僕が入っていった部屋は板の間の台所だった。
そこには、丸い、足の長いテーブルがあり、
椅子が二脚おかれていた。
ひとつは、ハローが座る椅子なんだろう。
「そこにすわりなよ」
女のいいなりに僕は椅子に座った。
女は水屋にちかよると、
しゃがみこんで、一番下の扉を開けた。
銀色の包み紙に包まれた
チョコレートが何枚も積み重ねられていた。
女は水屋から持ち出してきたチョコレートを僕の前にさしだした。
「おたべよ。コレをたべてる間にうどんをつくってあげるよ。
腹がへってるんだろ?」
僕は伸びてゆきそうな手をおさえて、首を振った。
「そうかあ・・・。でも、うどんならたべるだろ?」
女は僕がチョコレートをいらないと、
断ったわけを察していた。
女がハローに貰ったチョコを口にせず、
水屋の下に隠しておいた理由があるように、
僕の拒絶にも理由がある。
「はい・・」
僕が素直にうなづくと、女は鍋に汲み置きの水をいれ、
コンロに火をつけた。
背中越しに女が僕に尋ねてきた。
訊ねるというより、
話し聞かせてくるという感じに近かった。
「おかしいだろ?」
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