風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

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2021年04月03日 | 「新エッセイ集2021」

 

その桜は日がな
古びた木の椅子に腰かけていた
風はゆるく吹いていた
雲もゆったり流れていた
小鳥も虫も
いつもと変わらぬ春だけど
出会っても別れても
乾杯もなく
送る言葉もなく
記念撮影もなかった

春だから
すこしだけ化粧をした
ひらひらと
花びらとなって
風となって雲となって
その桜はやがて
百年の山へと帰っていった

 

 

 

 


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