風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

あしたの朝顔 はないちもんめ

2021年09月10日 | 「新エッセイ集2021」

 

朝顔の花には朝がある 朝顔姫の挨拶はオハヨーだけ もしもし姫よ花さんよ 花はどこからやって来るのか よくもぱあっと突然に 次から次と咲けるもの 日ごとに小さくなってはいるが それでも形は朝顔のまま 空に向かって花びら全開 そのアンテナは何を受信するのか 混線模様で開けないのもあり 閉じた傘のような蕾のままで 大事な朝が終わってしまうのもあり 誰かの一日もそんな朝顔で 天気が気になって咲けなかったり 茂みのなかで閉じこもったまま 大きな葉っぱを押しのけられず この朝はこれっきりの朝なのに 咲けない朝顔が哀れになって すこし手助けしてやろうとしたが 花には花の道理があるようで うまくいかずに気分一新と いつものウォーキングへいざ発進 さくら落葉の遊歩道 黄色い帽子の通学路 黒猫にゃんこの池畔の道の 水面には亀の頭がポカリスエッと よくよく見ると周りでいくつも どれも揃って平べったい 水掻きの四肢をだらんと伸ばして 水には水の心地よさありと 温泉気取りでのんびりと 至福のときを浴しているらし こちらは汗をたらたら浴びながら なんのため歩き続けているのやら もしもし亀よ亀さんよ 花の命はみじかくて 亀は万年どうなってんねん なんでもええねんカメへんねん 夏は涼しく水冷の亀で 冬はぬくぬく惰眠の亀だんねん 熱波で咲くのは朝顔だすねん 四季をてくてく馬鹿だすねん 年中無休で汗かいてまんねん 日々の苦行は石だん百だん 青息吐息で登ってまんねん ときには亀に抜かれてああ脱兎 のろまの亀がなんでやねん あの水掻きの足でどうやって 百段の山を登ったんやら はや百段の頂上で産卵までして 生まれる子亀は百段を どんぐりころころ転がって お池にぽちゃんと目出たく亀に かめへんかめへんと亀は慢心 こちかめ仰天おもわず脱帽 山のあなたの空とおく 花の朝顔アーアーアーと 山の亀やんホーホーホーと 亀もおだてりゃ空まで泳ぐか 無残ざんねん雨さんざん 残心霧消の朝顔は あしたの朝も花いちもんめ


 

 

 


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