I.
初めに言葉はなく
終りにも言葉はなく
始まりもなく終りもない
夢のあとに唐突に
光のカーテンがひらきました
恍惚と不安と
そこには
あなたが立っていたのです
II.
あなたの掌と
わたしの掌をあわせました
ひんやりと熱いもの
わたしのものではないもうひとつの
それはあなたのもの
わたしの欠片ですらない
あなたの奥にかくされていたもの
やっと見つけた
もうひとつのものでした
III.
あなたは風のようでした
あなたが風ならば
わたしも風になります
言葉を忘れてしまったとき
あなたの耳へおくるのは
わたしの風の息
みじかい息やながい息を
あなたへおくります
失った言葉が
わたしの中でよみがえる
そのとき息を忘れて
わたしもきっと風になれる
IV.
くちびるからくちびるへ
かぜのさきにかぜのさきがふれる
ぬれていてすこしつめたい
かぜのまわりのかぜはあつい
ふたつのかぜはひとつになろうとして
からまったりからまれたり
うらがえしたりうらがえったり
まじりあって
かぜはふうじこまれる
まわりはなにもみえなくなって
みえないものがすべてになって
わたしのいきがあなたのいきをすう
ひとつになったいきをはく
いきはすこしずつあつくなる
いきはすこしずつうすくなる
すこしだけくるしい
すこしだけしにそうになる
やみをかきわける
やさしいあなたのゆびの
ゆくえのなかにわたしはまよう
ながれだすあなたの
あついちのしずくとなって
あなたのといきの
ねつのさきに
おぼれる
V.
未知のひと
指のさきのあなた
熱い血の流れのなかを泳ぎ
激しく波をたてるから
渦まきになって
わたしを吸いこむ
奥ふかくわたしのなかへ
入ってくるあなた
ひとつになろうとして
ひとつのものに届こうとして
包みこんだままで
包みこまれたままで
流れに耐えようとするあなたの
終りのときに
すべてのとびらを開いて
始まりをむかえる
闇のなかに光がうまれ
あなたの光はしだいにふくらみ
わたしの光もさらにふくらみ
ひとつの大きな光となって
ついにはじける
もっと光を
と