無知の知

ほたるぶくろの日記

私たちと酸素

2010-10-18 00:08:42 | 日記

30億年前まで地球に酸素がほとんどなかったことは地質学的な証拠から明らかなのだそうです。したがって、その頃までに現れた地球最初期の生物は酸素のないところでも生きられる、逆に酸素があると増殖できなかったり死滅してしまうような嫌気性生物であったと考えられています。そしてこのときの生物は、現在でも偏性嫌気性菌としてヒトの腸内や地中に広く棲んでおり、連綿と命をつないでいるのです。

においのある腸内ガスを産生する偏性嫌気性菌は超太古から生息している細菌であるのです。お腹の中に地球上の生命の始まりの生物が生きている。こう考えますとほんとうに目眩がするような気がします。身体の中に地球の歴史があったのですね。

ところで空気中の酸素濃度は大体21%です。職場の特別な部屋は事情があって酸素濃度のモニタリングをしていますが、数字はほとんど21%です。めったにぶれません。すごいことです。約18%未満になりますと酸素欠乏症になり、ひどいときは脳細胞の破壊がはじまります。たった数%ぶれただけでヒトは死んでしまうのです。こういうごく身近な物理的環境の安定性を考えますと、この宇宙空間に生かされていることがなんと奇跡的なことかがよくわかります。

逆に血中の酸素分圧が高くなった場合、神経系の細胞、気道、肺胞の細胞が酸素によって障害され、生命の危険がでてきます。酸素カプセルに入るくらいではこのようなことは起こりません。主に潜水などのときにこの危険があります。スキューバダイビングをされる方は理解されていた方がよいと思います。その他は未熟児網膜症の一因であることでしょうか。子宮からいきなり大気中の酸素濃度に晒され、さらに保育器では高濃度の酸素が投与されています。現在は酸素管理が厳重になって、患者さんは激減したということです。