orangeー未来ー 6巻
orangeー大切なあなたへー 7巻
漫画、高野苺
6巻のあとがきで、
全5巻で完結したorangeの番外編的な6〜7巻。
須和主人公で、翔がいない10年後の夕陽を
5人で見ながら
『見せたかった この景色はおまえには
どう映ったかな』と思ってるとこから
10年前が描かれるお話。
あとがきによると
このお話は作者さんが連載1話を考えていた時に
決めてた本当の最終話だそうです。
というわけで本編。
サッカー部に入部しないという翔に
駄々をこねて無理やり入部させた須和。
(サッカー部に入らないと言い出した翔に)
また手紙に書いてることが起こったと思う。
手紙には翔が死ぬ(自殺する)こと、
菜穂と結婚して子どももいるけど
翔が生きてれば菜穂と翔が幸せになる未来が
あったと思うこと等が書いてある。
10年後の須和にスイッチ。
手紙を一生懸命書く菜穂から
“須和と結婚したこと書いていい?”と聞かれ
“ダメ、未来がわかったらつまらない
それにサプライズプロポーズが台無しになる”
とおどけてみせ、菜穂はそっかと納得する。
(本当は、それを10年前の菜穂が知って
翔と結ばれることを躊躇わないようにだろう)
須和からすると、
翔が自殺しない→翔と菜穂が結ばれる
→自分は失恋する
ということだと思っている。
翔が菜穂を好きなことも、
菜穂が翔を好きなことも知っているから。
それでも皆んなで手紙を流す時、
この手紙で翔を救いたいと本気で思う須和。
そして、手紙が届いた10年前
翔の自殺を止めることに成功する。
そして6人でタイムカプセルを埋めて
菜穂と翔は付き合い始め
他4人に想いを告げなくて良かったのかと
問われる須和。
良い人ぶってるだけという須和に4人は、
どちから一方だけを幸せにすることも
傷つけることも選べない、
良い人ぶってるんじゃなく『ただの良い人』
と言われて涙する。
そして10年後、
須和と菜穂の子どもだった春は、
翔と菜穂の子どもとして産まれてる。
人見知りの激しい春が
須和にだけ懐いていて不思議に思う翔と菜穂。
(須和と菜穂が結婚して春が生まれてる未来も
あったこを手紙で知ってるのは須和だけ)
そして6人で夕陽を見る。
翔は「オレンジだ 街も桜もみんなも
俺の見たかった景色だ」という。
そんな翔に須和は「お前は過去の自分に
手紙を送ってみたいと思う?」と聞くと
母親に送りたいという。
「生きててよかったと思う日が必ずくるから
生きててほしい」と。
というところで目が覚める須和。
同じく目覚めて泣いてる菜穂。
“手紙が届かなかった世界があるとしたら
手紙が届いた世界だってあるだろ?
可能性の数だけ選べる未来がある。
失敗があれば成功だってあるから
おまえが道に迷っていたら今度は迷わず
俺が助けに行くからな”
という須和の心の言葉から
10年前の菜穂に手紙が届いた場面でエンド。
次は、
手紙が過去に届かない世界線かもしれないけど
のちに手紙を送ることにするのだろう世界線で
翔が事故死と思ってた、その後のお話。
翔への罪悪感で須和はサッカー部を辞める。
大学に入り皆んなと会わなくなるが
弁当屋に行くと菜穂がバイトしてた。
そこから菜穂への気持ちが再燃。
しかし自分が思ったアプローチをしても
菜穂は喜ばない。
翔のフリをして翔が菜穂としたいと
言ってたことをすると菜穂が喜ぶ。
それを繰り返して罪悪感を持ちながらも
それでも菜穂が喜ぶ姿が見たい須和。
自分が考えたサプライズプロポーズ、
それが1番嬉しかったという菜穂。
そして「私はずっと須和を好きでいます」と
菜穂に言ってもらえる。
“俺は一生翔に勝てないと思ってた
菜穂の喜びや幸せを作れるのは翔だけだって
今でも思ってる
(ここで翔が笑って応援してくれる姿が
須和には見える)
でも俺も負けないからな”
と菜穂と2人で歩いて行く須和。
というもう一つのハッピーエンド。
このお話は作者さんが連載1話を考えていた時に
決めてた本当の最終話で、
翔を事故(自殺)から救った後に
一瞬で未来が変わってしまうというのは
描きたくないなと思ったからだそうです。
(萩田くんが言ってた可能性の1つですね)
「心が傷ついた人がいたら気づいて救って
ほしい」けど、ひと言声を掛けただけで
もう平気と思わないで 深く傷ついた心を救う
のは時間が掛かることを
この作品を通して伝えたかったと書いてます。
10年後の未来を描くのは本当の10年後とかに
番外編として描きたいと思ってたそうです。
菜穂主人公から須和主人公に変更して
ずっと思い描いたこの未来を描く事ができたと
作者さんは語ってます。
10年後に描けたらと思ってたのは、
10代の読者さん(10年前菜穂目線)が
20代になり(10年後須和目線)受け入れやすく
なるまで待ちたかったのかなと思ったり。
7巻ー大切なあなたへー
こちらは、翔主人公で自殺をせず
菜穂と付き合うようになり
周りが見えるようになり
自分を助けてくれた
友達たちのことを考えるようになるが、
まだまだ家族の問題に振り回され
闇に引っ張られそうになるけど…というお話。
翔は菜穂に
“菜穂と今日も一緒にいられてすごく幸せだよ
俺はずっと幸せだったんだ
なのに菜穂や皆んなを裏切ろうとしてた
ごめんね”と言って、
離婚した父親から“母が亡くなり
心配しているから一度会いたい”
という手紙が届いているんだが、
母親が死んだのはお前のせいだと怒られそうで
怖くてずっと無視していたけど
会ってみようと思ってるという。
菜穂は心配だから一緒に行くと言うが
大丈夫だと断られる。
(でもちゃんと“ありがとう”という翔)
父親に会うことを決めた後、
少し不安ながら周りを見る翔。
『萩田くんは面白い いつも冷静で一歩下がって
周りをよく見ていて その時何が最善かを
常に考えている気がする』と思う翔。
そんな萩田から
「死にたいと思っても絶対に生きてて欲しい
お前は苦しいかもしれないが
楽しい時間を増やす努力は俺がするから
俺の一生のお願いだ」と言われる。
(翔が何か不安を抱えてることに勘づいてる)
『貴子は頼りになる 俺より男らしくて
友達が傷つけられたら その人の盾になって
全て守る 味方になってくれたら心強い人』
と思う翔。
そんな貴子から
「翔、人に頼ったことないでしょ?
頼ってもいいんだよ 良い事なの。これこらは
もっと人に頼ったり甘える勉強もしな」
と言われる。
(こちらも翔の変化に勘づいてるっぽい)
そして、父親に会った翔だが
翔の予想通り
『お前のせいだ』という言葉を浴びせられる。
しんどい気持ちの中、
周りを見る翔。
『アズはよく笑う でも泣いている人がいたら
一緒に泣いて 悩んでる人がいたら一緒に悩み
人に寄り添うのが上手なんだと思う』
「話すと辛くなるなら無理には聞かないよ
でも話せば心が軽くなるなら話して欲しい
あとウチらは翔に迷惑かけると思うから
翔も遠慮せず(迷惑)かけな
傷つけるかもとか心配せずに何でも話して」
と言う。
(勘付かれてますね)
『須和は一途 自分より人の幸せを考えられ
一度決めた事は最後までやり遂げる
強くて優しい人。俺は須和みたいなりたい』
と思う翔。
「一人で泣かせないよ 辛い時は一緒に泣こう」
「てことで、今日は話すまで帰らせない」
(勘づいて動くのはやっぱり須和)
まだ少し父親の言葉を引きずってる翔。
“出来るなら誰も悲しまず苦しまない世界に
なって欲しい 楽しくて幸せな事だけの世界線は
存在するのかな”
と思っていると、
今度は『成瀬春』(未来)から手紙が届き
吹っ切れる。
そして、翔は菜穂にプロポーズする。
めでたしめでたし。
翔×菜穂推しには、良かった良かったな世界。
しかし、6巻を読んだ後だと複雑な気持ちに
なりました。
須和が良い子すぎて、
翔が生きてるからって菜穂を諦めない選択も
あることも、告白するチャンスもあるけれど
2人が幸せな方が嬉しいと思って出来ない
どころか背中を押すような須和が切ない。
須和×菜穂という世界線は、
翔が亡くなっていないと存在しなくて
その世界線では、時がくれば翔が自殺だと知り
何か出来たのではと後悔するけれど
それでも5人は前を向き、
翔がいない未来へと踏み出すという
切ないハッピーエンド。
そんな5人が翔のために何かしたいと
思いつくのが10年前の自分に
翔が自殺したいと思わないようにするための
手紙を書く事だったんだね。
何も変わらなかったから
手紙は届かなかったのかもしれない、
でも手紙が届いたパラレルワールドな世界線が
存在することを願ってる。
20代で後悔を抱えながら色んな可能性を考えて
必要最低限しか手紙に書かなかったんだろうと
思うと、不親切だなぁと思ってた手紙が
とても配慮のある手紙だったんだなと
気づきます。
本当に繊細で切なくて難しい物語でした。
素晴らしいなと思いながらも、
全5巻で単純にハッピーエンドとか思って
喜んでたかったような気もしますが
作者さんが投げかけていたことを
キャッチすることができたのは
やっぱり良かったかなと思います。
ありがとうございました。