.49のクエン酸水に花崗岩粉末を投入>
(5分後)6.54(10分後)6.56(20分後)6.57(30分後)6.58(60分後)6.61(120分後)6.66
※A、Bに比べて、上昇速度がやや遅い結果

クエン酸濃度がかなり薄いCでも、花崗岩から十分にアルカリ成分を溶かし出せることが分かりました。野菜の生育環境は主にCの黒土に該当します。野菜にも岩石から溶かし出す力があると言えそうです。
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