言わなければならない事は言わないと前には進まない

生活する中において言わなければならない事や、他の記事で共感したことなどを中心に。今その時の思いを表す。

ナベツネと『運命の人』

2012-03-04 06:41:22 | 言いたいことは何だ
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 沖縄返還『密約』の西山太吉記者と
                           ナベツネ、二人の品格
 
TBS『運命の人』は、1972年の『沖縄返還協定』をめぐる日米政府の密約をスクープした、毎日新聞・西山太吉記者(夫妻)と外務省女性事務官(蓮見喜久子)らの社会的ドラマである。日曜9時というゴールデンアワーの時間帯なのに、期待ほどの数字(視聴率)は取れていないらしいが、ヒョン(変)なことからぐっと数字がアップするかもしれない…何のことかというと、あのナベツネがこのドラマに噛みついたからだ。
 
『サンデー毎日』に寄稿したナベツネさんによると、どうやら自分と推定できる(ドラマでは山部一雄・記者)人物の描き方が、まったくデタラメであるというのだ。その言い分━━

●西山記者は田中角栄からの金を突き返したのに、ナベツネは料亭でごちそうになったり金を受け取ったりしたことになっているが、これはまったくの事実無根である。
●裁判の時もメディアに従事する者として、ライバル(毎日新聞と讀賣新聞)関係にありながら被告人(西山記者)側の証人になったし、有罪になって社会から抹殺された彼の息子の就職の世話もした。それなのに、このドラマではナベツネは悪玉にされている。
●蓮見事務官についても74年2月16日号『週刊読売』に、彼女がマスコミや検察がPRしているような“やり手の新聞記者に強引に押し切られたウブな大和撫子”などではない、という趣旨の文章を書いて西山記者をサポートした…それなのに!

 
と、まあ怒り心頭なのである。怒るついでに「私は西山君をライバルと思ったこともない。私は政治学、政治史に関し20冊も著書を出したが、当時の西山君の著作など見たこともない」と、しっかりウヌボレを入れている。そして、「西山がデータを原作者の山崎豊子に提供したのはまちがいないのだから、山部(ナベツネ)記者の描き方が歪曲されていることについて当然謝罪すべきだ」と、イキマクのだ。かわいいというか幼稚というか。これが天下の??大??
新聞の主筆の言うことかね(笑)。
 
長い首相在任のフィナーレを「沖縄返還」で飾ろうとした佐藤首相は、少々功を急ぎすぎたようだ。「返還する時の原状回復費用はアメリカが負担する」という取り決めに反して、日本側が400万ドル(実際はVOAの移転費用まで払わされ最終的には3億2000万ドル!)を支払うと、密約を交わしてしまったのである。それを西山太吉記者がスクープした。そのチョー極秘の電文を彼に提供したのが、外務省の蓮見事務官だ。
 
西山はもちろん新聞に発表するつもりであったがデスクや上司への不信もあり、その電文を社会党の横路議員に渡してしまう。横路がいくら「密約」を国会で追及しても、佐藤首相・福田外相・外務官僚は「そんなものは存在しない」とシラを切りつづける。そこで業を煮やした横路は西山との約束を破って、電文の写しを「証拠」として差し出してしまい、蓮見がリークしたことがバレてしまう。この時点で少なくともニュース・ソースを護れなかったのだから、西山の失敗である。
 
“動かぬ証拠”を突きつけられた政府は、大あわてで対策を協議。その時検察庁の佐藤道夫が「情を通じて」という必殺!!??の名文句を思いついた。この瞬間「国家権力による背信行為」(国民をだまし隠蔽)は、スルリと「男女の下ネタスキャンダル」にすり替わってしまった。すべてのメディアがそれに乗っかってしまったからだ。売れない「政府の密約」より売れる「不倫スキャンダル」へと、雪崩を打って大フィーバー。漫画にまでなった。
 
西山は自民党の大平正芳と親しかったのだが、佐藤は大平が大嫌いだったから「密約文書」も大平のさしがねと勘ぐったらしく、西山と蓮見を逮捕させ「公務員守秘義務違反」で起訴させる。「存在しない(と政府は言い張る)はずの秘密」を「漏洩」した罪で、二人は裁判にかけられたわけだ。“この世にいない人間”を殺したからと、殺人罪にするようなものだ。マンガである。保守派の文人・司馬遼太郎でさえ、このぺテンに激怒したほどだ。にもかかわらず国家権力の法的番犬である最高裁は、二人を「有罪」(執行猶予つき)にして、国民を騙した政府や官僚のウソは無罪放免にした。
 
それぞれの品格について考える━━━
自分から誘っておいて、法廷では一方的に“利用されたか弱き被害者”を演じた蓮見事務官。妻が帰宅すると体中を調べ、浮気の痕跡を探したり生理の日をノートに記す蓮見の夫。事件後この夫は、妻とのプライバシーまで週刊誌に話してハシャギまくる。分別ざかり?の夫婦が、である。夫の兄は外務省官僚。蓮見女史は、お酒が入ると人格も品格も変わってしまうらしい。

 
裕福な育ちでエリート記者の道を歩いていたせいか脇が甘く、ノンキャリアで苦労して(あらゆる女のリソースを活用して?)事務官に採用された蓮見の心の傷に、思いが至らなかった西山太吉。しかし彼は、情報源である彼女を護れなかった自分を恥じ、二人の関係のアレコレについては一切弁明せず、記者の使命として「国民の知る権利」を正面から訴えた。
 
「密約」を国民に隠して「沖縄返還」の手柄?をPRし、“都合の悪い真実”を暴露されると、陰湿卑劣な手を使って西山を犯罪者に仕立てあげた佐藤栄作(あの岸信介の弟)。彼はアメリカとの「日米繊維交渉」で、日本の繊維工業をつぶしてその代わりに「沖縄返還」をゲットした。「糸で縄を買った」と揶揄されたものだ。繊維交渉でアメリカに支払ったウラ金?が。沖縄より巨額とといわれる。
 
さらに最悪なのはメディアだ。国民に対する重大なウソ(背信行為)を暴くべき報道機関が、まんまと不倫スキャンダルに踊ってしまった。大衆の下司な関心に迎合したのだ。検察官関係者が得意気に「まんまとメディアがとびついてくれた」と発言したのを今でも憶えている。外務官僚の独善と横暴の壁を突き破って「国民の知る権利」を行使しようとした自分たちの仲間(西山記者)に、マスコミは権力者と一緒になって石を投げたのだ。まさに『メディアの敗北』(琉球朝日放送02年)以外の何ものでもない。敗北というより堕落だろう。民主主義の根幹は、政府・官僚といった権力をチェックし監視するウォッチ・ドッグであるべきなのに、何とただのペット(飼い犬)になってしまったのだから…。
 
ナベツネの品格? もう言葉もない。この人はジャーナリストというよりはフィクサーになりたいようだから、またワケのわからない「大連立」でも妄想していることだろう(爆)!
                    
                                 ー  了  -
 
PS:参考までに2010年2月の関連記事URLを…
   
http://blogs.yahoo.co.jp/pen_tsuyoshi/35483859.html   
   
http://blogs.yahoo.co.jp/pen_tsuyoshi/35507239.html
                                    
 


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