つらねのため息

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東北における北海道電灯

2014-06-11 22:59:00 | エネルギー
『東北地方電気事業史』(1960年、東北電力編集・発行)をパラパラと見ていたのだが「第二章 東北7県下電気事業発達史」の「第3節 秋田県の部」に「北海道電灯―大日本電力株式会社」という項目があるのをふと見つけた。「秋田になぜ『北海道』電灯!?」と疑問をもって読み進めてみたら、なかなか興味深かった(以下、出所は同書143-144頁)。

北海道を事業の発祥地とする北海道電灯は秋田県へ進出、1925(大正14)年12月に秋田電気株式会社の事業を譲り受け、1926年9月に秋田水力電気を合併、12月には秋田木材株式会社の電気事業部門を譲り受け、秋田市に秋田事務所を設置、秋田市を中心とする海岸一帯を事業地とした。
 さらに1928(昭和3)年11月には最上川電気会社、1929年7月には米代川水電会社を合併し山形県に進出。1936年6月には福島県の大事業者、東部電力会社を合併し、福島県に地盤を確保した。
 その後も電力統制の国策も足がかりとしつつ合併を繰り返し、秋田、山形、福島の3県に事業地を拡大したが1941(昭和16)年の配電統制令により設立された東北配電の設立に参加し、同社に東北地方の電気事業設備を出資した。

渋沢栄一記念財団 渋沢栄一 / 渋沢栄一関連会社社名変遷図 / 電気 D 〔商工業:電力〕

『東北地方電気事業史』では時期が不明だが上記のページによると、この間、1934(昭和9)年に「北海道電灯」から「大日本電力」に社名を変更している。

『大日本電力二十年史』 【大日本電力, 1940】 - 実業史研究情報センター・ブログ 「情報の扉の、そのまた向こう」

また、同社の20年史を紹介している上記のページによると同社は「1887年(明治20)静岡創業の富士製紙」の「電気部が1919年(大正8)に分離独立、富士電気とな」ったもの。「30以上の同業会社を併合しつつ、津軽海峡を越えて秋田地方、郡山水戸地方へと進出、それにつれて社名も北海道電灯、大日本電力と変遷」したとある。

『東北地方電気事業史』では東北地方についてしか触れられていないが水戸方面まで進出していたというのは、正直驚く。完全に自由競争のもとにあった戦前の電気事業の一端を垣間見ることができた。

沿革 | 東部ガスについて | 東部ガス

ちなみに、この大日本電力のガス部門が分離独立した旭瓦斯株式会社は「東部ガス」という名で健在。上記のページによると、ガス部門の歴史は1911(明治44)年5月26日秋田市に創立された秋田瓦斯株式会社に遡る。1926(大正15)年5月、秋田瓦斯株式会社は大日本電力株式会社の傘下に入り、1936年5月東部電力株式会社の合併に伴い、郡山、平の両地域を供給区域に加えた。
 1937(昭和12)年5月1日、大日本電力株式会社からガス部門が分離し、旭瓦斯株式会社として独立。その後、1943年7月、茨城瓦斯株式会社を合併して水戸市、土浦市を供給区域に加え、1946年1月、社名を東北瓦斯株式会社と変更、さらに1948年12月、社名を現在の東部瓦斯株式会社に改称した。1982(昭和57)年4月からは守谷町(現守谷市)で供給を開始し、2001年4月1日には秋田市ガス局を譲り受けた。
 現在同社は、秋田県秋田市、福島県郡山市、いわき市、茨城県水戸市、土浦市、かすみがうら市、石岡市、守谷市、つくばみらい市、および常総市等の東北・関東両地方の3県にまたがる11市2町において、都市ガスを供給している。

当たり前と言えば当たり前だが、見事に大日本電力の供給区域と重なっている。

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