つらねのため息

写真や少し長い文章を掲載していく予定。

新潟県議会電気事業県営決議

2014-04-29 00:47:00 | エネルギー
新潟県議会の会議録を見てみたところ、1948年3月の電気事業県営決議の議案を見つけた。

新潟県議会会議録:昭和23年  3月定例会 本会議-03月30日-一般質問-06号

――――――――以下引用――――――――

    電氣事業縣営決議案

 日本再建の基底は電源の豊富なる需給にあることは論をまたぬ処であるが、今回集中排除法案の発動に伴い関係会社の解体が予想されている。
 新潟縣議会は電氣事業の大いなる公共性に鑑み事態に応じ之を縣営として民主的な運営をなすことは單に縣民の福利增進に貢献するのみならず、逼迫せる縣財政安定の一環として強力に推進せられなければならない。よつて新潟縣議会は縣当局が最善の方法を講じ速かに電氣主業の縣営に関し具体的対策を樹立せられんことを希望する。
 右決議する。
  昭和23年3月30日
       新潟縣議会議長 兒 玉 龍 太 郎

――――――――引用終わり――――――――

[電力 首都へ 中編・戦後再編](9)信越独立へ県議会決議

上記、新潟日報の記事によるとこの決議が伏線にひとつとなり、新潟県は3年後の1950年、電力の戦時統制からの再編成が検討される中で新潟県と福島県西部、長野県北部を信越地区として独立させるGHQの10分割案を歓迎した。新潟県議会では2月22日、臨時会が急きょ開かれ、電気事業再編成をめぐり二つの決議案が可決された。それが「電気事業再編に関する決議」と「連合軍最高司令官に対する感謝決議」である。

以下、引用はいずれも下記リンク先より。

新潟県議会会議録:昭和25年  2月臨時会 本会議-02月22日-開会、議案説明、討論、採決、閉会-01号

――――――――以下引用――――――――

    電氣事業再編成に関する決議案

 わが国電氣事業の再編成に関しては、電氣事業再編成審議会の答申になる電氣融通会社の設立を條件とする9分割案、電氣事業再編成審議会長たる松永氏の電力融通会社を伴わない9分割案、及び連合軍総司令部によつて示された10分割案等があるが、わが新潟縣においては、連合軍総司令部の期待する電力融通会社の設立を條件としない10分割案により、北信越地区に独立した会社の設置をみることが、本縣の産業振興延いては日本産業振展のため最も有利なることを確認し、その実現を期する。
右決議する。
 昭和25年2月22日
          新潟縣議会議長  兒 玉 龍太郎

――――――――(中略)――――――――

連合軍最高司令官に対する感謝決議案

    感謝決議案
 このたび電氣事業の再編成に当り、連合軍総司令部がわが政府に示唆せられた10分割案は、地方産業の振興と密接の関係を有する電氣事業の民主的運営を確保し、適正規模による独立採算制の採用によつて電力料金の公平が期し得られるので、発電縣であるわが新潟縣民は貴司令部案の速かなる実現を要望するものであります。
なお、わが縣民はわが縣だけの利己主義によつて当面必要な電力の融通を阻害するものではなく、只見川その他なお多数の有力なる水力電源の開発を促進し、將來適正なる電力の配分と料金の規正を期待し努力せんとするものでありまして、貴司令部当局の10分割案に対しては、縣民一同の眞に感謝に堪えないところであります。ここに謹しんで、240万縣民を代表する新潟縣議会の名において、貴司令部当局に対し、満腔の謝意と敬意を表します。
 1950年2月22日
          新潟縣議会議長  兒 玉 龍太郎
 連合軍最高司令官
  ダグラス、A、マツクアーサー元帥閣下

――――――――引用終わり――――――――

「マツクアーサー元帥閣下」への感謝決議は日付が西暦表記になっているところなどもなかなか興味深いところがあるが、塚野清一の趣旨説明の中の以下の一節は電力のあり方を考える上で、いまでも色々と考えさせられるモノがある。

――――――――以下引用――――――――

 10分割案に対しましては、いろいろ反対の声もあるのでありまするが、新潟縣の現状はどうでございましようか。全国有数の発電縣でありながら、高い料金と少い電力割当量に、今までは泣き寢入りをいたして來ているのであります。われわれ電力小委員会といたしましても、連年農事用電力や工業用電力の割当量の確保と、電力料金の引下げ等に関しまして陳情これ努めながらも、何らわが新潟縣は、発電縣としての恩典に浴することのでき得なかつたのが、実情であるのであります。
 戰前本縣に各種重工業が発達したゆえんのものも、帰するところは安い電力料金で、豊富に電力が使用できたという立地條件が備わつていたらばこそであると思うのであります。それが戰時中のゆがめられたるところの統制によつて、この恩惠はまつたく一掃されたのでありまして、本縣といたしましてはこの運動は一種の復元運動にひとしきものであるのでございます。
 何とぞ、10分割案が本縣の將來を考えまして、産業振興上ぜひこれを支持しなければならない案であるという点を、満場の諸君に御承解願いまして、満場一致御決議あらんことを希望いたす次第であります。

――――――――引用終わり――――――――

結果として10分割案は実現されず、電力再編成は9分割案が実現し、沖縄電力を除く現在の9電力会社が成立した。また、大消費地の電力会社が地方に発電所を持つことになり、新潟にしても、福島にしても、その後も「発電縣としての恩典に浴することのでき得なかつた」ことは歴史が教えてくれるところである。

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