これが私の生きる道

こむずかしいことやきれいごとは
書いてありません。
読みやすさを心がけて書いています。
読んでみてください!!

その妹

2011年12月19日 20時56分15秒 | 演劇
劇場の世田谷パブリックシアターは最近よく行く劇場で
テレビに出ているけど、実力もありそうな役者さんを
上手い具合に出演させて
お金を払ってでも観たくなるような公演をよくやってくれます。

原題は、武者小路実篤が100年前位に書いた戯曲で
大雑把に言うと、戦争で盲目になってしまった元画家の野村広次が
妹と共に叔父夫婦に厄介になっているが
その叔父の上司から妹を嫁に欲しいという申し出があり
その上司の息子、相川三郎は素行が悪く
嫁には絶対行かせたくない。
でも嫁がせなければ、叔父夫婦から援助を受けられなくなるので
困窮してしまうし、さてどうするか、
といった内容です。

主人公の野村広次を演じたのが市川亀治郎で
市川って付いているので歌舞伎の役者さんかと思われますけど
自分は知らない人でした。
盲目の役で、特に眼帯などはしてないから
会話していても目線を相手に合わすことができない為、
客席の方を見つめて話たりしていて
これは結構大変だろうなぁと思いました。
集中して意識していないと自然に視線が普通に戻ってしまうでしょうね、
セリフや演技もしなきゃいけないのに
これは相当の負担です。

野村の妹役の静子を演じるのが蒼井優で、彼女が一番の注目ポイントです。
しゃべり方が独特で、自分は黒柳徹子を想像しました。
目の見えない兄貴を世話しなければならないので
もちろんとても大変なのですが
野村が昔好きだった女性(今は親友の奥さん)のことを話すときに
嫉妬するような仕種が見えたので
家族としてよりももうちょっと強い愛情があったのではないかと
感じました。

この野村兄妹を金銭面で援助するのが段田安則演じる
雑誌の編集者である西島で、この3人の出番が非常に多くなっています。
はじめは野村兄妹を不憫に思い援助していましたが
途中から静子に恋心を抱くようになってしまい
己の経済状態が悪くなるまで支援することになります。
劇中でも野村から、
「静子のことが好きだからそれだけの援助をしてくれるんだろう」と
尋ねられて、否定はしますが
男心からすると間違いなく静子ありきだろうと思います。

別に援助したから付き合え、とかそこまでの話じゃなくて
好意をもった人から感謝されたりするのは
気持ちいいじゃないですか、誰でも。
でも終盤に西島が静子にキスをしようとしたら
可哀想にすごい拒否られてましたけど・・・
それに援助を止めたら、自分が好きな人がろくでなしと
結婚しなきゃならないことになったら
中々やめられないですよね。

今ではあまり考えられないけど
当時としてはこういう家の関係で結婚させられることって
普通にあったんでしょうね。
でもそれまで会ったこともない人といきなり夫婦にさせられて
夜の生活を営むのってどんな気分なんですかね、
自分が女だったらまだ貧乏の方がマシだけどな。
しかも昔は男尊女卑な風潮が強かっただろうから
変な人と結婚したら虐げられそうだし。

置かれている状況を見れば、野村兄妹はもちろん同情されるべき
人々なんですが、
ずっと芝居をみていると、そうでもないような気になってきました。
それはこの二人があまりにも自分たちだけの世界に入ってしまっていて
援助していた西島すらも感謝はされているにしても
ないがしろにされている感じで
終盤では静子に怒られていたりしてます。
奥さんからも呆れられるし
この西島が一番可哀想に感じました。

他の出演者として秋山菜津子さんや鈴木浩介も出ていましたが
出番がとても少なかったので
他のあまり知らない役者さんでも良かったんじゃないかなぁって
思いました。

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