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[TPP反対 ふるさと危機キャンペーン ISD条項の実像 上] 戸惑うカナダ  (03月13日) :日本農業新聞記事です

2012-03-14 22:04:24 | 言いたいことは何だ
[TPP反対 ふるさと危機キャンペーン ISD条項の実像 上] 戸惑うカナダ  (03月13日)
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http://www.agrinews.co.jp/uploads/fckeditor/2012/03/13/uid001010_2012031313420791f077f1.jpg 外国に進出した企業が、不当な扱いを受けたとして投資先の政府を提訴できる投資家・国家訴訟(ISD)条項への懸念が世界的に広がっている。米国が結ぶ自由貿易協定(FTA)の同条項による“裁判”で、同国政府が一度も負けたことがない事実などから公平性が疑問視されているからだ。米国は環太平洋連携協定(TPP)への盛り込みも目指している。カナダと米国の実例から危険性を報告する。

 カナダでは、農地などを露天掘りする複数の採石場開発計画が持ち上がり、住民らが反対運動を展開している。地下水などが汚染される恐れがあるからだ。計画を進めるのは米国のセメント企業。地元の州政府は事業を許可せず開発にストップをかけた。一方、米国企業は、北米自由貿易協定(NAFTA)のISD条項を使いカナダ政府を提訴。産業廃棄物処理会社などを合わせて、米国企業による提訴は30件に上る。カナダでは、環境を守る規制など国民にとって重要な政策を国内で決められなくなるとの危機感が高まっている。

 「採石場の問題が国内の裁判を飛び越えて、突然、国際問題になった。驚きしかなかったが、仲裁の不公平さを知って怒りが湧いてきた」
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 採石に反対するハミルトン市の市民団体FORCEの会長、グラハム・フリントさん(52)は、米国にある多国籍企業傘下のセント・メリーズ・セメント社が昨年9月、カナダ政府に2億7500ドル(約230億円)の賠償を求めた時の心情を語った。裁判の内容は原則非公開のため蚊帳の外だ。

 フリントさんは、住宅200戸の半数が別荘で森林や湿地がある自然に恵まれた地域に住む。採石が始まれば土地が爆破される音や砂ぼこり、1日に1600台のトラックの往来が見込まれる。

 さらに深刻なのは、地下の帯水層より深く掘り下げるため、1日9000万リットルの水が採石場に湧き出すことだ。地下水が汚れ、水位が低下すれば、かんがいが必要な農業は続けられなくなる。http://www.agrinews.co.jp/uploads/fckeditor/2012/03/13/uid001010_20120313134203b1df6f1b.jpg

 予定地の隣で牧草を生産するダニエル・カラン・ブラニーさん(58)は「草地は砂ぼこりをかぶり、馬にやる水もなくなる。既に地価が下がっているが、巨大企業を相手に訴訟を起こすなど考えたくもない」と話す。

 同社は、水はきれいにして川に流すため、環境への影響はないとしている。住民らは、大量の水を浄化するシステム実現の可能性を疑っているが、同社から満足できる説明はまだない。
 地域では住民の95%が反対し、川の下流の住民を含め1200人が州政府に事業の差し止めを要求。土地の用途変更の凍結などを実現させた。

 カナダ政府を同社が訴えたのは、採石が州内で既に行われており、州政府が事業を許可しないのは「不平等」というのが理由だ。

 しかしフリントさんは「反対するのは相手が米国企業だからでなく、採石を行う場所が間違っているからだ」と反論する。湿地にいるカエルの鳴き声が夏に聞こえることが地域の誇りであることを強調し、「お金に換算できない価値を大事にする外国企業が少ないのが問題だ」と話す。

 同州ではダファリン郡の優良農地2630ヘクタールでも、米国企業によるカナダ最大の採石場の開発計画が持ち上がっている。計画の反対集会には、州を越えて3万人近い市民が集まるなど国家的な問題になっている。

〈ISD条項とは〉

 海外に投資する企業と現地政府との間の紛争を仲裁するルール。企業は投資先の国や地方政府の規制や政策が、外国企業より国内企業を優遇することを禁じた「内国民待遇」のルールなどに反すると判断した場合、相手国の裁判を経ずに直接、損害賠償などを求めて政府を訴えることができる。一審制で上訴できない。

 仲裁判断を下すのは世界銀行の下に設けられた国際投資紛争解決センター。投資機会が公平に与えられたか否かを判断する。当該の規制や政策が国民にとって必要かといった提訴される国の事情は考慮されない。

 ISD条項は、米国や日本が結んだほとんどのFTAなどに導入されている。

 NAFTAでは、米国企業がカナダやメキシコの政府を訴え、多額の賠償金や規制の撤廃を求める事例が相次いでいる。

・米国企業の利益優先 優良農地が食い物に

 カナダ最大の 都市トロントから車で北西に約100キロ走ると、カナダ・オンタリオ州ダファリン郡の広大なジャガイモ畑が広がる。道路脇には数十メートル置きに「巨大採石場を止めろ」「川の魚を守れ」といった開発反対の看板が立ち並んでいる。
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 反対運動を行う市民団体(NDACT)の会長、カール・コザックさん(53)と車で開発予定地を走ると、事業の巨大さを実感できた。

 東西の幅は6キロある。同州から最上級の農地の認定を受けた 生産性の高いジャガイモ畑だが、採石を行う米国のハイランド社が 既に買収しており、農地を売った農家の家々は朽ち始めている。

 同社は、2006年から大規模農業を行うとの名目で地域の農地を買い集め、08年に採石を行うと発表。農地を60メートル以上掘り下げ、建材などに使う高品質な石灰石を取る。その後、取り除いた土壌を戻して、できるだけ農業をやるという。だが複数の農業の専門家が、20階建てのビルに相当する深さまで掘った農地では生産性を保てないと指摘している。

 この計画でも、採石場に地下水が流れ込む現象が起きる。同社によれば最大で270万人の使用量に当たる1日6億リットルの水をくみ上げ、近隣の地下水に戻すことになる。一度、採掘をすれば揚水は半永久的に必要になるとみられる。開発予定地は同州南部で最も標高が高く、東西南北に流れる五つの川の水源だ。

 カールさんは「企業の平均寿命は数十年といわれるのだから、水の処理の責任など負い切れない」と疑念を持つ。同社は、爆破のための火薬が毎日20トン、石を運び出すため同7200台トラックの出入りが必要と見積もる。影響が広範に及ぶため、計画の差し止めを求める昨年10月のイベント「FOODSTOCK」には農家、消費者、料理人、芸術家ら2万8000人が参加した。

 同社は「採石場は450人の雇用を生み、地域の発展のためになる」(リンゼイ・ブロードヘッド広報担当)と主張する。しかし住民らは、採石事業が始まれば観光業で働く1500人のうち1000人が仕事を失うとみる。カールさんは「採石は数十年で終わるが、食べ物を生産する農地や水は永遠に必要だ。こうした環境を子どもに引き継ぐのが地域に生きる者の義務だ」と話す。

 市民の反対もあり、同州環境省は昨年9月、採石についての環境評価を包括的に見直すよう指示した。評価が行われる数年間は開発は停止する。しかし住民らの心配は消えない。

 同州ハミルトン市での採石事業が事実上差し止められたことに対して、米国にある多国籍企業傘下のセント・メリーズ・セメント社が、NAFTAのISD条項でカナダ政府を訴えたからだ。

 カールさんは「提訴されれば、私たちが参加できない不利な仲裁が始まる。環境評価の結果にも影響が及びかねない。日本の人々も、(同条項が含まれることが予想されるTPPに参加して)企業に地域資源を握られる前に反対すべきだ」と言葉に力を込めた。

・ISD条項 TPP盛り込み危険 ヨーク大学法科大学院 ハーテン准教授に聞く

 カナダでは、米国のセメント会社などが「政府の規制が事業を妨げている」として、カナダ政府を訴えるケースが相次いでいる。通商法の専門家であるヨーク大学法科大学院(オンタリオ州)のガス・ヴァン・ハーテン准教授に、北米自由貿易協定(NAFTA)などの紛争仲裁ルールである投資家・国家訴訟(ISD)条項や環太平洋連携協定(TPP)の問題点を聞いた。http://www.agrinews.co.jp/uploads/fckeditor/2012/03/13/uid001010_20120313134223fb59f70d.jpg

  ―――ISD条項の国際仲裁は公平ですか。

 ほとんどスキャンダルと言っていいほど腐敗している。本来、中立性が必要な仲裁人の人事に、米国人が総裁を務める世界銀行と、多くの多国籍企業が加入する経済団体が大きな権限を持つ。それに通商法の専門家が結び付き、米国以外の政府にとって極めて不利で、企業に有利な結果を生むトライアングルを形成している。米国政府が訴えられても、仲裁で一度も負けたことがないという現実を直視すべきだ。

 企業が投資先国の裁判などの国内プロセスを飛び越え、政府を訴えることも問題だ。政府が負ければ、事業の潜在的な利益を賠償することになるだけでなく、国民の生命や環境を守る規制を設ける権利が制限される。カナダ政府は、地域のことを住民が決めるという民主主義の原則を守るため、あらゆる手段を使って国際仲裁で勝たなければならない。

   ―――日本政府は経済連携協定(EPA)などにISD条項を盛り込むなど導入に積極的です。

 日本は提訴されたことがない。しかし、だから今後も安全だとは言えない。日本がISD条項を盛り込んだのは開発途上国との協定が中心だ。シンガポールの企業が、どれだけ日本に進出しているのか。一方、米国企業は日本に投資している。日本が市場化していないエネルギー分野などが標的になる。TPPでは、ISD条項の危険性がこれまでの協定とは違うことを認識すべきだ。

 ―――ISD条項は企業に権限を与えすぎたとの反省から、修正がされているとの見方もあります。

 韓国政府は、米韓の自由貿易協定(FTA)のISD条項はNAFTAのそれとは別物で、より安全だと説明している。だが、二つのISD条項は条文の本文ベースで98%が同一。見直された箇所は企業の権限をむしろ強くしている面がある。TPPでも、その影響力は変わらないだろう。

 同条項の原型は、植民地主義時代の不平等条約だ。仲裁事例の73%は米国、英国、フランスなど旧宗主国の企業が訴えたものだ。これらの国との協定に ISD条項を盛り込むのは 危険だ。カナダ国内では欧州連合(EU)との 経済連携交渉に懸念が高まっている。

 それをさらに上回る危険があるのがTPPだ。日本とカナダとメキシコが参加すれば12カ国による協定になる。これだけ多くの国がISD条項を受け入れると、国際仲裁が一気に拡大する。多国籍企業の肩を持つ国際最高裁判所をつくるようなものだ。だが韓国やオーストラリアなどの国民はISD条項に反対し始めている。この不公平なルールを止めるには、一人でも多くの人が問題に気付き声を上げるしかない。



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1 コメント

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Unknown (SUM)
2012-03-14 22:25:00
これほど不合理な事がまかり通るのがTPPであるなら、交渉などする必要がない。外務省は害虫症(がいむしょう)で、日本を悪い方向へ向かわせる虫か。と言いたい。
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