遺伝子組み換え(1990)
セントルイスに本社がある化学会社モンサントは、緑のものなら何でも殺す除草剤を持っているので知られています。これを使うと作物ともども枯れてしまうので、使いたくとも使えないのですが、さすがに先端技術屋さんです。遺伝子組み替え技術で、この農薬に耐える種を開発し、農薬ともども大々的に売り出そうとしています。なんでもペチュニアから取った遺伝子を大豆の種に注入したら、うまくいったそうですが。うまくいったというのは栽培が安くできた、収量が上がったということで、商売の話です。
殺虫成分を作る遺伝子がある植物の遺伝子を組みこんだとうもろこしは、殺虫成分ごと人間に食べられないのか。そのとうもろこしを食べた人は殺虫成分を持つ植物を食べたような、食べないようなことになり、それにアレルギーを持つ人が、これが原因で難病にならないのか。医者も首をひねるような病気が蔓延しないのか。そういえば狂牛病の原因は経済効果を上げるために牛に蛋白源として死んだ羊のプリオンと命名されたタンパク質を原料とする動物飼料を与えるようになったことにあると信じられています。
矛盾という言葉は、どんな盾をも貫く矛と、どんな矛をも防ぐ盾を同時に販売している商人に、見物人がではその矛で、その楯を突いてみよといって、商人を立ち往生させた故事に由来するのですが、モンサントは、さながらどんな緑色植物でも枯らす農薬(除草剤)とどんな除草剤でも枯れない緑色植物を両方売り出そうとしているわけですから、この矛盾を乗り越えた怪物といえましょう。しかし大変なことです。 いま、莫大な特許料を稼ぎつつ、モンサントの農薬と種は大豆や菜種などアメリカで政府に認可されて大々的に作付けされています。それが普通の大豆に混ぜられて涼しい顔で日本に輸入されていますから、みそやしょうゆや納豆や豆腐などで、既に皆さんの食卓に乗っているはずです。ハイテクとハイテクが結婚した化け物?が、何食わぬ顔で伝統的な農産物に置き換わっていくことに、皆様は戦慄を感じませんか。
あまりに強力な農薬ですから、1回使えば足りる、だから農薬の散布量は少なく、従って危険も少ないというのだそうです。この大豆の魅力は、除草に手間をとらないから低コストでできるということです。そしてなんと、遺伝子組み替え大豆は低農薬大豆として売り出すそうです。
遺伝子組み替えの技術を拡大していくと、米や麦はいうに及ばず、ジャガイモ、綿花や麻、牧草に至るまで、農薬と一体化した化け物農産物が農業を支配、すなわち人間の原料となることになります。遺伝子組み替え農産物を食べたら、抗生物質が効かなくなるとか、耐性雑草がどんどん生まれて収拾がつかなくなるとか、導入遺伝子がからだの中でアレルゲンを生成して食べ物アレルギーやアトピーの多発を益々招くのではないかとか、自然と動物の生態秩序に大きな攪乱を持ち込むものと心配する人も少なくありません。科学的根拠とは常に相対的な妥当性を示す指標ですから、まだ十分それを示しておらず、悪く解釈すれば秘密裡に事を運ぼうとしているような遺伝子組み替え農産物の大々的な認可と、商売の開始は消費者の反発に遭遇することは必至と思います。。
要するに人類が永い歴史で身体に取り込んだこともないものを、コストだけを評価軸にして生産し、ほとんど常食に近い形で、ほとんどの人が知らされないで口に投じようとしていることに私は強い心配を覚えます。
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