<以下の文を復刻します。>
誰でも悪夢を見るが、私の場合は子供のころ、トラのような“怪獣”の牙に胸をえぐり取られる夢が最も怖かったのを覚えている。しかし、そんなものは稀で、よく見た悪夢は、演劇の発表会が間近に迫ってきたというのに、セリフをほとんど覚えていないというものだ。
これは中学、高校と演劇部に入っていたからで、そういう時は夢の中で「なんとかなるさ。あと2日ある」などと、つぶやいたものだ。そのうち夢から覚めてホッとするのだが、社会人になると、どうしても職場関係の悪夢が多くなる。
よく見たのは、時間が迫ってきたのに原稿が仕上がっていないというものだ。テレビ局の記者をしていたので、時間にはどうしても追われる。あと5分はざらで、あと2分、1分と迫ってくる。ああ、どうしようか・・・と、もがいているうちに夢から覚めるのだ。
こういう悪夢は今でもたまに見るのだが、つい先日、若いころに憧れたニュースキャスターに初めてなったものの、オンエア直前になっても原稿が数本こないという夢を見た。つまり「下読み」なしでスタジオに入るというものだが、不安だけが高じてくる。これも悪夢の一種だろう。
幸いというか、人に殺傷されるとか、酷い災害に遭うなどの悪夢はまだ見ていないが、そうかと言って良い夢もほとんど見ない。出来ることなら、絶世の美人と温泉旅行に行く夢でも見たいが、なかなか実現しない。
もっとも、夢でも現実でも、美人と温泉旅行に行けば何がしかの罠、落とし穴がありそうだ(笑)。人間は“意識”して行動する生き物だから、夢の中にも魔物や怪物が必ず潜んでいると思った方がいいだろう。 (2015年1月26日)