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2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。 藤田幸右(ふじたこうすけ) 管理人

県の工事説明会(1)

2016年06月01日 | 鍬ヶ崎の防潮堤を考える会

岩手県は5月25日,防潮堤などの説明会を開催した。1、鍬ヶ崎防潮堤工期延期 2、閉伊川水門工期延期 3、水門・陸閘の遠隔開閉 について。3月宮古市議会で採択された当会陳情により発議され開催されたものである。県・宮古土木センター主催。

 

 

水門・防潮堤説明会 完成延期に批判の声
 (IBC 岩手放送ニュース 2016年05月26日 )

 

 

宮古市鍬ヶ崎地区の防潮堤と、閉伊川水門の整備に関する住民説明会が昨夜行われ、事業費の増加や工期の延長に対し、住民から批判が相次ぎました。県は宮古湾の津波対策として、鍬ヶ崎地区に防潮堤を、閉伊川河口に水門の建設を新たに進めています。昨夜の説明会では県から、事業費が、防潮堤は24億円、水門は105億円増えたことに加えて、工期もそれぞれ1年と3年延びることが報告されました。およそ30人の出席者からは、「津波から街を守る、一番早い方法と聞いていたのに納得できない」と言う声や、事業の中止を求める意見がでました。県は地盤の状況などが想定外だったと陳謝した上で、今後も説明を重ね理解を求めたいとしました。(以上IBCニュース=写真・見出し共)

 

☆ 

 

会場では「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」から質問、疑問、意見として統括的に以下2案が問題提起された。

第1案>問題点レシピ

1、鍬ヶ崎防潮堤ついて
(1)工事遅延に地質、工法を理由に上げているがその説明を。当該地質の詳細、標準横断方式の説明を。

(2)防潮堤は鍬ヶ崎の経済活動を後退させる。とくに基幹産業の水産業の衰退は大きい。
(3)鍬ヶ崎の地場漁業である、磯漁業への打撃は壊滅的。日立浜が閉じられようとしている。
(4)日立浜は海側が広くなっても後ろのスペースがなくなるのではなんにもならない。
(5)同様、製造業、観光業への打撃は取り返しがきかない。
(6)防潮堤本体のアクリル製窓は厚さ30mm。その強度は?耐用年数は?
(7)静水圧設計の防潮堤では津波を防げない。倒壊の危険性をどの程度見ているのか。この項目は下記のように<第2案> として別途説明した。
(8)今までの設計・施工は全部民間業者の主導だ。県はどのような管理をしているのか?
(9)10.4m高の防潮堤では反射波、戻り波、せり上がり波を含めて浸水を防げない。
(10)防潮堤の立地地帯の地殻は複雑である。地層・地形地図はどの程度出来ているのか。
(11)複雑地殻の基礎鋼管杭の支持地盤到達の認証方法はどうしているのか。公開に不熱心。
(12)環境アセスメントは地殻、伏流水のジオ環境を含めてどの程度できているのか。
(13)1000本の膨大な鋼管杭打設による海洋汚染は?
(14)蛸の浜からの浸水をどの程度に考えているのか?蛸の浜浸水は防潮堤と一体。
(15)津波避難方法(津波てんでんこなど)、津波避難道は宮古市任せなのか?振興局の避難計画を示せ。
(16)防潮堤は30年しかもたないという、実際はどうか?
(17)建設後の維持費用は県が負担するというが文書で残すのか?

(18)知事は危険地域への住宅再建を許可するのか?
(19)鍬ヶ崎住民の高台移転の可能性は?また非危険地への住宅の移転費用は?
(20)防潮堤完成後の鍬ヶ崎の産業復興ビジョンを示さなければ判断が出来ない。
(21)以上のように市民との合意がないのに何を根拠に、鍬ヶ崎で防潮堤建設を進めているのか?


2、閉伊川水門について
(1)水門完成が15年度末 → 17年度末 → 20年度末に野方図に延期されている理由?
(2)地質、工法を理由に上げているがその説明を。当該地質の詳細、標準横断方式工法の説明を。
(3)延期の都度当然国費も増額されているその詳細を。会計検査院の見解は?
(4)国、地元市民の理解を得られないのなら水門はやめるべき。
(5)建設物設計図;水門全体の真ん中(航路部)が左右のバランスを欠いて工学的に弱すぎる。
(6)開閉設計;洪水・高潮・津波時。
(7)開閉の仕方;電動、手動、遠隔操作、信頼性。
(8)船舶通行の問題;有事での船舶避難マニアル、船舶停泊の問題,船舶通行の問題。
(9)以上の(5)~(8)ハード、ソフト設計、問題理解のための1/50のシステム機能模型を宮古市、県 庁、復興庁のロビーに設置する事。模型運転がないと複雑すぎて市民の理解を得られない。
(10)航路部をもつ防災水門は岩手県で初、日本、世界でも希有。その前例、検証の提示。
(11)耐用年数は?
(12)水門決壊のネガティブシミュレーションが未公開。
(13)長期間の工事のデメリット;景観、環境、閉伊川の魚・水中生物の生態系、汽水域の水の変化は?
(14)日常的デメリット;景観、環境、閉伊川の魚・水中生物の生態系、汽水域の水の変化は?
(15)宮古湾や宮古沿岸の水質への影響は?一般に環境アセスメントはどうなるのか?
(16)ランニングコストは?負担主体は国か県か市か?
(17)コストの捻出方法は?市民負担があるのになぜ住民合意をとらないのか。
(18)以上の全てで市民との合意がないのに何を根拠に、水門建設を進めているのか?


3、陸閘遠隔操作について
(1)遠隔手動でも人工衛星の遠隔自動でも操作上のヒューマンエラーが心配です。
(2)維持管理費用の市民負担はどのくらい生じるのでしょう?少子化の次代の子ども達の負担は?
(3)官庁同士の説明だけでなく、住民への十分な説明機会を求めます。とくに陸閘の遠隔手動、遠隔自動 操作の説明が一回もないままに計画が進んでいる事に抗議します。遠隔自動開閉への信頼はありません。

※ この当会から提出された40項目の文書については時間の関係で土木センターが1週間以内にホームページで回答するという答弁があり取り下げた。説明会の流れのなかで一部触れたところもあったが1週間後を期待する。

 

 

第2案>津波の衝撃力とは?

<第1案>レシピ 1 の(7)については<第2案>として図面を提出して会場で説明させてもらった。


 
 ※ この静水圧についての当会の提言には会場からは一二の質問があったが主催者は無反応であった、無視。わずかに「そういう事はない」と返すだけであった。(この<第2案>についてはこのブログの次頁につづく)

訂正)<第2案>本文中の「〜足元には防潮壁受ける津波衝撃の30倍の力がかかります。」を、「〜足元には心棒鋼管が直接受ける津波衝撃の30倍の力がかかります。」に訂正します。

 

 

当日の説明会に特徴的な事は ──これは言っておかなくてはならない事であるが、業者の土木工学的技術、業者が直面している困難、について主催者がよく理解してないまま上滑りで説明している事であった。同様に市民の問題意識を汲んで説明しているとはいえなかった事である。

(1)主催者の説明はよくこなれていなくて会場からの質問等と噛み合うものではなかった。

(2)説明会の主旨である工期の遅れの説明については,その原因解明や挽回の工程ではなく次のようなものであり違和感を覚えた出席者が多かったと思う

a、終始、言い訳を説明しているようだった。なぜその事が発生したのか、工期延長の反省、工期延長の影響など、肝心なところがスルーされていた。今更、5年の無駄な工事の言訳を聞かされても…という市民的実感。言訳はこれからの4年間に生かされないだろうという市民的確信。

b、工事の遅れが、無反省な自慢話になっている怪奇現象。言訳が熱を帯び、話が予算の倍増になっていくに従って「難工事で事業費倍に」(毎日新聞)、主催者の説明は自慢話めいてきている。難工事にかかわらず295億円を国から獲得してきた、というように…。閉伊川河口右岸左岸浸水地帯の世帯が2500世帯だとして一世帯当たり1000万円超の国費投入になる、と自慢げに言っているように聞こえた。地方行政の悪しき習い性、中央依存体質…

(3)言訳といえば、川底に想定外の直径1.8mの岩石が出現、液状化も懸念されるなどと言う。さすれば、それで105億円もの国費が増額されたのか?という問題である。そこのところの説明はなく、金額は総額だけを言い、遅延は川底のせいにしてその関連の説明はない。各マスコミもそこは追求せずに伏せている。鍬ヶ崎防潮堤の1年延期も予算の23億円増も、ただ業者に迫られた結果論の説明であって、防潮堤を横切る二つの断層、蛸の浜断層、臼木山日立浜断層の「だ」の字の説明もなかった。

(4)鍬ヶ崎防潮堤は17年度末、閉伊川水門は20年度末を完成としているが、これまでの経過を見てそれは達成されないであろう。
第一、何度延期されても、予算増額されても、その都度の検証が行われず、原因や根拠不問のまま、成り行きのままだからである。初動の見込み違い、初動の過誤が、工期、予算で挽回される感触がない事、今後の計画がそこを上回る内容でない事からも分かる。
第二に、それぞれの水門・陸閘について、開閉の遠隔開閉操作について、当夜の説明会でも、なんら確証的な説明はなく「その点は今後検討」などの回答だけであった。水門、防潮堤に共通なセーフテー
システムがいまだ説明不可能である。何をもって安全か?だけでなく、何ももってその期日までに完成する、かも不可解である。

(5)遠隔操作の問題は超アナログな開閉問題から超デジタルな開閉問題への移行という事が問題であるが、説明会ではその極端から極端への幼稚な説明であった。これでは誰も賛成できない。会場ではNHK放送の電波障害の話が出たが、福島原発の廃炉計画でも電子機器は万が一を考えて使用せず、専らバネと歯車構成の機器を使用するといっている。水門の遠隔操作は最々先端の事であるが実際の計画はどの面からも安全、安心できない幼稚な観念論計画のように思えた。48名の消防士が亡くなったことだけをいい、その検証(原因、状況など)をしていないからだ。

(6)それしか出来ないのであれば同じような説明会を何度も繰り返し、市民から意見を聴取する(広聴)とともに少しずつでも広く市民に事案を浸透(広報)させていく必要がある。

 

 

(2)につづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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