読書感想227 鎖
作者 乃南アサ
生年 1960年
出身地 東京都
出版年 2000年
出版社 (株)新潮社
☆☆感想☆☆
音道貴子巡査長が活躍するシリーズ。占い師の夫婦と信者の夫婦4名が占い師の自宅で殺害された。金目のものは物色されていない。同じ日に、ある銀行の架空名義の口座から多額の預金が引き出された。占い師の夫婦の隠し口座だった。それに気づいたのは音道貴子。現場にその銀行の粗品があったからだ。取引をしていないはずの銀行の粗品が多数みつかったのだ。それを捜査本部に報告しようとする音道貴子を止めたのは、新しくコンビを組むことになった星野警部補。上司である星野に逆らえず、二人だけで捜査をすることにして銀行に行くが、架空名義については聞きだせずにおわる。そうこうするうちに、捜査本部で別の捜査官から架空名義の口座について報告され、出し抜こうとして出し抜かれる結果に終わる。捜査よりも自分の出世しか考えない星野に貴子はやりにくさを感じていたが、逆にバツイチの星野は同じくバツイチの貴子にひかれ、交際を申し込んでくる。もちろん貴子から断られると、星野は捜査のパートナーである貴子をことごとく邪険にあつかったり、無視したりするようになる。それが捜査そのものの妨げになり、貴子を危機に陥れることになる。
かつてひったくり事件で貴子と接点のあった看護師の中田加恵子。貴子のかつての捜査パートナーであった滝沢警部補。この二人が事件の鍵を握る。
そして東村山市から始まった事件は立川の銀行、立川競輪場、空き家の目立つ熱海で終わる。
音道貴子の人間性が事件も彼女自身の命も救ったという展開なので、読後感はさわやかだ。