五歩歩いて
右に向きをかえて・・・。
角ばった小枝の動きを見つめていた男は、
やっと、気がついた。
「おまえ?
目がみえないのか?」
突然の声に
小枝はやっと、誰かが傍に来ていた事に気がついた。
目が見えなくなってからは
音や匂い、気配には
ことさら敏感に成った小枝であるのに、
男に声をかけられるまで男の存在に気がつかなかった。
それは、
気配を隠して獲物に忍び寄る
マタギだから出来た事だろう。
小枝は小屋の中にはいりこもうとして、
足を止めた。
逃げても、
無駄だと思った。
頭の中で描かれる道を歩くしかない小枝である。
「あい。目がみえませぬ」
男がいるだろう方向に小枝はこたえた。
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