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二人は四年後にある葬儀場でまた会った。ミンジョンは食堂の主人の葬式に行った。営業が終わってしまうと、従業員に夜食として豚肉の炒め物やチャンポンを作ってくれた社長だった。先日娘が結婚したと言って従業員に自慢していたが心臓麻痺で亡くなった。チョンミンは部長の母親が亡くなって会社の人達と葬儀場に来ていて廊下でミンジョンに出くわした。ミンジョンはトイレから出てきてチョンミンはトイレを探してきょろきょろしていた。今回はチョンミンが最初にミンジョンに気づいた。会わない間にチョンミンは八キログラムも太った。インターンとして働いていた会社には就職できなかった。インターンを五十名選んで、その中から正社員になるのは三名に過ぎなかった。その後何か所か書類を出して、麺類工場でいろいろな食品を生産する中堅企業に就職した。本社はソウルにあるけれどチョンミンはS市に辞令が下りた。S市はミンジョンが住むC市の隣にあり、二人が会った葬儀場はその二つの都市の境にあった。チョンミンは会社の前のワンルームを手に入れ独立した。食品会社だからか社員食堂のご飯がとても美味しかった。チョンミンがご飯を食べるのを見て部長が笑いながら言った。「大盛りご飯を食べるんだね。」そして義母が食堂をしているので行ったらと、名前が「大盛りご飯と太刀魚の煮つけ」だという話をしてくれた。部長がそう言った後チョンミンのあだ名は大盛りご飯になった。あだ名がそうなって太ったのだと、チョンミンはミンジョンに言った。「あっ、私の町にそんな名前の食堂があった。」まだ行ったことはないけれど、昼食時間にいつも人でいっぱいな所だとミンジョンは言った。「太刀魚の煮つけなら食べてみたいな、先輩、お酒一杯どうですか?」チョンミンの言葉にミンジョンが行こうと言った。「喪主に挨拶する。」ミンジョンが言った。「僕も挨拶してこよう。ロビーで会いましょう。」
葬儀場を出てしばらく歩いたけれど、太刀魚の煮つけを売る店は見えなかった。二人はソロンタンの店に入り牛肉の煮込みに焼酎を注文した。ミンジョンは取り皿に牛肉の煮込みをのせ、その上にニラと玉ねぎの漬物をのせた。そして乾杯をしようとチョンミンに向かって盃を突き出した。ミンジョンは酒を一杯飲んで取り皿に分けたつまみを食べた。ミンジョンは酒を飲む前に必ず取り皿に次に食べるつまみをのせていて、いつのまにかチョンミンもそれに従うようになった。牛肉の煮込み一つ、焼酎一杯ずつ。そうしていて焼酎二本がすぐに空になった。「もう一本どうですか?」チョンミンが訊ねるとミンジョンが頷いた。そしてメニュー表を持って一ページから一枚ずつ調べて、焼酎を持ってきた従業員にビビン冷麺と緑豆お焼きを注文した。ミンジョンは緑豆お焼きの上にビビン冷麺をのせて食べた。酒を飲みながらチョンミンはミンジョンに働きながらわかったことを話した。ケチョップの容器はアルミホイルでさえぎられているが、マヨネーズの容器はアルミホイルがないということなど。それを話すと大部分の人はなぜ?と聞き返した。しかしミンジョンはなぜか訊ねなかった。「私はおかしくてもケチョップと呼ぶと味がしない感じがする。ケチャップはケチャップだよ。」ミンジョンが言った。そしてマヨネーズが好きすぎてラーメンに入れて食べる男もいるという話を付け加えた。「恋人ですか?」チョンミンが訊ねるとミンジョンが以前に、と答えた。「ケチャップをかける時、いつもハート模様を作らなければならない女もいます。」チョンミンが言うとミンジョンが恋人かと訊ねた。「以前です。」チョンミンが答えた。二次会に行こうかとチョンミンが訊ねると、ミンジョンがまた今度、と答えた。チョンミンが酒の代金を計算しながら言った。「約束しました。また今度。その時二次会は先輩が出してください。」そして六か月後に偶然また葬儀場で会った時チョンミンはミンジョンに言った。「二次会忘れてないでしょう?」
亡くなった方はミンジョンの父親の友達だった。父親とは同じ中高等学校を出て軍隊も同じ部隊に行った仲だった。子供が生まれたら二人を結婚させて、互いに姻戚になろうという約束までした。「だからお前が生まれた時小父さんがどんなに喜んだか。息子が三人だからお前が選べ。」そう言って幼いミンジョンに小遣いをしょっちゅうくれた。その三人の息子のうちの末っ子がチョンミンの会社の同僚だった。同じ部署の人達は前日弔問に来ていたが、チョンミンは父親の祭祀で遅く一人で来た。チョンミンは知っている人がいないかときょろきょろしていて、一人で座っているミンジョンを見た。チョンミンはミンジョンのテーブルにビール二缶を置いた。「会社に入社してこの葬儀場に十回は来たでしょう。それでわかるようになったのは、ここスケソウダラの煮つけが本当においしいです。」二人はスケソウダラの煮つけをつまみにしてビールを一缶ずつ飲んだ。それで葬儀場を出てタクシーに乗った。チョンミンがタクシー運転手にミンジョンが住んでいる町の近所を言うのでミンジョンはぎょっとした。「数日前に同僚たちとそこに行ってみました。『大盛りご飯と太刀魚の煮つけ』。そこが近所だそうです。その時誰かが教えてくれました。近所に美味しい鶏カルビの店があると。」ミンジョンは鶏カルビの店は閉まっていると言った。社長夫婦が結婚三十周年記念に旅行に行った。「閉まっていることも知っていて、常連ですか?」チョンミンが訊ねた。ミンジョンは常連だと嘘をついた。「美味しいですか?」チョンミンが訊ねるのでとてもとても美味しい店だと言った。それは事実だった。美味しいので六か月間そこで働いていたから。ミンジョンはチョンミンを連れて食べ放題のマグロの店に行った。美味しいからではなくミンジョンが働いていなかった食堂だから。寿司を作って食べられるように寿司用のご飯も食べ放題で提供してくれる店だった。ミンジョンはマグロにわさびとかいわれをのせて食べ、チョンミンはマグロをご飯の上にのせ寿司を作って食べた。「ご飯をそのように食べるとあだ名が大盛りご飯ね。」ミンジョンがチョンミンをからかった。その言葉を聞いた社長が、寿司で食べる時にさらに美味しい部位だとチョンミンにだけ新しいマグロをのせてくれた。「お金は私が払うんですが?」ミンジョンが冗談を言うと今度はミンジョンにだけ新しいマグロをのせてくれた。「へそ肉です。」ミンジョンはその部位を食べながら考えた。マグロもへそがあるんだな。
外に出ると雨が降っていた。傘を買うほどではないようだった。それでそのまま雨にあたりながら歩いた。歩きながらチョンミンはミンジョンに言った最初の言葉が何か覚えているかと訊ねた。ミンジョンは覚えていなかった。「バナナ牛乳、私も好きですが。」チョンミンが人文学部の前の売店でバナナ牛乳を買うと、その横を通り過ぎながらミンジョンがそう言った。「そうして先輩が鼻歌を歌いました。猿のお尻は赤く、という歌です。ところがこう歌うのです。赤ければスモモ、スモモは美味しい、とです。」ミンジョンは幼い時からそう歌った。林檎が嫌いだったからだ。チョンミンがその歌を歌ってみた。「猿のお尻は赤い。赤ければスモモ、スモモは美味しい。美味しければバナナ。」そうするとミンジョンがこう変えて歌った。「猿のお尻は赤い、赤ければユスラウメの実。ユスラウメの実は美味しい。美味しければバナナ。」急に雨が激しく降り始めた。雨に当たりながら二人は歌を歌い続けた。チョンミンはこう変えて歌ってみた。「猿のお尻は赤い。赤ければトッポッキ。トッポッキは美味しい。美味しければバナナ。」ミンジョンはこう変えて歌ってみた。「猿のお尻は赤い。赤ければきざみ麺。きざみ麺は美味しい。美味しければバナナ。」そう歌って道を歩いてみたら、じゃがいも汁の店が見えた。「赤ければじゃがいも汁。じゃがいも汁は美味しい。美味しければ焼酎。」チョンミンがそう呟いてじゃがいも汁の店の戸を開けた。食堂の主人が手拭い二枚持ってきて言った。「雨に当たってじゃがいも汁を食べれば本当に美味しいです。」その言葉に二人が笑った。チョンミンはお酒を飲んで酔った。酔うと突然ミンジョナ、と名前を呼んだ。「もう一度だけ葬儀場で会ったらその時はつきあおう。」ミンジョンはチョンミンの初めての印象を思い出してみた。サークルにどうして加入したのかと訊ねられると、顔が四角で来たと言った。その言葉を聞いてからミンジョンは四角いものを見ると、チョンミンの顔がよく浮かんだものだ。「そうね。もし葬儀場でまた会ったら。」ミンジョンがチョンミンに答えた。