シジュウカラ 全10巻
40歳から50歳になるまでの
漫画、坂井恵理
40歳から50歳になるまでの
主婦で漫画家な女性の恋愛物語。
不倫モノで葛藤は凄いんだけど、
そんなドロドロはしてないというか、
いやでも背負ってる過去は
どギツい登場人物多いけど、
ラストはハッピーエンドで清々しいです。
というわけで本編。
主人公の忍は漫画家というより
漫画家のアシスタントなので
家の主収入は旦那さんです。
旦那はモラハラ旦那で浮気もしてました。
でも忍は息子がまだ学生で
大学受験も控えているしで
見ないフリして過ごしてます。
ここで珍しいのが そんな旦那ですが、
現在は不倫してないとはいえ
忍とも夜の営みは積極的。
忍は嫌悪感を感じながら流されてます。
(たまに断ってる)
そんな忍の昔の漫画が電子版で人気が出ます。
そして、新しく電子漫画の連載のお仕事が
舞い込んで、アシストを雇うことに。
そこでやってきたのが
若くてイケメンの千秋くん。
ちょっとポッとなりますが、
既婚者だし年の差もあるし何を浮かれてると
忍は自分を恥じます。
家族での夕食にも千秋を誘ったことで
旦那を見てから千秋の距離感が近すぎて
勘違いしそうになるのを必死で堪えます。
決定的に仕掛けられてると感じた忍ですが
拒否する。
そして、千秋の母親が旦那の不倫相手で
千秋の家庭はそれが最後の引き金となり
離婚していて荒れる母親と暮らしてきた千秋は
忍の家庭が円満なのが許せず、
忍に不倫をさせて暴露し家庭を壊させたかった
ようです。
そして、忍の昔々の漫画が千秋の愛読書で
心の支えだったことがわかる。
その漫画が掲載されてる雑誌は、
忍の旦那が忍から渡されたのを
読みもせずに千秋の母親に渡し
千秋の母親も読みもせずに
千秋に渡したものでした。
皮肉なことです。
千秋は10代の頃に
千秋の母の友達に犯されて
その後もお金を貰ってする関係になります。
しかもそのお金は母親に巻き上げられます。
(母親は何のお金か気づいてて見ないフリ)
深い傷なのだと認識してなかった千秋ですが
忍によって傷と向き合えるようになる。
そして、色々ありまして
千秋の方がどんどん忍に惹かれていくけど
忍の方はブレーキめいいっぱいかけて
耐えてます。
千秋のそれは恋愛なのか母親を求めるものか
あやふやだったから。
旦那は忍と千秋の仲を疑い、
忍を抑えつけようとしますが
それが余計に嫌悪感を持たれるとは
思ってない様子。
忍の息子の悠太は素っ気ないけど優しい子。
母親が父親のことを耐えていること
千秋のことも想いはあっても越えないように
してることにも気づいてます。
なので自分のために耐えなくていいと
言いますが、忍はそんな悠太の気持ちも含めて
やはり家庭を壊せないと思ってる。
千秋は忍を救い出したいと頑張るけど
忍は首を縦にふらない。
離れてる間、千秋は
一人前の漫画家にならねばと
自分の過去を漫画にしてヒットする。
忍の方は自分が稼いで頑張ると思った矢先に
旦那が倒れて病気療養で仕事もできなくなり
引っ越して忍が家計を支えていた。
千秋は自分の漫画に共感してDMをしてきた
父親に性的虐待を受けていたみひろに
居場所を提供したつもりが、
彼女の方からは異性として求められてるのを
感じつつも、危うい彼女を突き放さずいた。
忍の方は漫研の仲間で元カレが
自分の担当編集になり求められ不倫関係に。
忍は彼のことを好きではあるけど
千秋のことは引っかかっている。
悠太は大学入学を機に一人暮らしし
忍が耐えなくていいようにしたいと思ってる。
旦那に不倫を気づかれ、
また束縛してこようとするが
逆に離婚を決意する。
再開する忍と千秋。
お互いに想う気持ちはあるものの
会えない間にできた人間関係が邪魔をする。
そこで何やかやありますが、
最終的に千秋の気持ちが全部ひっくり返して
バツイチになった忍と同棲する。
結婚したい千秋と結婚に拘りたくない忍。
それでも何とか折り合いをつけて
前よりも一層お互いを大切に想い合う2人。
そして、忍は
幸せすぎて夢オチじゃないかと思うが、
千秋は
夢じゃない、ベッタベタに甘いハッピーエンド
だという。
忍は「うん…。」と返事しつつも
『ううん 物語はまだ終わらない』と
これからも色んな困難があるだろうなと
思ってるようです。
(でも悲壮感ではなく
ドンと来いという前向きな雰囲気に思う)
忍は自分の描きたいものを描いて順調です。
千秋も忙しくしています。
そして、ある日みんなが忍の家に集まって
忍にサプライズお出迎えをしてくれる。
その日は忍の誕生日。
今まで関わってきた大切な人たちに囲まれ
祝ってもらい楽しい時を過ごす。
“私はこの日50才になった”
というセリフでエンド。
綺麗なラストでした。
途中、元旦那が千秋の母と一緒に暮らしたり
千秋の母が病気になったら出て行ったり
外国に逃げてオーバーステイと借金とで
悠太のとこに日本大使館から連絡があったり
と救いようない転落人生を送ってたり
(本人に帰国の意思もないし無視です)、
千秋の母は忍と話をして
忍の漫画のモデルになったり
最後死にたくないと荒れつつも亡くなります。
他にもたくさんの登場人物が
それぞれに良くも悪くも着地してて
忍の周りに残ったのは
前を向いて頑張ってる優しい人たちだけになる
なんとも穏やかなラストでした。
年の差カップルで女性が年上の場合
世間からの風当たりが強いことを
作者さんは理不尽だなと感じ
それをひっくり返して生きていく
忍の物語りを描きたかったんだなという
強い想いが伝わってくる作品でした。
(作中にもそういうセリフがあり、
後書きでもそんなようなことが書かれてた。)
本当に丁寧に丁寧に
偶然を重ねて必然になるよう、
縁と運とタイミングが合わない時を経て
合ったタイミングを逃さず強く結びつく
そんは忍と千秋が
これからも壁を乗り越えていくんだろうと
思える物語りでした。
ありがとうございました。
1巻と対比して幸せそうな
10巻の表紙の忍。