ずっと昔から酵素液など「○○酵素」などとして売られていました。どのような菌で醗酵させているのか調べてみますと「多種類の乳酸菌、酵母など」となっていました。
「健康にいい」ということで、ご自分で作る方も最近多いようです。私の周りにもいらっしゃいます。「作ったのでどうぞ」と頂くこともあります。
消費者庁が「酵素ジュース」をクックパッドで紹介し「素手でかき混ぜ手の常在菌で醗酵を進める」との説明を付けていたところ、食中毒のおそれがあるのでは、との指摘が殺到して削除した、との報道がありました。
ぬか漬けもそうですが、数十年前はぬか床のフローラ(微生物叢)がよくわかっていなかったのか、人の手の常在菌でぬか床が美味しくなる、と言われていました。その後ぬか床のフローラの研究も進み、今ではぬか床の乳酸菌は「植物性乳酸菌」であることが分かっています。手についている微生物ではなく、植物に着いている乳酸菌や酵母が増えてぬか床を作っていることが分かってきたのです。
「ぬか床」「酵素ジュース」もフローラの中心は「植物性乳酸菌」であり、ぬか床と同じです。「素手でかき混ぜる」ことの「素手」は重要ではなく「かき混ぜる」ことに意味があります。
たまに(この塩梅が重要)かき混ぜることで
1)酸素をぬか床に入れ、乳酸菌の増殖にブレーキをかける。
2)香りの成分の一部を産生する表面の酵母をぬか床内に混ぜ込む。
3)ぬか床の底で繁殖する嫌な臭いを産生する酪酸菌などの嫌気性菌を表面に出し、増殖を抑える。
この過程で、常に適度の酸味と豊富な乳酸菌、嫌な臭いを抑え、風味豊かなぬか床となります。
酵素ジュースでもほぼ同じ効果を得られるでしょう。頂いたジュースを味わってみて、酪酸菌の臭いを感じることがあります。もう少しかき混ぜて頂いた方がいいのかもしれません。かき混ぜる時は、清潔な柄の長いスプーンやへらなどで空気を入れてやる気持ちで混ぜることが大切です。素手でやるのは腐敗菌などの混入につながりますので止めましょう。
ところで「健康にいい」のは本当でしょうか?まだ未知といってもよいですが、乳酸菌のつくり出す様々な物質は人の腸管の免疫細胞へなんらかの働きかけをする可能性があります。また、腸内フローラの調整も行う可能性があります。
どちらも腸管を介した免疫機能調整、全身状態の改善を期待できるでしょう。今は腸管免疫の研究も進んできていますし、詳細はこれから明らかになってくると思います。ひょっとすると抗がん作用も証明されるかも。。