2013年9月6日 掲載
元スイス大使が緊急提言「IOCは原発事故の真相を知っている」
<「もはや日本に勝ち目はない」>
欧米メディアが福島原発の汚染水を問題にしはじめている。
国際社会は日本をどうみているのか、東京五輪はどうなるのか――。
原発問題に詳しく、公述人として国会にも出席した元スイス大使の村田光平氏に話を聞いた。
2020年五輪の開催地に東京が選ばれる可能性はかなり低いでしょう。
いまからでも日本は、五輪招致を辞退すべきです。
日本政府は福島原発の問題を国際社会から隠そうとしてきました。
でも、とっくに世界は原発事故の深刻さに気づいています。
欧米メディアが一斉に取り上げているのをみれば明らかでしょう。
海に汚染水を流し続けているのだから、もはや日本だけの問題ではないということです。
ドイツの「キール海洋研究所」が昨年、福島原発事故によって太平洋がどうなるか、6年後の放射能汚染をシミュレーションしています。
太平洋は真っ赤になっている。
当然、IOC委員のメンバーも、シミュレーションの中身を知っているでしょう。
また「核戦争防止国際医師会議」(IPPNW)は6月上旬、「原発事故は解決から程遠い」と声明を出しています。
アメリカでは福島原発について、1億人の署名運動が始まりつつある。
日本政府に任せていては不安だから、アメリカ政府が解決に乗り出すべきだと、オバマ大統領に直訴するそうです。
世界中が危惧しているように、もはや民間の東電に汚染水問題を解決できないことはハッキリしています。
残念ながら日本政府も解決できないでしょう。
いま安倍政権がやるべきことは、国家を挙げても処理できない事実を国際社会に正直に公表することです。
そのうえで、国際協力を仰ぐしかありません。
いま日本は、福島原発事故を収束できず、国際社会に不安感を与えている。
この先、世界中に協力を求めなくてはいけない。
なのに、オリンピックを開催しようというのは、あまりに無責任だし不道徳です。
もはや、東京に勝ち目はないと思います。
もし、東京開催が決まったら、IOC委員会は存在価値や見識を問われるでしょう。
IOCは原発事故の現実を知らないのか、と必ず批判される。
でも、IOCはそれほどバカじゃないと思う。
五輪招致のために安倍総理がブエノスアイレスに行くのは、国家の危機である事故処理よりも、オリンピックを重視したと捉えられても仕方がない。
総理はブエノスアイレス行きを断念すべきです。
▽村田光平(むらた・みつへい) 61年東大法卒。外務省入省。セネガル大使、スイス大使などを歴任。東海学園大名誉教授。