
コップ
夜中にひとり
コップの水を飲むとき
背中で
くらい海がかたむく
すぎた夏は
濾過されて透きとおっている
貝殻をひろい
小魚をすくう
たくさんの手がおよぐ
あれから
太陽の影を追った
あの海を
まだ飲み干していない
*
水の時間
洗面器の水に
指を浸す
わたし達の海はこんなに小さい
手と手が触れ合える
ささやかな暮らしでよかったね
ときどきは
窓のそとで水音がする
あれはイルカ
あれはシャチ
わたし達の赤ちゃんも
いま広い海を泳いでいる
青い水のなかを
水よりも青く泳いでいる
夜になると
わたし達も泳ぐまねをして
小さな赤ちゃんに
会いにゆく
*
しおざい
魚を丸ごと
皮も内臓もぜんぶ食べた
それは
ゆうべのことだ
目覚めると
私の骨が泳いでいる
なんたるこった
私を食べてしまったのは私だろうか
どこをどうやって
いままで
生き延びてきたんだろう
外では騒がしい音がしている
もう誰かが
朝の骨をかき集めている
*
ディープブルー
どおんと
山を越えてくるものがある
大きな黒い影の下で
ひとはそのとき
ディープブルーに染まる
それは空の鯨
なだらかに背から尾鰭へ
澄みきった真昼の夢をよぎる
その吐息のようなものに
ひとの手はとどかない
どおんと鯨が
ふたたび山を越えるとき
空はなだらかに傾いて
ひとは知る
山の向うにもきっと
ディープブルーの海があると
*
ラ・メール
…海までは石畳の道で
昼からは潮風があがってきます…
細い指で文字をおくる
どうしても鉄棒ができなかった
空を引き寄せようと
じっと見上げていた午後
空は高すぎた
つかもうとしてもつかめない
手のひらの言葉たち
どの言葉にも
おもさがあるみたいだった
…もはや夏色の海です…
石畳の道をおりてゆく
大きく海原がせり上がってきて
手にもった貝がらが
青く染まる
*
背中の海
遠くて暗い
背中の海で泳ぐひとがいる
しずかな潮がつぶやいている
わたしたち
泡ぶくだったのね
小さな水とたわむれて
ずっとむかし生まれたのね
あなたの手が水をつかむ
あなたの脚が水を突きはなす
その水のすべてを
わたしたち愛したのね
ふりむくと
ずっと向こうの
そのまた
ずっと向こうに
もうひとつの海がある
夜中にひとり
コップの水を飲むとき
背中で
くらい海がかたむく
すぎた夏は
濾過されて透きとおっている
貝殻をひろい
小魚をすくう
たくさんの手がおよぐ
あれから
太陽の影を追った
あの海を
まだ飲み干していない
*
水の時間
洗面器の水に
指を浸す
わたし達の海はこんなに小さい
手と手が触れ合える
ささやかな暮らしでよかったね
ときどきは
窓のそとで水音がする
あれはイルカ
あれはシャチ
わたし達の赤ちゃんも
いま広い海を泳いでいる
青い水のなかを
水よりも青く泳いでいる
夜になると
わたし達も泳ぐまねをして
小さな赤ちゃんに
会いにゆく
*
しおざい
魚を丸ごと
皮も内臓もぜんぶ食べた
それは
ゆうべのことだ
目覚めると
私の骨が泳いでいる
なんたるこった
私を食べてしまったのは私だろうか
どこをどうやって
いままで
生き延びてきたんだろう
外では騒がしい音がしている
もう誰かが
朝の骨をかき集めている
*
ディープブルー
どおんと
山を越えてくるものがある
大きな黒い影の下で
ひとはそのとき
ディープブルーに染まる
それは空の鯨
なだらかに背から尾鰭へ
澄みきった真昼の夢をよぎる
その吐息のようなものに
ひとの手はとどかない
どおんと鯨が
ふたたび山を越えるとき
空はなだらかに傾いて
ひとは知る
山の向うにもきっと
ディープブルーの海があると
*
ラ・メール
…海までは石畳の道で
昼からは潮風があがってきます…
細い指で文字をおくる
どうしても鉄棒ができなかった
空を引き寄せようと
じっと見上げていた午後
空は高すぎた
つかもうとしてもつかめない
手のひらの言葉たち
どの言葉にも
おもさがあるみたいだった
…もはや夏色の海です…
石畳の道をおりてゆく
大きく海原がせり上がってきて
手にもった貝がらが
青く染まる
*
背中の海
遠くて暗い
背中の海で泳ぐひとがいる
しずかな潮がつぶやいている
わたしたち
泡ぶくだったのね
小さな水とたわむれて
ずっとむかし生まれたのね
あなたの手が水をつかむ
あなたの脚が水を突きはなす
その水のすべてを
わたしたち愛したのね
ふりむくと
ずっと向こうの
そのまた
ずっと向こうに
もうひとつの海がある
励みになります。
新しい交信が始まることを嬉しく思っております。
よろしくお願いいたします。
気がつくと
ブロ友さんから飛んできていました。
素敵な詩集に出会いました。
読者登録させて頂きました。
どうぞよろしくお願いします。 羽。