西洋十二単(じゅうにひとえ)

2005-04-24 17:38:16 | 


西洋十二単(じゅうにひとえ)の紫の花穂がアチコチに咲いている
この花は、匍匐系で広い範囲に広がってくれる。
元々は、ひと株頂いた物が、今では、広い範囲に広がって咲いてくれる

私がまだ、朝顔の花に凝っていた頃の事だ
釣りの師匠が道楽者で、あれこれ新しい事を始めては
私を引きずり込んでは、アッシー君やパシリを^^;
しかし、師匠の友達の分けてくれる朝顔は、そんじょそこらでは
手に入らない、貴重な物であったので、私もかなり育て方なども工夫をしていた

そんな朝顔だから、若苗の頃に葉の形を見て、
鉢上げする物と地植えにする物を分ける

私の家の前の坂の途中に地植えの苗を植えていたものだ
その朝顔は名前を忘れてしまったが、柿色のそれはそれは大輪の花の咲く物だった
薄い茶色に赤紫を溶かし込んだような色合いだった

その年も、毎朝、次々と大きく花が咲いてくれた、
休みの日の朝早く、咲きたての花を見ていたら、散歩の途中の老夫婦に声をかけられた。
「丹誠込めた綺麗な朝顔ですねぇ」「毎朝、楽しませてもらっていたんですよ」という。
そうして、朝顔を見ながら、花を育てる話になっていった。
「この朝顔にタネがなったら、分けていただけないか」と、おじいさんは遠慮がちに
私に切り出した。
その朝顔は、なぜか、種付きが悪い種類で、なかなか、実がならなかったものだった。
それを説明して、なったらお譲りしますよと、おじいさんに約束した。

それから、しばらくして、また休みの朝、水やりしていると
くだんの老夫婦がまた、通って、会釈する
何でも、今度の有料道路への入り口の路を拡張するので、住み慣れた家を立ち退いて
代替えの土地に新しく家を建てて、移り住むことになったという。
ついては、今の狭い庭だが、思い出のある樹を、良かったら私の家に移植して
育ててくれないかと言う

まだ、私の家は建てて数年だったので、庭も殺風景だったので、
樹を植えて、落ち着かせようと思ってくれたのだろう

歩いて一緒に老夫婦の家に行ってみると、確かに椿やザクロなどの木が茂っている
しかし、いかんせん、大きすぎて移植するのは、大仕事である
さりとて、植木屋さんにお願いしてまで移植する樹でもない、

でも、おじいさんは「朝顔の種を頂くんだから、何か持って行ってくれ」という。
ひょいと見ると、小さな草が赤紫の葉を付けて地面を覆っている
おじいさんに聴くと、名前は知らないが、春先に紫の小さな花がたくさんつくという。
それではと、その草を二株掘り出していると、これも、持って行けと「ノコギリソウ」を
堀上げてくれた

そんないきさつで、「西洋十二単」と赤花の「ノコギリソウ」が我が家で
アチコチに茂っているわけだ

幸い、その年には、朝顔も実を付けてくれたので、約束通りおじいさんに
タネを譲ることが出来た

その年の秋には、老夫婦も新しい土地に移ってしまって、私の譲った朝顔の種が
老夫婦の夏の朝の慰みになっているかどうかは判らない

柿色の朝顔は、おじいさんに譲った二粒だけがその年の実だったので
私の家からは途絶えてしまった
いまでも、この十二単が咲くと、老夫婦と柿色の朝顔を思い出す