つらねのため息

写真や少し長い文章を掲載していく予定。

大きな政府はいけないのか?

2005-09-10 20:58:49 | 日本のこと
いよいよ明日が投票日であるが、選挙戦の議論を聞いていて一番引っかかるのがこの論点である。

ワンフレーズポリティクスの悪いところが出たというか、どうも様々な言葉が一人歩きしている感がある。
まずそもそも日本は本当に大きな政府なのかという問題がある。確かにこの国の政府は公共事業に莫大な投資をしているけど、一般に大きな政府といった場合考えられるのは一昔前ならば主要産業の国営化、それと年金や福祉などの社会保障分野での支出であろう。そういったところで国が支出している額というのは比較すればそんなに多くないはず。日本は既に小さな政府なのであり改革という言葉がイコール小さな政府を目指すというのであればじつはそんなに改革をするところはないのではないだろうか。もしどうしても改革をするというのであれば公共事業費を削る意外に大きな部分はないはずなのである。

それに大きな政府から小さな政府へと変えることがすなわち改革ではない。確かに国営事業を民営化し歳出を削減し小さな政府を目指すというのは、一つの立場である。しかしそれはひとつの立場(新自由主義)であってそれがすべての国民の利益になるかのようにいうことは誤りであろう。
民営化するということは利益の上がらないところは切り捨てるということであり、それは市場原理の下では当然である(民営化するけど郵便局をなくさないというのはこの意味でおかしい。それは郵便局をなくさないというのが嘘であるか、実際には完全に民営化しないかのどちらかだ)。ハリケーンの被害までいわなくても、自国最大の自動車企業を二束三文で外国企業に売り飛ばした国がその実態をよく表現している。

当然のことながら大きな政府のままでもよいというのも一つの立場であってなんら臆することなくそういってかまわないはずである。それは様々な多様性の中の一つの立場なのであって「改革に賛成か反対か」などという二者択一で切って捨てることはできない。

さらにおかしいのが増税とのつながりである。本来小さな政府を目指す勢力が増税をするかも知れないというなどおかしな話である(理の当然として増税をすれば支出が増えるのだから)。もちろんその裏にはありえないほどの膨大な借金が存在するからこそ、こういうひっくり返った議論になるわけだが。

本来のあるべき対立軸にそえば(改革イコール小さな政府を目指すという前提に立つと)、改革反対‐大きな政府志向‐増税賛成という勢力と改革賛成‐小さな政府志向‐増税反対という主張にならなければいけないはず。

どうも、なかなか研究者が考えてるようには実際の政治は動いてくれないが…。

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2 コメント

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Unknown (СЕКИ)
2005-09-10 23:28:55
講読している某A新聞ですら自民党が単独過半数か?と報じているわけですが、確かにいまの日本の政治状況において国民が有する選択肢が少なすぎますね。だいぶ前に、アメリカで医学か何かの助教授をしている人間がそのA新聞に投書していましたが、欧州にあるような社会民主主義的な政策提言がまったくないと(といってもその医学者のヨーロッパ社民に対する言及は専門家でないので甘すぎた)。この辺りは日本の社民党、共産党の体たらくが如実に反映している気がします。護憲(特に9条)だけではもはやまともに選挙を戦えないのは当然。今日の午後、自宅ポストに社民党が(珍しく:というのも僕の選挙区では社民の候補がいないので)チラシを配布してましたが、それを読む限りあまりにも政策に具体性がない。これでは、ある意味わかりやすすぎる政策を提言する小泉自民には勝ち目がないのは明らか。
いずれにしても、日本では政策アピールにおいて随所に矛盾がみられる上に、せっかく多くの人が政治に関心を持っても肝心の選択肢がほとんどなく、「改革」という何となく気分が良くなるキャッチフレーズを連呼する(そして確かに自民の派閥政治をある程度「ぶっ壊してきた」)"小泉の"自民党に投票したくなるのも分からないでもないところです。
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コメントありがとうございます。 (tsurane)
2005-09-11 00:26:10
個人的には社・共に現状以上のものを期待するのはやはり無理ではないかと思います。現状ではこれらの勢力は民主党の補完勢力としてしか働かないわけですしその意味ではむしろSingle-issueのほうがいいぐらいかもしれません。実際欧州の弱小左派勢力は社民党の左でつかず離れずでやっているわけで(そしてEUなどが争点になると不満票の受け皿になったりする)。その意味で社・共はこのままの道を進むしかないのではないでしょうか(いい加減統一リストくらい作らないと共倒れになりそうな気もしますが)。共産党の「確かな野党」というフレーズは至言だと思います。

現状ではむしろ社民的なオルタナティヴを示しうるのはやはり民主党なのではないでしょうか。今回オルタナティヴをわかりやすくトータルに提示しえていないところに民主党の弱さがあるかと(「日本をあきらめない」では意味不明です)。もっとも、対立軸が入り乱れているし民主党が出しうるものが最終的に社民的なものになるかはわかりませんが(小泉後には自民と民主の再配分軸上の位置が逆転することもありうるかもしれませんし)。

いずれにせよ、やはりこのメディア時代にはトニー・ブレアのような人物がいないと野党には厳しいかもしれません。
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