[自由<o:p></o:p> ]
明け方頃、夢で女は見知らぬ夜道を一人で歩いていた。数千の白い腕を伸ばして広げた上に砂金の破片のように星々がきらめいていた。初めはとても狭い道の幅は進めば進むほどどんどん広がった。頸を上げて周囲を見回しても何もなかった。<o:p></o:p>
女は男を探さなかった。声を出して呼ばなかった。その道は一人で行く道だった。男は初めから女の傍らにおらず、前にもいなかったのだ。そのことがあまりにも当たり前で女は懐かしさも感じなかった。かえって自分の横に誰もいないことを確実にするために、2本の腕を横に長く伸ばすことまでした。自分を取り囲む巨大な夜の空間に女は感動した。暗い冬の土から干からびた木の根っこを持ち上げる水の音が、女の耳殻に乗って回った。<o:p></o:p>
明け方の窓が薄明の中で薄く青味がかってきた時に、女は目を開けた。静かに横に寝ている男を見たとき女を当惑させたことは、その見知らぬ夢の冷たさではなく、星の明るいその道で自分が感じた自由だった。<o:p></o:p>