切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

立川談春独演会(第二夜)に行ってきた。(「一分茶番」「らくだ」)

2012-12-20 23:59:59 | 新釈落語噺
有楽町朝日ホールで行われている三夜連続の立川談春独演会、第二夜に行ってきました。今回は、一夜目が「三軒長屋」で、二夜目が「らくだ」、三夜目が「富久」だったんだけど、三夜全部行く余裕が金銭的にも時間的にもなかったんで、第二夜の「らくだ」をセレクトしました。「富久」にも惹かれたんだけど、結局「らくだ」を選ぶあたりがわたしらしいのかな~。というわけで、簡単な感想だけっ。

6時半開演だったんで、大急ぎで行ったんだけど、会場も大変だったんじゃないのかな~。5分遅れくらいで始まりました。ま、談春ファンなら自明でしょうが、このひと、前座が先に登場みたいなことは少なくて、いきなり本人が登場、目一杯語っておしまいというパターンが多いんで、遅れるわけにはいかないんですよね。

さて、予想通りというか、先日亡くなった勘三郎の話から始まりました。

談春は「歌舞伎は詳しくない」と、頭で言っていましたが、確かにそんな感じがしましたね。たぶん、落語を通じて知ったという知識で、観劇はそんなにしてなさそうなニュアンスを端々に感じました。といっても、古典芸能が全然わかっていない西の方のダメ政治家とはもちろんレベルが違いますけどね~。ただ、歌舞伎座でよく見かけた快楽亭ブラックや、「中村仲蔵」や「淀五郎」を口演してもディテールが流石と思えた志らくとは、歌舞伎に対するスタンスが違うんだとは思います。

でも、そう考えると、勘三郎が「白井権八」を新橋演舞場で演じている月に、偶然を装って平成中村座で落語の「白井権八」をさらりとやってのけるなど、落語外の教養じゃなく、落語内教養のみで、芝居噺をやっても堂々たる芝居の場面を語れる力っていうのは、相当凄いものだとは思いますよね。

談春がさよなら歌舞伎座公演の忠臣蔵四段目を観劇して、そのあとすぐ判官を演じた勘三郎と対談したって話は勘三郎らしいエピソードというか、勘三郎はオタク気質で陰性の志らくより陽性の談春の方が好きだったんだろうなあ~とは思いました。平成中村座の談志追悼会のときも、「ハルさん、ハルさん」と談春を親しそうに呼んでいたしね~。

で、最初の噺、「四段目」がくるのかと思ったら、「一分茶番」。この噺って「権助芝居」というタイトルの方がなじみがありますよね。談志も「権助芝居」でCDを残しているし。で、こういう軽い話の談春も良いんですよね~。田舎者の出てくる噺の面白さっていうのも、談志以来、立川流の伝統という気がしなくもないですし~。もっとも、テレビの談志しかイメージのない人には、こういうことってわからないだろうけれど。

そして、いよいよ本命の「らくだ」。じつは前夜に『談志大全(上)』の「らくだ」のDVDを見直していたんですよね~。思えば、談志には入手しやすい「らくだ」の映像が三つあって、上記の他に『談志ひとり会92'93'』と太田光演出の『笑う超人』がありますけど、それぞれに違う!興味のある方はどうぞ!

さて、本題の談春の「らくだ」ですが、ざっくりいうと、校内暴力世代の「らくだ」というか、『ビーバップ・ハイスクール』世代の「らくだ」という感じの怖さでした。

怖さでいえば、凶暴さを感じる談志、この噺だけはなぜかダークな闇を感じさせる小三治に比べて、談春は比較的陽性の怖さなんですよね。だから、『ビーバップ・ハイスクール』出てくる先輩の怖さみたいに感じたのかな~。

その点、談志の「らくだ」は晩年になるほど、「芝浜」の女房を思わせる紙くずやの泣き言が重くなりますが、談春はセンチメンタルな部分は押していかないやり方で、わたしもじつはコチラのやり方のほうが好き。

八代目三笑亭可楽だと、ざらっとした職人世界の「らくだ」みたいだったし、志ん生は志ん生ワールドのアナーキーさだった。あと、関西では六代目松鶴の「らくだ」は重戦車みたいな大阪ワールドが強烈でしたね~。で、談春の場合は、おそらく実体験的で世代的なアナーキーワールドというのか、埼玉、戸田、無職、競艇etcみたいな世界観からくるアナーキーが反映しているという意味で、同時代的な「らくだ」ワールドなんだって感じはしましたね。

なお、今回は8時半過ぎくらいに終演。前夜は8時55分まで続いたそうで、9時に噺家も含めての完全撤収がマストの会場の関係者に、談春怒られたそうです。そういう意味では、今夜は遠慮があったのかな~。

それと、来年は東京での高座を増やすというので楽しみ。特に「包丁」が聴いてみたいんですよね~。それに、鈴木おさむ、今田耕司との芝居もあるといいますが、ちょっと想像つかないなあ~。鈴木おさむから花は届いてましたけどね~。

というわけで、満喫させてもらいました。来年の談春にも目が離せない!

PS:談春が「古い歌舞伎座が新しい歌舞伎座の舞台に勘三郎を出したくなかったんでしょ」って発言したのにはドキッとしました。そう考えると、富十郎、芝翫、雀右衛門・・・。なんだか妙に納得してしまったんですが・・・。



立川談志 ひとり会 落語ライブ’92~’93 第四巻 [DVD]
クリエーター情報なし
竹書房


笑う超人 立川談志×太田光 [DVD]
クリエーター情報なし
Victor Entertainment,Inc.(V)(D)


談志大全 (上) DVD-BOX 立川談志 古典落語ライブ 2001~2007
クリエーター情報なし
竹書房


立川談志ひとり会 落語CD全集 第18集「芝居の喧嘩」「権助提灯」「芸論列伝 其ノ壱 対談・桂文楽」
クリエーター情報なし
日本コロムビア


落語名人会(29)らくだ
クリエーター情報なし
ソニーレコード
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 團十郎の病気休演。 | トップ | 歌舞伎座の柿葺落(こけらお... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

新釈落語噺」カテゴリの最新記事