図 1 (防潮堤上半身)
図 2 鋼管杭図
防潮堤ユニットの、いわば下半身に視線を移して、支持基盤(岩盤)に鋼管杭が打ち込まれている状態の一部を立方体状に切り取った図である。鍬ヶ崎沿岸の急峻、複雑な岩盤の状態を表現したいと思って作図した。イメージとしても岩盤形状はまだまだおとなしいと思われるが、鋼管杭は精密に四方の間隔を維持しながらこのような鍬ヶ崎沿岸の岩盤に打ち込まれることになる。赤く引いた線は後述する岩手県の想定するボーリング地質調査の縦断調査線の中心線のイメージ。横断層斜面のために鋼管杭の長さが赤線から上下にとんでもなくずれている事は分かると思う。
1、工事の中断。岩手県の調査不備、工事の迷い
図2のイメージは具体的にはどこにも対応していないが、情報開示請求して得た岩手県の開示図面(図3~図5、2015.5.29)を下記のように見ていく。プレキャスト工法のぼたんの掛け違いが始まっている事が分かるはずである。
図 3 鍬ヶ崎地区防潮堤「その1工区」設計縦断図
1) 図3は縮尺の関係でいびつな形をしているが、岩手県が情報開示している鍬ヶ崎地区防潮堤「その1工区」計画の縦断図面。上部の面は防潮壁(かべ)、下部の縦線は基礎鋼管杭、横に地層線が複数本引かれていいる。原図の縮尺は縦:1/200、横:1/500(横を2.5倍して見る。以下同)。鋼管杭はこの「その1工区」(120m/1,600m)で80本埋設予定。
この当初計画図(製作等日付不明、以下同)によると鋼管抗の長さは一律16メートルで予定されていた。図から読み取れる地層の最下層の記号は [M-CL](宮古層群・CL級)、おそらく支持地盤=岩盤の記号と思われる。
図 4 同上
2) 後日、2015.2.13、「その1工区」の 杭打ち工事現場で作業員に聞いたところでは鋼管杭の長さは17メートル、19メートル、19.5メートルという事であった。そのとき80本の数も初めて聴いたものである。鋼管杭の長さは当初計画から変更されていた事になる。図4はその工事設計図であろう。鋼管杭の長さはすでに16メートルではなく、長さには他に17.5メートル、18.0メートル、18.5メートルが図示されている。また図3の最下層地質線から更に下に2層の地質境界線が引かれている。地層記号は[M-CM]。詳細は不明
図 5 同上(平面図)
3) この5月に宮古市民に配布した岩手県のPRちらしには「一部区間(「その1工区」)において想定より深い支持基盤が確認された事から、追加のボーリング調査を行い、適切な長さの鋼管杭を製作中です」とある。岩手県は泥棒を捕まえてから縄を綯(な)い始めた。図5の凡例に「・赤丸:鋼杭打設箇所」とある。おそらく直近の事であろうが、14本/80本の杭打ちが残っている。既打ち、未打ちの鋼管杭の処置はどうするのであろうか? 前後あべこべ、泥縄工事の事態は、もはや工事そのものの中止か、振り出しに戻るしかないのでは。
図 6 鍬ヶ崎防潮堤用地地質縦断図(「その1工区」範囲)
図 6−2 同上 ※原図の縮尺は縦:1/200、横:1/5,000
4) 昨年 2014.11.4 岩手・宮古土木センターは鍬ヶ崎防潮堤についての住民説明会を開いて、宮古市長、市幹部も出席した中で、地質調査も完了して順調に工事に入っている、と述べ地質調査図面を公開する旨約束した。公開された図 6の図面は、現在、早々と反古になったが不正な図面はしっかり反古にされるべきである。
図 7 追加ボーリング(平成26年度)
5) 今回のPRちらしで「全区間について」「追加のボーリング調査を行いました」と明言。まさに振り出しに戻っている。追加等ボーリング調査の詳細は速やかに公開するべきである。図 7は「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」調べ(9カ所ポイント把握)。一方、土木センターの開示資料によると 2015.2.23~3.11(年度末ぎりぎり)に12カ所の追加ボーリングを行ったとしているが、同様に、日立浜地区に限られている。短期間に12カ所、日立浜地区に限られているのに「全区間について」「追加のボーリング調査を行いました」と言えるのか? 開示請求しなければ公表しないという事か?
図 7−2
6) 工事が中断している「その1工区」では、では追加ボーリングは行われないのか? 中断の真の原因は何なのか?